HOME13 原発 |核燃料サイクルの軸になるMOX燃料の再処理費用、電力各社はすでに2016年3月期決算で費用計上中止。経済産業省は電力会社への実務処理の是認と、国民への説明を使い分けか(?)(各紙) |

核燃料サイクルの軸になるMOX燃料の再処理費用、電力各社はすでに2016年3月期決算で費用計上中止。経済産業省は電力会社への実務処理の是認と、国民への説明を使い分けか(?)(各紙)

2018-09-03 13:27:04

MOX2キャプチャ

 

 各紙の報道によると、通常の原発でプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を燃やすプルサーマルを巡り、原発を持つ電力会社10社が、一度使ったMOX燃料を再処理して再び燃料として利用するための費用の計上を、2016年度以降中止していたことが分かった。

 

 共同通信が報じた。政府は7月に閣議決定したエネルギー基本計画で、使用済みMOX燃料の「処理・処分の方策を検討」と明記、初めて廃棄物として処分する選択肢にも言及した。だが、電力会社はそれよりも2年も前に、会計上の扱いとして、再処理化を断念していたことになる。実務の取り扱いと政策決定の乖離が露呈した形でもある。

 

 これまで電力会社は再処理に関する費用を、通常の核燃料とMOX燃料に分けて将来の支払いに備える引当金や積立金の形で会計処理してきた。これまで電力10社合計で使用済みMOX燃料再処理のための引当金の計上は、16年3月末時点で約2300億円となる。

 

MOX1キャプチャ

 

 MOX再処理には新たな再処理工場の建設が必要となる。電力各社が再処理費用の計上をやめたのは、建設に伴う巨額の費用がかかることが断念の理由とみられる。電力会社がMOX再処理の用意をできないと、核燃料の再利用は一度のみとなり、核燃料サイクルの意義は大きく崩れたことになる。

 

 これまで政府は核燃料サイクル政策の一環としてMOX燃料を再利用する方針を掲げていた。今回の電力各社の費用計上取りやめは全社で一致しており、担当の経済産業省の了解を得て調整・処理したと想定される。実務的には電力会社の再処理断念を是認しながら、政策変更については「時間稼ぎ」をしてきた「二重基準」にも批判も出そうだ。

 

 政府は今回のエネルギー基本計画で初めて使用済みMOX燃料の「処分」に言及したが、こうした政策転換が経産省の審議会などの公の場でまともに議論された形跡はない。「御用審議会」なので当然ともいえるが、元々、MOX燃料の再処理が実現可能だとの声は政府内にもほとんどない、との指摘もある。

 

 にもかかわらず政府が MOX再処理の旗を明確に降ろさずにいるのは、それが核燃料サイクルの存在意義の一つだからだ。使い終わったMOX燃料を廃棄物として処分するのであれば、莫大な費用をかけて、通常の使用済み燃料をMOX燃料として再利用する計画自体に疑問符が付くことになる。

 

 今回の電力各社の実務処理の先行は、核燃料サイクル政策がすでに行き詰まっているのに、経産省が「政策の失敗」の責任回避のための言説を続けているに過ぎないことを示している。政治がしっかりと「ピリオド」を打つべきだが、政治もその判断能力を欠いているのもしれない。

 

 プルサーマルは現在、再稼働した関西電力高浜原発や四国電力伊方原発、九州電力玄海原発で実施中だ。経産省と電力会社は国内外に保有する余剰プルトニウム削減のため、今後も順次プルサーマルの原発を増やす方針だが、使い終わったMOX燃料は再処理されないため、全て廃棄物になることになる。

 

 電力各社が出資する日本原燃は、青森県六ケ所村で使用済み燃料の再処理工場とMOX燃料の加工工場の建設を進めている。だが、総事業費は約16兆円と膨らみながら操業延期が続いている。電力各社に代わってMOX再処理を引き受けるには、新たに「第二再処理工場」を造らなければならないが、さらなる費用確保は困難な状況にある。

 

 政府は16年、新たに認可法人「使用済燃料再処理機構」を設立している。通常の核燃料もMOX燃料も区別せず、電力会社は原発で使った分に応じて機構に拠出金を支払う形となっている。