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ドイツの廃炉作業 22年までの全廃に向けて一歩ずつ進む(AFP) 廃炉費用は約4兆円強 だが最終処分場は未定

2014-08-07 22:44:23

ドイツ南部オブリハイムの原発操作室で廃炉作業をする作業員
ドイツ南部オブリハイムの原発操作室で廃炉作業をする作業員
ドイツ南部オブリハイムの原発操作室で廃炉作業をする作業員


【8月7日 AFP】真剣なまなざしで画面を見つめ、ジョイスティックで切断機を遠隔操作するオペレーター──この作業員が細心の注意を払って解体しているのは、停止した原子炉の金属部品だ。

時間もコストもかかるが、ドイツ南部にある電力大手エネルギー・バーデン・ビュルテンベル(Energie Baden-WurttembergEnBW)のオブリハイム(Obrigheim)原発の原子炉解体作業は、入念な準備のもとで行われ、すでに工程の半分以上が完了した。

最終的には、37年間稼働した原発の機材、建材、設備など計27万5000トンが解体されなければならない。うち約1%にあたる約2000トンが放射性物質だ。

廃炉のエキスパート目指す

原発運用業務が終わりを迎える中、EnBWは今後、原発解体のエキスパートとして活路を見出していくことになる。

EnBW広報担当者のウルリヒ・シュレーダー(Ulrich Schroeder)氏は、スイスやイタリアなどでも原子力依存からの脱却が決断されたことに触れ、今後、原発解体に熱い視線が注がれる可能性があると語る。「解体、管理、廃棄物リサイクルにおいて、すでに競争が起きている」

原発を段階的に廃止して、環境配慮型のグリーンエネルギーに移行する政府の「エネルギー転換」政策の下、同原発の解体は2025年までに完了する予定となっている。

「あらゆる工程が手動の遠隔操作で行われている」と、現場を担当する技術者のミヒャエル・ヒルマン(Michael Hillmann)氏は、ネッカー(Neckar)渓谷にある同原発の管制室でAFPの取材に語った。

解体作業が終わっていない残りの部分については、立ち入りが規制されたエリアで水没した状態にある。そのエリアに入るには防護服を着用する必要があり、1回の作業で10分以上滞在してはならない決まりとなっている。

解体済みのパーツや廃材は、「梱包」するための別のエリアに機械で運び込まれる。そこで放射性廃棄物を保管するための黄色い大型の容器に収められる。

■「新たな住人」が利用する未来像

ドイツのゲアハルト・シュレーダー(Gerhard Schroeder)前首相率いる中道左派政権は2002年に原発の全廃を決定した。保守派で次期首相のアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)氏は、就任当初に同決定を一度破棄しているが、2011年の福島第1原子力発電所事故を受け、再び脱原発にかじを切った。

オブリハイム原発の解体は、各関係当局が全工程を詳細に精査・承認するという長い準備段階を経て2008年に始まった。

廃炉作業が進むオブリハイム原発
廃炉作業が進むオブリハイム原発


解体後に安全な場所を残すことを目指し、バラバラになったすべての廃材は詳細に記録され、作業は規定の順序どおりに行われている。

いつの日か、空き部屋になった事務所や倉庫、そして原子炉を収容していた巨大なドーム型の建造物までもが、新たな住人を迎え入れるかもしれないと、現場管理者のマンフレッド・モラー(Manfred Moeller)氏は語る。

■4兆円規模の廃炉費用

ドイツ第3の電力会社のEnBWにとって、オブリハイムの解体は経験を積むための絶好の機会だ。

EnBWも競合各社と同様、政府のエネルギー転換政策に基づき、いずれは全原発を停止・解体しなければならない。

EnBWの原発4基のうち2基は福島原発事故の直後に操業を停止した。だが残りの2基はあと数年間は稼働する。

ドイツ国内で現在稼働している原発は9基。2022年までに全原発を停止する計画で、EnBWのネッカーヴェストハイム(Neckarwestheim)の2号炉が最後に停止する予定だ。

ドイツの電力各社は引当金として解体作業の費用を準備している。EnBWは70億ユーロ(約9600億円)を用意し、ドイツの電力4社の総額は300億ユーロ(約4兆1000億円)に上る。

最終保管場所という廃炉の課題

EnBWは2040年代までには全原子炉の解体作業が完了していると見込んでいるが、放射性廃棄物を恒久的に保管する場所についてはまだ不確定だ。

ドイツでは、放射性廃棄物の保管場所をめぐり1980年代から意見の対立があり、臨時保管施設の周辺では大規模な抗議行動も起きている。恒久的な保管場所の選定作業は、メルケル政権の下で再開しているが、これが決まるまでは臨時の施設に保管されることになる。

「(放射性)廃棄物を処分できるようになる必要がある。それもエネルギー転換政策の一部なんだ」とモラー氏は語った。

 

http://www.afpbb.com/articles/-/3021904?pid=14136414&page=1