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東電の「汚染地下水海洋放出」案 漁業関係者は「唐突な話」と困惑 だが東電と国は想定通り トリチウムによる追加海洋汚染で再び国際批判も(FGW)

2014-08-08 13:08:54

建屋周辺にある井戸
建屋周辺にある井戸
建屋周辺にある井戸


国と東京電力は、東電福島第1原発の追加的汚染水対策として、現思慮建屋周囲の井戸から汚染地下水を汲み上げ、トリチウム以外の放射性物質を除去して海洋放出する案を打ち出した。地元の漁業関係者らは「唐突な話」とに困惑した様子だが、東電にとっては「想定内」の対応のようだ。
国と東電が検討しているのは、原子炉やタービン建屋周辺に設置されている「サブドレン」と呼ぶ井戸に溜まる汚染水の放出だ。サブドレンは、地下水を汲み上げて地下水位を調整するためのもので、事故前は57本が稼動していた。事故後東電は27本を復旧させるとともに、新たに15歩運を整備して汚染地下水を汲み上げている。

 

東電は、汚染する前に建屋に流れ込む地下水の海洋放出をすでに実施しているが、汚染水除去のための多核種除去設備「ALPS」が十分に機能しないことから、保管する汚染水が増加し続けている。このため、新たに汚染水も浄化を条件に海洋放出する案を固め、相馬市で開かれた相馬双葉漁協の理事会で地元の漁業関係者に示した。

 

計画では、一日当たり約1200リットルの汚染粋を浄化する装置を2系統整備し、交互に使用するという。すでに原子力規制委員会は東電からの浄化設備などの設置申請を認可している。しかし、サブドレンで汲み上げた汚染地下水の放射性物質であるセシウムやストロンチウム等は除去できるが、トリチウムなどの一部の放射性物質は除去できず、そのまま海に放出されることになる。

 

相馬漁協の佐藤弘行組合長は「一度汚染された水なので、地下水バイパス以上に安全を担保すべきだ」と徹底した安全対策を求める。また福島県漁連の野崎哲会長は「現段階では、賛成も反対もできない」とした上で「トリチウムの値が大きな問題になる。処理できないなら容認できない」としている。いわき市漁協の矢吹正一組合長は「まずはしっかり説明を受けてから対応を考える」と、いずれも困惑気味だ。

 

漁業関係者は、さらなる風評リスクを高めること恐れているが、トリチウム含有が明らかな汚染水を海洋放出するとなると、新たな海洋汚染と言う見方も生じてくる。そうなると、漁業関係者だけでなく、国民、消費者、あるいは外国からも批判が出る可能性がある。

 

トリチウムの追加的海洋放出が魚類だけでなく、海洋の生態系にどう影響するかの検証は十分に行われていない。東電は、海洋放出の法令基準(1㍑l当たり6万ベクレル)を基準として、新たに排出基準を設ける考えというが、事故原因者の東電に汚染水の汲み上げ作業から浄化、放出までを全面的に委ねている現状では、基準を決めても、実際にそれが守られるかどうかの検証は不透明といわざるを得ない。

 

地元の漁業関係者は「唐突」と不信感を口にする。だが、地下水バイパス計画を受け入れた段階で、同計画がうまくいかなければ、次は「汚染水放出」につながると、想定しておくのが当然だっただろう。その意味で、今回の「汚染地下水海洋放出」案は、国と東電にとって、「仕方がない」との世論を構築するスケジュール通りの対応に映る。

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