再稼働断念の米サンオノフレ原発の廃炉コスト 米原発で過去最高の44億ドルに 三菱重工との訴訟問題にも影響(FGW)
2014-08-04 21:21:10
米各紙の報道によると、昨年6月、三菱重工製の蒸気発生器配管トラブルで廃炉を決定した米サウス・カリフォルニア・エジソン社のサンオノフレ原子力発電所の廃炉コストが、当初見込みを大幅に上回る44億㌦(約4400億円)にのぼることがわかった。
同原発のトラブルは、一昨年1月、2基のうち1基(3号機)の三菱重工業製の蒸気発生器の配管が損耗し、水漏れが発生した。放射能汚染水漏れも生じた。また2号機の配管にも破損が見られたため、両機とも運転停止となってきた。今回の廃炉費用の推計は、カリフォルニア州の California Public Utilities Commission (CPUC)が調査結果としてまとめた。現在、エジソン社と三菱重工との間では損害賠償紛争が生じており、三菱側への請求額が増大する可能性も出てきた。
サンオノフレ原発での事故発生後、米原子力規制委員会(NRC)は、再稼働を巡って、関係者との会合や地域での公聴会等を開いた。当初、エジソン社は、2基のうち1基の不具合を直して、70%の出力で再稼働したいという提案をした。これに対して、環境保護団体などが認可修正プロセスの厳格化をNRCに求めた。
審査プロセスを経て出たNRCの決議案は、住民の意向を尊重した内容だった。エジソン社はNRCと争う道をとらず、「問題が長期化すると、顧客や投資家などに不利益を与える」として、廃炉を決定した。日本の原子力規制委員会が決定した川内原発の再稼働審査とは、プロセスの開放性で隔たりがあるほか、事業者(電力会社)の意識も、顧客、投資家への配慮を最優先する視点が異なっている。
エジソン社が再稼働を断念した理由の一つには、サンオノフレ原発の場合、廃炉費用として27億ドル(約2600億円)がすでに廃炉信託基金に積み上げられていたことも、影響したとみられる。廃炉に伴う追加負担懸念が少ないとの判断だ。しかし、今回、廃炉費用が信託基金を大幅に上回る見通しとなったことで、同社の経営に与える長期的な影響も無視できなくなったといえる。
CPUCの調査レポートは、他の同型原発では事故が起きていないのに、サンオノフレの場合は、原子炉と蒸気発生器が別々の製造メーカーのものでその接合の不具合が原因となった可能性を指摘しているという。蒸気発生器を納入した三菱側は「契約上の損害賠償の責任上限は約1億3,700万ドルであり、それ以上の間接損害の責任は排除されている」と反論している。
エジソンが再稼働を断念した審査プロセスで、日本との決定的な違いは、住民団体の対応だけでなく、地元市議会の動きも大きかった。地元の市議会は、再稼働審査のプロセスに公聴会開催などの、しかるべき認可修正プロセスを義務付ける決議を採択した。市議会が自ら状況を調査し、電力会社とNRCとの議論に加わることで、有権者に配慮するという任務を果たした、と評価されている。
エジソン社は廃炉作業を2016年から開始し、主要な原子炉の建物は2022年までに撤去する予定という。ただ、使用済燃料については政府の恒久的最終処分場が用意されるまで、現在のサイトで保管される。同社は、廃炉費用は十分にあると強調している。
http://www.ibtimes.co.uk/san-onofre-nuclear-power-plant-cost-4-bn-dismantle-1459562