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東京電力、「福島第一原発の漏洩警報は10件。いずれも処理水ではなく、台風による降雨」と説明。漏洩量や放射能データは公表せず。雨が降り込む汚染処理設備の構造問題も浮上(RIEF)

2019-10-15 02:15:31

TEPCO2222キャプチャ

 

 東京電力は、台風19号の影響で福島第一原発で、同社の公表だけで10件の漏洩警報が起きた問題で、このうち2件は「誤作動」等で、他の8件も汚染処理水の漏洩ではなく、「台風の降雨と雨水」による、との説明を公表した。ただ、漏洩した水の量や、放射性物質の濃度がどうだったかについては公表していない。また漏洩が、汚染処理作業を行う多核種除去設備や淡水化処理設備等で発生した理由の説明もない。

 

 東電は台風の影響で敷地内で発生した漏洩警報の発生件数が、15日午前9時現在で10件に上ったとした。

 

▼「2号機廃棄物処理建屋中央エリア滞留水移送配管からの漏えい警報の発生」

▼「既設淡水化処理設備建屋における漏えい警報の発生」

▼「プロセス主建屋における漏えい警報の発生」

▼「増設多核種除去設備における漏えい警報の発生」

▼「6号機淡水化装置コンテナ内における漏えい警報の発生」

▼「プロセス主建屋近傍における漏えい警報の発生」

▼「プロセス主建屋近傍における漏えい警報の発生(循環設備A系)」

▼「使用済セシウム吸着塔一時保管施設(第三施設)における漏えい警報の発生」

 

以上の8件は、台風19号による降雨・雨水の漏洩と判断したとしている。

 

▼「1号機タービン建屋1階漏えい監視盤用 直流電源の異常を示す警報の発生について」

▼「使用済セシウム吸着塔一時保管施設(第三 施設)における漏えい警報の発生について(10月13日 午後0時59分発生分)」

 以上の2件については、それぞれ故障と誤作動と判断している、と発表した。

 

TEPCO2キャプチャ

 

 一連の漏洩警報の発生に基づいて、1号~4号機の滞留水移送を停止していたが、13日午前5時24分、1号機タービン建屋の滞留水移送を再開。その後、2号機~4号機も、同日午後4時28分に再開した。その後も、パトロールによる設備の点検を実施した結果、「現在のところ主要設備に影響のある異常は確認されていない」としている。

 

tepco11キャプチャ

 

 東電が、漏洩警報が反応した漏洩案件の大半について、「台風による降雨量と雨水」と判断したのは、放射性物質の測定をした結果、と思われる。そうだとすると、判断への信頼性を担保するためにも、判断根拠となった測定結果のデータを公表するべきだろう。

 

 また、仮に東電の発表通りに台風の降雨によるものだとしても疑念は残る。今回の漏洩案件には、多核種除去設備や淡水化処理設備、使用済セシウム吸着塔一時保管施設といった放射性物質の外部流出を封じ込めるに設置した重要施設が含まれていた。そこに台風の降雨が降り込んだことになる。

 

 こうした重要施設に外部から雨水の降り込み等が起きてしまったのは、それだけ台風19号の威力がすごかったという側面の一方で、これらの施設が共通して、外部からの降雨の流入に弱い、という構造上の問題がある可能性がある。

 

 膨大な資金を投じて設置した多核種除去施設で、丁寧に放射性物質を除去しながら、それらの施設が、雨の降り込みを防げない構造になっているのならば、慎重を期したはずの除去作業や保管作業の意義が薄らぎはしないか。福島原発作業全体のレジリエンス(強靭性)が引き続き問われる。

 

(注)東電のプレスリリースの追加発表に基づき、記事はアップデート(2019年10月16日午前11時40分時点)しています。

 

http://www.tepco.co.jp/decommission/information/newsrelease/reference/pdf/2019/2h/rf_20191015_2.pdf

http://www.tepco.co.jp/press/mail/2019/1518793_9000.html

http://www.tepco.co.jp/press/mail/2019/1518799_9000.html