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泉田新潟県知事 「東電の地下水処理対応は旧ソ連のチェルノブイリ時より酷い」 「原発事故以降、新潟の子供の甲状腺がんは1人。福島ではその18倍」(新潟県)

2013-08-25 14:44:11

izumida20130130170228
izumida20130130170228Q  先ほども福島第一原発事故の検証・総括という話がありましたが、福島第一原発で地上タンクから300トンの汚染水が流れ出ていて、未だに収束していない状況についてどうお考えですか。また東電の対応について知事としてはどうお考えですか。

A 知 事  後手後手というかその場しのぎというか、この間の海に汚染水が流れ出ている問題もそうなのですが、問題点は前から指摘されていたわけです。それが実施できなかったのはなぜなのかと言うと、菅元総理がインタビューに答えているとおりで、経営上1,000億の投資は負担になるのでやらないということだったわけです。地下水が流れてくるということがわかっていながら地下水遮蔽対策を怠ったということですが、その原因が東電の経営問題にあるということです。先ほどの質問と一緒で、経営を優先して安全をないがしろにした結果がタンクの暫定設置や本来必要な汚染水対策の先送りということに繋がっていて、根は一緒なのではないでしょうか。

 

チェルノブイリのときはもっとよい対応をしています。私は当時、旧共産圏のソ連という国は国民に情報を伝えないし、放射能が拡散しているのにも関わらず国際機関にも通知しないということで、何と情報閉鎖的で国民のことを考えないひどい国なのだろうかと思っていましたが、地下水汚染を防ぐために必死に努力していたのです。国中から炭坑夫を集めて、溶け落ちた燃料が地下水に接触しないように先回りして穴を掘って塞いでしまうという対応まで行っているわけです。

 

地下水対策をきちんとやらないと河川に流れ出てそのあと海に行ってしまいます。それは国際的に大問題になるので何としても防がないければいけないということで、国家が総力をあげて対処したわけです。国民に対しては、放射線管理区域は年間約5ミリシーベルトということになりますが、それを超えるところと世界標準の年間1ミリシーベルトから5ミリシーベルトの間については移住権を与え、選択肢を与えています。事後的に基準を緩めて放射線管理区域に人が住み続けるなどということはしないで、まじめに対応したということですから、日本と違ってかなり立派なのではないでしょうか。

 

この間、子供支援法ができているのに基準すら定めていないということで訴訟が起きています。人権という観点で考えたときに、一体まじめに対応しているのだろうかと言うと、日本は政府としての取組が十分行われていないというのが感想になります。そのボタンの掛け違いがどこから始まったのかと言うと、本来は国として取り組まなければいけないのに原賠法の適用を見送り、すべて東電の責任範囲内にしてしまったという最初のボタンの掛け違いが経営問題と対処、被害者に対する補償問題の全てをこじらせているということだと思います。

 

(事故を)ゼロにするという基準ではないので、今度の規制基準をクリアしても事故は起きるのです。人が作ったものに完全というものはないので、この考え方自体は当たり前だと思うのですが、起きてしまったらどうするのかと。放射能をばらまかないためにきちんと対策を考えていますかと。それでも被害を受けた人に対して生活再建とか補償のスキームを作っていますかと。何もやっていません。結局、被害を受けた人に全部しわ寄せがいっているわけです。生活再建の目途も立てられず、放射能を浴びたらそのままです。

 

昨日また発表がありましたが、甲状腺がんと診断が確定した子どもが6人追加です。疑い事例も増えています。もしかするとチェルノブイリよりも早いペースで来ています。新潟県も専門家に聞いています。発災以来、新潟県で甲状腺がんになった人は1人です。福島は今確定しているものだけで18倍で、疑い例を合わせると30数倍、100倍近いかもしれないということになっているわけです。きちんと調査したので明らかになりましたというのは、チェルノブイリのときにも当時のソ連政府は言っていたのです。これがもう少し経つとはっきりわかるのですが、事故後に生まれた赤ちゃんについて、チェルノブイリでは甲状腺がんは確認されなかったのです。放射性プルームが通るときに生まれていなかったからです。

