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東京電力 福島第一発電所に「追加津波」のリスク。千島海溝での巨大地震発生時に最大10m強が押し寄せる可能性。東電は防潮堤延長工事を目指す(各紙)

2018-09-14 17:35:31

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 各紙の報道によると、東京電力は、北海道沖合の千島海溝で巨大地震が起きた場合、追加津波の襲来で、福島第一原子力発電所の建屋内部に溜まっている高濃度の放射性物質の汚染水が大量に外部流出する可能性があることを明らかにし、防潮堤の延長工事等に取り組む意向を示した。

NHKが報道した。政府の地震調査委員会は去年12月、北海道の沖合の「千島海溝」で起きる巨大地震について「切迫している可能性が高い」と評価している。これをを受け、東京電力が分析した結果、いったん津波が起きると、福島第一原発に最大で10m強の高さで津波が押し寄せる可能性が予想される。そうなると建屋内部に溜まっている約4万6000㌧の高濃度放射能汚染水が外部流出する恐れがあるという。

 汚染水は、事故で溶け落ちた核燃料を冷やすため原子炉に注いでいる水や、自然に流れ込む地下水等が高濃度汚染水となって溜まっている。現在、これらの汚染水は建屋からくみ上げ、処理水の一部は原子炉に戻し、その他はタンクで保管されている。しかし、汚染水は日々発生するため、原子炉建屋や、タービン建屋、プロセス主建屋などの地下に溜まっている。セシウムやストロンチウムなどの放射性物質が高い濃度を含んでいる。

 汚染水が溜まっている建屋は、海抜8.5mの位置にあり、10mを超えるような津波が到達した場合、建屋に津波が流れ込み、引き波によって高濃度の汚染水や強い放射線を出す廃液などが海に流れ出す懸念がある。



 このため東京電力は、14日に開いた原子力規制委員会の会合で、津波による浸水の被害を防ぐため建屋の出入り口など開口部を塞ぐ工事を前倒しして進めるほか、防潮堤を北側に延長して1号機から4号機の海側に作ることなどの新たな津波対策を明らかにした。

 これに対して原子力規制庁の担当者からは「防潮堤の延長で廃炉作業に影響がないか検討してほしい」との指摘が出たという。ただ、廃炉作業を急ぐ間にも津波リスクに無防備な状態を続けることは許されないはずだ。これまでも追加津波リスクに対して十分な手を打ってこなかった点は規制庁にも監督責任があるといえる。

 東電側は「津波に襲われれば廃炉作業のための設備が使えなくなってしまい、廃炉が遅れる可能性もある。防潮堤をどこにどういう形で作るか、急いで検討したい」(福島第一廃炉推進カンパニーの小野明代表)としている。

 この問題では、日本原子力学会の廃炉検討委員会委員長で、法政大学の宮野廣客員教授は、「建屋の地下の汚染水は濃度が非常に高く、それが外に出てしまうということになれば、影響は大きい。大きな津波の場合、波力で設備が壊れることがあるので、どういう影響があるのか、きちんと評価して対策をしないといけない。すべてに対して完璧な対策を取ることはできないが、最悪な条件になったとしても最低限守るべきものを決めて、そこまでは守るという対策を進めてほしい」と話している。

 東電は、これまでも福島第一原発が東日本大震災と同程度の高さ13.5mの津波に再度、襲われる可能性を想定して、防潮堤の建設や建屋に津波が流れ込まないよう開口部を塞ぐ対策などを進めてきた。だが、千島海溝の巨大地震のリスクが大きいことから、対策を前倒しして進めることにするとしている。