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国際海事機関(IMO)のロンドン条約/議定書締約国会議、東電福島第一原発の放射能汚染処理水排出問題で議論。韓国以外に、中国、チリ等も海洋放出に憂慮を表明(RIEF)

2019-10-10 17:11:18

IMO1キャプチャ

 

 ロンドンの国際海事機関(IMO)本部で開催されているロンドン条約/議定書締約国会議で、東京電力福島第一原発の放射能汚染水問題についての議論が交わされ、すでに憂慮を表明していた韓国に加えて、中国、チリも同様の憂慮を表明し、福島事故原発の汚染水問題の取り扱いが国際問題化してきた。

 

 議論の模様は、環境NGOのグリーンピースが、同会議に出席したグリーンピース・インターナショナル(本部)科学部門のデビッド・サンティロ博士の話を引用する形で紹介した。同博士は、「放射能汚染水について国際社会が抱いている憂慮を目の当たりにした。日本政府は情報提供をしたものの、汚染水をどうするかについては決定していないと繰り返し、海洋放出するのではないかという懸念は深まった」と語っているという。

 

福島第一原発
福島第一原発

 

 グリーンピースによると、同博士はこの日の会議で、東電福島第一原発の敷地内に保管されている放射能汚染水について、国際協力のもとで解決すべきだと訴えた、としている。そして日本政府に、汚染水が処分できる基準を満たすまでの処理にどのくらいの時間を要するのか、トリチウム除去技術の評価の現状、なぜ取り除けるはずの放射能が取り除けなかったのか、また長期保管の可能性等について質問した。

 

 これに対し、日本政府の回答は、事故以来継続的に情報提供をしていること、ロンドン条約/議定書締約国会議はこの問題を議論する適切な場ではないこと、放射能汚染水は処理されてほとんどの放射性核種を取り除いていること、その処理水の処分方法については検討中であること、もしこの先処理水を放出することになれば、国際放射線防護委員会(ICRP)や国内基準を遵守すること等を説明したという。

 

 また、放射能除去については、現在福島第一原発に導入されている設備は、トリチウム以外の核種は取り除けるとし、トリチウム除去技術については、今後も進展を注視するした、と紹介している。

 

 こうした日本の回答に対して、韓国政府は、「放出」という意思決定はなされていないことを再確認したものの、近々タンクは満杯になるとして憂慮を示した。また、もし大阪市の松井市長が発言したように、大阪湾にまで処理水を船で運んで投棄するようなことがあれば、ロンドン条約に違反することになると指摘した。そして、汚染水管理計画を国際社会と共有するよう日本に求めた。

 

福島第一原発の汚染処理水排出問題で意見を述べる韓国代表
福島第一原発の汚染処理水排出問題で意見を述べる韓国代表

 中国政府も、汚染水の海洋放出の可能性について憂慮を共有するとし、日本政府に対し、今後も引き続き情報提供がなされることを希望すると述べた。

 

 その後、日本政府に再び発言の機会が与えられ、日本政府は、汚染水の大阪湾への放出を受け入れるとした松井大阪市長や海洋放出以外に選択肢はないと述べた原田前環境大臣の発言は個人的なものであり、日本政府の決定に関与するものではないと指摘。(周辺住民など)ステークホルダーとの議論は継続されると説明した。

 

 チリ政府は、日本による情報提供に関心を示し、また、日本が否定した「ロンドン条約/議定書締約国会議は、本件を議論する適切な場ではない」との反論に対して、「適切な場である」と主張した。

 

 一方、原発大国のフランスは、福島第一原発の汚染水問題は、ロンドン条約/議定書締約国会議ではなく、IAEA(国際原子力機関)の案件であると指摘。日本の立場をサポートする発言を行った。ただ、これについて議長は、当会議は、IAEAに助言を求めることができると述べた。

 

  ロンドン議定書遵守委員会副議長を務めるキム・ヨンソク・シカゴ総領事は「日本は、汚染水放出問題はIAEAだけで議論すれば良いと考えたが、もはやロンドン議定書の違反ではないかどうかも気を遣う必要がある」と指摘。「もし放流した場合、来年のIMO総会で海洋環境を保護する責任を示したロンドン議定書第2条違反の議論が提起される可能性もある」と話している。

 

 IMOの事務総長は現在、韓国出身の林基沢(Kitack Lim:イム・ギテク)   氏が務めている。

 

 グリーンピース・ジャパンは今年9月、日本全国の1,000人を対象に汚染水の海洋放出の是非を問うオンラインアンケートを実施した。それによると、全体の50.8%が「反対」と回答した。反対の理由として「福島県だけでなく、日本・世界全体に悪影響を与えると思うから」が最多だった。

 

 グリーンピースは、放射能汚染水は、海洋など環境への放出ではなく、当面陸上で保管し、並行して汚染水から放射性物質(トリチウムも含む)を取り除く技術を適用することを提言している。

https://www.greenpeace.org/japan/nature/press-release/2019/10/10/10563/