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オーストリア 英国の新規原発建設への政府補助支出を欧州司法裁判所に正式に提訴。「原発は補助金で支えるような革新的技術ではない」「原発はコスト高」と主張(FGW)

2015-07-07 15:35:41

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オーストリアは6日、英国の新規原発ヒンクリー・ポイントCの建設計画へ英国政府が巨額の補助金を支出することを認めた欧州委員会を欧州司法裁判所に正式に提訴した。原発への国家補助が自由化が進むEUの電力市場での競争原理を歪めるかどうかという論点に司法がどう評価をするかが注目される。

 

 焦点となっているのは、英国がサマセット州のヒンクリー・ポイントに新たに設立を計画している同C原発。フランスの電力会社EDFが主体となって原発の建設は仏アレバ社が担当する。しかし、日本の東京電力福島第一原発事故後、原発の安全対策コストが上昇したことで、事業の採算性が悪化、英政府はEDFが事業から撤退しないように、176億ポンド(約3兆2000億円)の補助金の支出を決め、欧州委員会も昨年10月に認めている。

 

 

 この欧州委員会の承認が「誤りだった」としてオーストリアが承認無効の提訴に踏み切った。オーストリアのヴェルナー・ファイマン首相は「原発は政府が補助金で支援して開発を促すようなイノベーティブ(革新的)な技術ではない。補助金の対象にするのはおかしい」「補助金は、もっと新しく、近代的な技術の支援に使われるべきだ」と指摘した。

 

オーストリアのファイマン首相
オーストリアのファイマン首相

 

またルプレヒター環境相も、「原子力エネルギーはもはや経済的にも生き残れない。これを政府補助金で人為的に下支えするべきではない。安全でもなく、コストも高い原発への支援は時代遅れ。我々はその代わりに再生可能エネルギーをさらに拡大する『欧州エネルギー大転換』を促進すべきだ」と述べた。

 

 さらに原発推進者が主張する原発はCO2を排出しない「クリーンなエネルギー」という論点についても、ファイマン首相は「たとえ、原発が温暖化抑制に効果があるとしても、原発の全体的な環境負荷が地球にとってマイナスであることは議論の余地がない」と断じた。オーストリアは脱原発路線をとっている。同国の政治家の「原発はオールド技術」「原発はコスト高」「原発の環境負荷は大きい」という指摘は、わが国での原発議論にも影響を与えそうだ。

 

 英国政府は当初、ヒンクリー・ポイントCの建設コストを160億ポンドとはじいていた。しかし、その後の安全性対策等で、245億ポンドに上昇している。さらに完成後の運転コストの上昇等を見越して、170億ポンドの補助金を支出するという。補助金の使途は、原発電力の販売価格を35年間にわたって事実上保証するほか、原発が早期閉鎖となった場合の補償金を含む。

 

 これに対して英国のエネルギー気候変動省(DECC)のスポークスマンは「我々は欧州委員会による補助金承認の決定は法的に問題はないと確信している」との声明を発表した。欧州委員会は、どのエネルギーを使うかは、各国の国内問題、との立場をとっている。