原発事故に伴う健診対策 環境省専門委の「中間取りまとめ」 に13の問題。 意図的な曲解、恣意的なデータの引用も(FOE)
2015-01-14 15:57:01
13日、「放射線被ばくと健康管理のあり方に関する市民・専門家委員会」(事務局:FoE Japan)では、環境省「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」(以下「専門家会議」 座長:長瀧重信長崎大名誉教授)がまとめた「中間とりまとめ」について批判的検証を行い、「福島県県民健康調査において明らかになってきている甲状腺がんの深刻な状況についての分析を行っていない」など13の問題点を指摘するレポートをとりまとめ、発表しました。
レポートでは、「内容以前に、専門家会議の委員構成や会議の進行に大きな問題点があった」とし、また、「福島県県民健康調査において、小児甲状腺がんの多発という点でも、転移・浸潤を含む症状の深刻さという点でも、2巡目の検査で1巡目では見つからなかったがんが4例見つかるという点でも、非常に深刻な結果が出ているのに、これについて分析・検討することをしなかった」とした上で、専門家会議の中間取りまとめが、福島県で行われている甲状腺検査について、「疫学追跡調査」へ見直すよう提言している点について「個々人の健康管理を蔑ろにしている」と批判しています。
また、「中間取りまとめ」が、福島県外における甲状腺検査の必要性を否定した点については、NSCEARのデータや最近の研究における放射性ヨウ素も放射性セシウムの拡散評価では、福島県外において福島県と同等レベルの汚染の広がりを示している点を指摘。「福島県内外で被ばく量を比較することは非科学的である。県外の被ばく量は低いとして、県外における健診を切り捨てることは認められない」としています。
UNSCEARにおけるヨウ素131の拡散評価 アニメーション画像より
出典: Attachment for UNSCEAR 2013 Report Vo.1
また、WHOとUNSCEARの報告の引用については、内容に関する検証を行っていないばかりか、原典に書いていないことが引用されていたり、恣意的に、あるいは誤って引用されたりしている点を事例をあげて批判しています。
さらに、甲状腺がん以外のがんや、非がん疾患について否定していることは、原爆被爆者の調査やチェルノブイリ原発事故の被ばく者などを対象とした多くの研究結果を踏まえていないと指摘しています。
出典:「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワーク翻訳資料、Twenty-five Years after Chernobyl Accident: Safety for the Future. National Report of Ukraine, 2011、市民研通信第9号 通巻 137 号 2011 年 10+11+12 月 )。
同委員会では、「以上のことから、この『中間取りまとめ』を、原発事故に伴う住民の健康管理施策の根拠にするべきではなく、環境省は施策の全面的な見直しを急ぐべき」としています。
レポートが指摘している13の問題点は下記の囲みの通りです。
レポート本体は、以下からダウンロードできます。
http://www.foejapan.org/energy/news/150113.pdf
> 関連記事:環境省がパブコメ募集中:福島原発事故に伴う健康管理…ポイントをまとめました
http://www.foejapan.org/energy/action/141231.html
http://www.foejapan.org/energy/news/150113.html
レポートでは、「内容以前に、専門家会議の委員構成や会議の進行に大きな問題点があった」とし、また、「福島県県民健康調査において、小児甲状腺がんの多発という点でも、転移・浸潤を含む症状の深刻さという点でも、2巡目の検査で1巡目では見つからなかったがんが4例見つかるという点でも、非常に深刻な結果が出ているのに、これについて分析・検討することをしなかった」とした上で、専門家会議の中間取りまとめが、福島県で行われている甲状腺検査について、「疫学追跡調査」へ見直すよう提言している点について「個々人の健康管理を蔑ろにしている」と批判しています。
また、「中間取りまとめ」が、福島県外における甲状腺検査の必要性を否定した点については、NSCEARのデータや最近の研究における放射性ヨウ素も放射性セシウムの拡散評価では、福島県外において福島県と同等レベルの汚染の広がりを示している点を指摘。「福島県内外で被ばく量を比較することは非科学的である。県外の被ばく量は低いとして、県外における健診を切り捨てることは認められない」としています。
