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原発ADR、文科省が議事録「不開示」。担当弁護士名も黒塗り。はびこる根拠なき”秘密主義”(毎日)

2014-10-26 00:44:33

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genpatsuADR20141025k0000m040113000p_size6東京電力福島第1原発事故の賠償問題を裁判外で解決する手続き(原発ADR)を担当する「原子力損害賠償紛争解決センター」を巡り、所管する文部科学省がセンター最上位の組織「総括委員会」の議事録を公開していないことが、毎日新聞の情報公開請求で分かった。

和解案を作成する仲介委員(弁護士)の一部についても氏名を明かさず、他の同種の公的機関と比べ閉鎖性が際立つ。情報公開制度の専門家は「極めて特殊な対応」と批判している。【高島博之、戸上文恵】

 

センターを巡っては、死亡慰謝料を「一律5割」などと定めた文書が存在するのに、国会議員が開示を求めても拒否するなど、情報公開に消極的な姿勢が批判を浴びている。

 

総括委は大谷禎男委員長(元裁判官)、鈴木五十三(いそみ)委員(弁護士)、山本和彦委員(一橋大教授)の3人で構成。賠償額の目安などを定める重要な「総括基準」を決めており、これまで基準の決定日と決定内容だけしか公開していないため、毎日新聞は決定の作成過程を検証するため、文科省に情報公開請求した。

 

文科省は議事録の存在を認めた上で、一切の公開を認めない「不開示」とした。一部を黒塗りにして開示する「部分開示」ではないため、3人の発言内容だけでなく、実際に委員会は開催されたのか▽開催されたのならその日時と場所▽出席者▽議題−−など、すべて検証できない。不開示理由について、文科省は(1)率直な意見交換や意思決定の中立性が不当に損なわれる(2)国民に混乱を生じさせる(3)手続きの適正な遂行に支障が及ぶ−−などを挙げた。

 

センターは和解案を作成する仲介委員282人(退任者を含む)の氏名についても全面開示をしていない。毎日新聞が東電との利害関係の有無を調べるため、氏名の公開を求め情報公開請求したところ、文科省は「個人情報」を理由に、名前や経歴などをすべて黒塗りにした文書を開示した。一方、センターの対応は一貫性を欠いており、ホームページで和解事例を紹介する中で202人の仲介委員名を付記している。それでも残る80人の氏名は分からないままだ。

 

原発ADRのように行政機関が運営する裁判外手続きは行政型ADRと呼ばれ、消費者庁が2011年10月に有識者会議に提出した資料によると、全国規模の主な機関は、センターを含め6機関ある。毎日新聞のまとめでは、センターを除く5機関は、すべて委員の氏名をホームページ上で公表している。さらに、5機関のうち2機関は最上位の組織の議事録もホームページで開示し、残る3機関も「情報開示請求があれば対応を検討する」と答えた。


 ◇「信頼失う対応」


 

「極めて特殊な対応で組織の信頼を失う」。情報公開制度に詳しい右崎(うさき)正博・独協大教授(憲法)は、原子力損害賠償紛争解決センターの総括委員会の議事録を不開示とした、文部科学省の対応を強く批判する。

 

国は情報公開法に基づき、請求から原則30日以内に(1)すべて公表する全部開示(2)一部を黒塗りにする部分開示(3)一切公表しない不開示−−のいずれかに決める。

 

総務省の統計によると、2013年度に国の行政機関が行った決定は9万5464件で、全部開示41.3%、部分開示56.3%、不開示2.4%。不開示には文書そのものが存在しないケースも含まれ、総括委の議事録のように存在するのに不開示とするのは異例だ。

 

右崎教授は「開催日時、出席者、議題、個々の委員の発言内容はすべて公開し、説明責任を果たすべきだ。黒塗りにできるのは、被災者の個人情報に関わる部分だけだろう」と話す。さらに、仲介委員の氏名についても「他の行政型ADRが公表しており、原発ADRを例外にする理由はない」と話した。【高島博之】


 ◇総括委員会◇


 

原子力損害賠償紛争解決センターで業務を統括する組織。文部科学省の「原子力損害賠償紛争審査会」が指名した3人の総括委員で構成される。被災者が賠償を求めセンターに申し立てると、総括委が受理するかどうかを決め、受理する場合は案件ごとに仲介委員(弁護士)を指名。和解案作成の際は助言することもできる。また、賠償の目安である「総括基準」を作成。審査会の定めた「指針」は、避難中の慰謝料(精神的損害)を月10万円としているが、総括基準で妊婦らの増額を認めている。また、自主避難者の一時帰宅費用や就労不能損害など、指針にはない賠償項目も示している。

 

http://mainichi.jp/select/news/20141025k0000m040136000c.html