 

ソ連政府は、事故後に生まれた赤ちゃんの発症率と事故のときに実際にもう呼吸していた方の発症率を見て、事故後に生まれた赤ちゃんが正常に戻ったことから(事故の影響を)認定したということです。5年目ぐらいだったでしょうか。もう少し経ってマクロで意味がある数字を新規に生まれた赤ちゃんと比べてみれば原発事故の影響かどうかはっきりわかるのです。今の段階で影響がないと否定してしまうということが本当によいのかどうかについては歴史に学ぶべきではないかと思っています。

 

どう思うかということについて言えば、経営と安全を天秤にかけるということが今の事態を招いていますし、日本の国際的な信用を落としているのではないでしょうか。日本では大雨について報道していましたが、BBCなどは一時期この汚染水の問題をトップニュースで扱っていました。これほど差があってよいのでしょうか。世界で日本の評判がどんどん落ちていきます。まじめに対応するべきではないかと思っています。

 

Q  常々、東京電力に信頼できる会社にということを言っていますが、現状を見て知事として・・・。

 

A 知 事  同じです。経営と安全を天秤にかけるわけです。そういう仕組を作った方が悪いといったら悪いのかもしれませんが、少なくとも会社の信頼を確保しようと思って、よい経営をしている経営者はまず顧客の信頼を繋ぎ止めることを第一にします。よく言われる例ですが、尊敬されるというか、信頼される経営の例を2つお話しします。ロールス・ロイスというと世界のブランドです。ロールス・ロイスの車で、イギリス国内ではなく外国のかなり条件の悪い道を旅行していたそうです。そうしたら故障してしまったと。シャフトが折れるというディザスターで動けなくなったのでロールス・ロイスに助けて欲しいと電話をしたら、ヘリコプターで部材を持ってきてくれて直してくれたと。請求書が来ないので、帰ってからどうなりましたかと聞いたら、「当社に限ってそのような事故が起こることはございません」という返事があって請求書は来なかったということです。

 

それからウォルマートの例ですが、普通、いろいろなものを買って、(買った店とは)他の店で「不良品です、取り替えてください」ということを言うと、領収書があるかと聞かれ、無ければ当然替えてくれません。(商品購入者は)旅行者だったそうです。西海岸の店で買ったものを東海岸の店に持って行ったのですが、その間、旅行中のために領収書を無くしてしまったと。でも「ウォルマートで買ったのです」ということを言われて、お客様の求めに応じ、信頼してそれを取り替えるということを実際にすると、型番等でわかるのかもしれませんが、この会社は自分の製品についてきちんと責任を持つのだなということで信頼度が高まります。だからウォルマートは世界に展開できるわけです。

 

結局、顧客の信頼を得られない会社は支持を失うのです。事実上、嘘を言うわけです。これも何度も言っていますが、2011年3月12日の時点で、燃料棒の中のペレットの中にしかない放射性物質が建屋の外で検出されているわけです。東電はメルトダウンというのをわかっていたわけです。さらに言うと3月11日の当日で、一番早い段階としては午後5時の段階でメルトダウンまでの進展予測をしているわけです。メルトダウンまで1時間というのをわかっていたわけです。日本の報道機関は書きませんでしたが、諸外国の報道機関は基本的に翌日以降にはメルトダウンと書いていました。東電が認めたのは5月20日過ぎです。2か月間嘘をついていたわけです。誰が「嘘をつけ」と指示したのですかと。その反省はしたのですかと。何もやっていません。とても信頼できないのではないでしょうか。

 

Q  その中で、社長との会談の見通しは立たないと・・・。

 

A 知 事  やり取りをしています。今は(東電からの)返事待ちです。

 

Q  9月議会が9月25日から始まりますが、それまでに再会談を行う可能性はいかがでしょうか。

 

A 知 事  東電次第だと思います。まともな答えをいただければ、すぐに整理できるのではないでしょうか。

 

(平成25年8月21日 泉田知事定例記者会見要旨から一部を抜粋)

 

http://chiji.pref.niigata.jp/2013/08/post-8664.html