UNSCEARにおけるヨウ素131の拡散評価 アニメーション画像より
出典: Attachment for UNSCEAR 2013 Report Vo.1
また、WHOとUNSCEARの報告の引用については、内容に関する検証を行っていないばかりか、原典に書いていないことが引用されていたり、恣意的に、あるいは誤って引用されたりしている点を事例をあげて批判しています。
さらに、甲状腺がん以外のがんや、非がん疾患について否定していることは、原爆被爆者の調査やチェルノブイリ原発事故の被ばく者などを対象とした多くの研究結果を踏まえていないと指摘しています。
出典:「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワーク翻訳資料、Twenty-five Years after Chernobyl Accident: Safety for the Future. National Report of Ukraine, 2011、市民研通信第9号 通巻 137 号 2011 年 10+11+12 月 )。
同委員会では、「以上のことから、この『中間取りまとめ』を、原発事故に伴う住民の健康管理施策の根拠にするべきではなく、環境省は施策の全面的な見直しを急ぐべき」としています。
レポートが指摘している13の問題点は下記の囲みの通りです。
レポート本体は、以下からダウンロードできます。
http://www.foejapan.org/energy/news/150113.pdf
「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」(「専門家会議」)による中間取りまとめの問題点 I.はじめに:専門家会議の委員の問題、議論の進め方 II.「中間取りまとめ」の具体的問題点 1.「基本的な考え方」ではUNSCEAR2010年報告、ICRP2007年勧告の内容を意図的に曲解し、100mSv以下のリスク評価を行っている 2.現在、福島県県民健康調査において明らかになってきている事象、とりわけ甲状腺がんについての疫学的な分析や、個々の症例についての分析・考察が行われていない 3.福島県で行われている甲状腺検査について、「疫学追跡調査」へ見直すよう提言。個々人の健康管理が蔑ろにされた 4.「専門家会議」では、実態を検討せず、一般論に基づき「偽陽性」「過剰診断」の議論が繰り返された 5.放射線による健康影響について、甲状腺がん以外の癌や、非がん疾患について検討していない 6.福島県内外で被ばく量を比較することは非科学的である。県外の被ばく量は低いとして、県外における健診を切り捨てることは認められない 7.甲状腺の初期被ばく線量評価は、プルームや短半減期核種のデータが限られていることを前提とすべきである。「中間取りまとめ」では、 甲状腺スクリーニング1080人のデータが非常に不確かなのにもかかわらずそれを採用している。 8.国際機関の評価として、WHOとUNSCEARのみに依拠しているが、内容に関する検証を行っていないばかりか、原典に書いていないことが引用されていたり、恣意的に引用されたりしている。また、WHOとUNSCEARにおける警告的な部分を十分踏まえていない 9.福島原発事故における発がんリスクを「統計的な有意差を検出することは困難」とし、低線量被ばくにおける発がんリスクの有意性を示す多くの論文を無視している 10.会議に招聘した外部専門家の意見を検討していない 11.被害当事者の聞き取りをしておらず、そのニーズを踏まえていない 12.被爆者援護法による総合的な保健・医療・福祉政策を手本にすべきである 13. 中間取りまとめは、あくまで「中間」であり、最終報告書ではないにもかかわらず、なぜそれに基づいた施策(案)が出されるのか III. 終わりに:事故の被害拡大の責任および「一定の線量」を策定しなかった行政不作為 別紙1:深刻な甲状腺がんの症例 別紙2:UNSCEARによる福島県および近隣県の自治体ごとの1歳児甲状腺吸収線量の評価 別紙3:県境を超える放射性物質の広がり 別紙4:項目9に関わる、「専門家会議」が無視している外部識者の主なる意見 別紙5:原爆被爆者の 保健・医療のための施策・制度 別紙6:原爆被爆者とチェルノブイリ事故被災者(ウクライナ)の支援対象疾病 別紙7:被ばくに関わる健康管理対策の概略的な比較 |
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http://www.foejapan.org/energy/action/141231.html
http://www.foejapan.org/energy/news/150113.html