東電福島第一原発、放射能汚染水、「最新鋭のALPS」で浄化後も基準2万倍超えの放射性物質検出。トリチウムどころではない(各紙)
2018-09-29 10:10:44
各紙の報道によると、東京電力福島第一原発の敷地内のタンクに保存している放射性物質汚染水について、東京電力は28日、一部のタンクから放出基準値の最大約2万倍に相当する放射性物質が検出されていたことを公表した。浄化されたはずの汚染水約89万㌧のうち、8割超の約75万㌧が基準を上回っていた。
事故を起こした福島第一原発から流出した放射性物質汚染水は、東芝と日立が開発した多核種除去設備(ALPS)で処理し、タンクに保管している。現在も、原子炉内の溶け落ちた核燃料を冷やした後の高濃度の汚染水は流出し続け、ALPSによって処理された後、タンクに保管され続けている。
東電、経産省によると、これらの保管汚染水を分析したところ、一部のタンクの汚染水から、ストロンチウム90などが基準値の約2万倍にあたる1㍑当たり約60万ベクレルの濃度で検出された。東電はこれまで、ALPSではトリチウム以外の62種類の放射性物質を除去できると説明してきたが、実際はALPSは機能不十分だったことになる。
東電は今後、焦点となっている汚染水の海洋放出などの処分法を決めた場合は、再びALPSに通して処理する方針も示した。タンクに保管されている処理済みの汚染水は現在94万㌧にのぼっている。現状の処理能力は1日最大1500㌧で、既存の保管分を再処理することになれば、追加の費用や膨大な時間がかかる。
東電は、保管汚染水が基準値を超えた原因について、2013年度にALPSの不具合が発生、十分に処理しきれなかった高濃度の汚染水がそのまま保管されているほか、処理量を優先し、放射性物質を取り除く吸着材の交換が遅れたことなどを挙げている。いずれも、ALPSの操作上の人為的なミスとなる。
ただ、ALPS自体の機能を疑問視する指摘も以前からあった。チタン酸塩を吸着材とする吸着塔の中で放射性ストロンチウムを吸着させる構造になっているが、過度にストロンチウムを吸着した場合、放射熱と放射線化学反応(ベータ線が水に照射して水素を発生)による水素爆発のおそれがある、との指摘だ。
東電では今後、吸着材の交換時期を見直すなど、ALPSの機能向上を進める対策を検討するという。それでも、今後も基準値超えの放射性物質が検出される可能性は否定できないと認めた。
東電はこれまで、こうした測定値をホームページで公表してはいた。だが、数字だけを掲載し、その意味等については積極的には説明してこなかった。このため、一般の人が閲覧しても理解不能な状況だった。東電は「掲載しただけで満足していたのは大きな反省点」としているが、意図的に、第三者に理解されないようにしてきた疑念もある。
しかし、今年8月に福島県などで開かれた経産省の公聴会では、汚染水の中にトリチウム以外の放射性物質があることに批判が集まっていた。ALPSで処理後の汚染水にはトリチウム以外は含まれていない、というのが政府の説明だったためだ。実際は放射性のヨウ素やストロンチウムも基準を超えていることが、公聴会直前の報道や住民側の指摘で明かされた。
東電の公表データに基づくだけでも、ヨウ素129の場合、2017年4月~2018年7月までの間だけで、60回以上も告示濃度を超える値が、ALPSの処理後の出口で検出されていた。最高値は2017年9月18日の62.2Bq/L。データを”発見”した環境NGOのFOE Japanは「何かのはずみに1回高い値がでたのではなく、慢性的に発生している」と指摘している。
こうした指摘がなければ、汚染水の分析結果は正確には公表されず、最悪の場合、トリチウムしか含まれていないという「説明」で汚染水が海洋放棄されていたかもしれない。そうなると海洋汚染で取り返しのつかない「二次被害」を引き起こしていた可能性もあった。
汚染水の8割超が基準値を超えていたことを東電自身が認めたことは、これまで汚染水問題について、安倍首相自らが「(汚染水は)コントロールされている」と国際公約してきたことが、根拠のないことを改めて示すものでもある。東京五輪の成功を至上使命として、原発事故の影響の大きさを矮小化し、汚染継続の事実を見えにくくしてきた政府の「罪」が改めて露見した。
https://foejapan.wordpress.com/2018/08/26/0826/
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/genkyo/fp_cc/fp_alps/index.html