HOME |気候変動による洪水リスク、グローバルに高まっていることを、衛星画像と気候モデルで解析。MS&ADインシュアランスのインターリスク総研、芝浦工大、東京大学の研究チーム(RIEF) |

気候変動による洪水リスク、グローバルに高まっていることを、衛星画像と気候モデルで解析。MS&ADインシュアランスのインターリスク総研、芝浦工大、東京大学の研究チーム(RIEF)

2021-07-26 13:36:07

Interrisk001キャプチャ

 

  MS&ADインシュアランスグループホールディングスのインターリスク総研は、芝浦工業大学、東京大学生産技術研究所らと連携し、衛星観測と気候モデルを使って、気候変動によって洪水リスクがグローバルにどう影響を受けているかを解析した。その結果、洪水の発生は、河川の年間最大日降水量の増減傾向と相関が高いことが検証された。また、2010 年~2013 年の間に、経済的発生した被害の大きかった22の洪水の6割以上が温暖化の影響を受けていたことがわかったとしている。

 

 今年も、欧州や中国で大規模な洪水が発生、多くの犠牲者を出している。これらの災害についても温暖化の影響が想像されるが、今回の研究チームの検討結果はそうした温暖化の影響を抽出し、将来の洪水予測につなげる試みだ。

 

 研究チームは芝浦工大工学部土木工学科平林由希子教授、東京大学生産技術研究所山崎大准教授、インターリスク総研寺崎康介マネジャー上席研究員らで構成した。「グローバルな洪水リスク情報の効果的な活用方法に関する研究」(LaRC-Flood プ ロジェクト)。

 

 過去35年間の世界の洪水頻度の変化を衛星画像から検出し、それらの洪水に及ぼした地球温暖化の影響を気候モデルを活用して解析した。これまでに熱波・旱魃・豪雨などの気象災害に対する気候変動影響の分析は進んできたが、河川洪水の場合、従来の気象災害に比べて空間スケールが小さ く、かつ複雑なメカニズムで引き起こされるため、「温暖化影響の検出と原因特定(Detection and Attribution)」の研究対象には難しいとされてきた。

 

Interrisk002キャプチャ

 

 そこで研究チームは衛星画像データによる分析と、気候モデルと全球河川モデルを組み合わせた解析によって課題を克服。衛星画像を使って、河川氾濫域の1984年~2000年、2000年~2013年の間の水の存在比の変化が、河川の年間最大日降水量の増減傾向と相関が高いことが分かったとしている。

 

 この分析によって、グローバルに推計した過去の洪水頻度の変化は、観測が可能な地域で29%の増加、41%で減少傾向にあることがわかった。また2010年~2013年の間に、グローバルで起きた経済的あるいは人的被害が大きかった22の洪水への温暖化の影響を調べたところ、64%に相当する14のイベントで温暖化の結果、洪水の発生し易さが変化していたことがわかったとしている。

 

 それらの変化要因は、北半球での降水量の増加や、気温上昇による積雪量の減少などが原因となっている。融雪による春の洪水は、温暖化の影響を受けやすいことも判明したとしている。

 

https://www.ms-ad-hd.com/ja/news/news_topics/news_topics20210721/main/0/link/20210721_LaRC_Flood.pdf