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T&D保険グループ、投融資ポートフォリオの気候変動リスク分析の高度化取り組みを実施。移行リスクの定量的シナリオ分析と、物理的リスクの保険収支への影響把握へ(RIEF)

2023-02-22 14:59:05

T&D002キャプチャ

 

 T&D保険グループのT&Dホールディングスは20日、投融資ポートフォリオの気候変動リスク分析を高度化する取り組みを実施したと発表した。KPMGコンサルティング等と連携し、TCFD提言に沿った「移行リスク」の定量的シナリオ分析によって投融資ポートフォリオへの影響評価を行うとともに、「物理的リスク」についても、「水害による災害犠牲者数」等の将来予測により、保険収支への影響の定量的分析も実施した。これらの分析により、気候リスクに対するレジリエンス(強靱性)を把握し、今後、事業影響評価や情報開示を進め、対策を実施するとしている。

 

 気候リスク把握の高度化で連携したのは、KPMGコンサルティングのほか、有限責任あずさ監査法人、一般財団法人日本気象協会の3者。KPMGが全体プランニングを担当し、あずさ監査法人がT&Dグループの気候変動の移行リスクが投融資ポートフォリオに及ぼす影響評価を行った。評価に際しては、将来の炭素コスト増加によってポートフォリオ全体が受ける財務インパクトを推計モデルを構築して分析した。

 

T&D001キャプチャ

 

 将来の平均気温上昇シナリオでは、パリ協定の目標と整合する2℃上昇と、不整合の4℃上昇の各シナリオにおいて、グループ傘下の個社ベースの将来の炭素コスト増加を推計するボトムアップ・アプローチ を採用して、将来の株価・債券価格影響を推計し、財務インパクト評価を行った。

 

  その結果、2℃シナリオでは、GHG排出に対する規制の強化や炭素税の導入、低炭素・脱炭素に対応した新規技術への入れ替え、消費者の価値観、行動様式の変化等によって、今世紀半ばまでの中期的な時間軸において、グループの投資先に大きな影響を受ける業種が存在する、と指摘されている。高炭素集約業種へのエンジージメントや、再エネ事業など、低炭素・脱炭素社会への移行に貢献する事業・企業への投融資活動の推進をあげている。

 

 一方の物理的リスクについては、日本気象協会が開発している高精度な気候変動予測データに基づいた「高解像度地域気候シナリオデータセット」を用いて、2100 年までの長期にわたる「水害による災害犠牲者数」と「熱中症搬送数・死亡者数」の将来予測をして、生命保険事業に及ぼす物理的リスクの影響を定量分析した。こちらの場合も2℃上昇シナリオと、4℃上昇シナリオの両ケースで分析した。

 

 

 1.5℃(2℃)シナリオでも、熱ストレスによる死亡者数、熱中症搬送者数が増加するが、いずれも長期間かけて緩やかに上昇するため、保険収支への影響は限定的、と評価した。したがって、保険料率の見直しを従来のように実施することで対処可能としている。これに対して4℃シナリオでは、平均気温の大幅な上昇によって、熱ストレスによる死亡者数、熱中症搬送者数ともさらに増加する。気温の上昇は、長期間にわたり緩やかに上昇するが上昇幅は大きくなることから、保険収支の見直しは、より精緻に実施することになる、としている。

 

 今回の分析結果を反映した定量的な影響と評価については、2023年度に発行するサステナビリティレポートで掲載するとしている。

 

 T&Dホールディングスは、今回の高度リスク分析による将来予測を元にして、資金運用や、保険収支への影響を定量的に把握し、それへの対応策を含めて、今後、情報開示を進めていく、としている。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/TJ8795/ir_material/201133/00.pdf

https://www.td-holdings.co.jp/csr/csr-policy/tcfd.html