HOME2. 保険 |住宅保険での水災リスク、気候変動リスクを盛り込み、市町村ごとの5段階制度に改定へ。2024年度から。現状より3割以上の保険料上昇地区も。損害保険料率算定機構が正式発表(RIEF) |

住宅保険での水災リスク、気候変動リスクを盛り込み、市町村ごとの5段階制度に改定へ。2024年度から。現状より3割以上の保険料上昇地区も。損害保険料率算定機構が正式発表(RIEF)

2023-06-29 13:46:59

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  損害保険各社で構成する損害保険料率算出機構は28日、個人向けの住宅総合保険の保険料(参考純率)を、現行の全国一律から、気候変動で増大する水災リスクの影響に応じて5段階に区分する新制度を、2024年度から導入すると正式に発表した。リスク区分は市町村単位で設定し、最もリスクの高い地域では現状より30%以上、保険料率が高くなる。

 

 (写真は、2019年10月、台風19号によって決壊した長野・千曲川の堤防)

 

 地域区分制度の導入は、自然災害増大により保険金支払い増に直面する保険会社の経営への配慮とともに、リスクに応じた負担の公平化を保険契約者に求めるものとしている。水災リスクの高い地域では保険料負担増を嫌って保険加入を見合わせる事例が増える可能性もある。気候災害に対する個人と社会のレジリエンス(耐久性)をどう確保するかが改めて課題になってきそうだ。https://rief-jp.org/ct2/136430?ctid=68

 

 同機構によると、住宅総合保険の参考純率全体の引き上げ率は平均13.0%で、過去、最も高い引き上げ率となる。水災リスクの度合いに応じた5段階区分は、現状の試算では料率差は2.26倍となるが、高リスク地域での激変緩和措置として今回の改正での料率差は1.50倍で抑制したとしている。今後、さらなる料率差の拡大を認めていく方向にある。

 

 現状の保険料率でも、保険の対象となる建物の構造や築年数によって料率は変更される。今回、それに加えて、建物が所在する市町村を水災リスクで5段階に区分し、同じ構造の建物、築年数でも、保険料率が変わる仕組みとする。

地域区分は、保険料が最も安いグループの「1等地」から最も高いグループである「5等地」の5区分とする。同機構が、示した参考事例によると、保険金額が建物2,000万円、家財1,000万円、築10年以上で、建物の構造が「M構造」( 耐火構造  :  鉄筋コンクリート造等の共同住宅)、「T構造」(構造以外の耐火構造の建物、準耐火構造(鉄骨造等)の建物)、「H構造」(上記のM、T構造以外の建物 :木造等)ごとの改定率は、以下のようになる。

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 東京都での新料率は「M構造」のコンクリート造りの建物の場合で、「1等地」の4.3%増~「5等地」20.2%増と、15.9%の料率差となる。同様に、大阪では11.6%増~25.9%増。建物の種類を問わず、「5等地」での新料率は30%前後の引き上げ率となる。興味深いのは、コンクリートの「M構造」や耐火構造の「T構造」よりも、木造の「H構造」の建物の場合が新料率引き上げ率が低い点だ。

 

 新料率は建物の耐久性よりも地域全体の水災リスクを評価するものなので、旧来型の木造建築の建物が多い地域は、元々、水災リスクが低い旧市街地が中心になっているケースが多いのに対して、比較的リスクの高い振興開発地域に住宅を建てる居住者は、建物の耐久性を意識して耐久性能の高い建物を建築してきたためと考えられる。しかし、個々の建物は地震等への耐久性が高くても、地域全体を覆う水災リスクに対してはレジリエントではない。こうした点が、結果として保険料率の上昇度の違いに反映すると考えられる。

 

 実際の5段階区分の保険料率は都道府県単位ではなく、市町村単位となる。したがって、東京都の場合でも、23区の荒川区、葛飾区、足立区等は「5等地」となり、世田谷区、杉並区等は「1等地」で、それぞれの料率差は20%前後の開きが生じる。

 

 火災保険とともに住宅総合保険に特約で組み込まれる水災保険は、台風の襲来や集中豪雨時に起きる床上浸水や家屋の流出等で被害に遭った場合の被害額の補償を提供する。現状の火災保険の契約件数は全国で約2000万件。そのうち水災保険の付帯率は約65%とされている。実際の保険料の引き上げ幅は、機構が示した参考純率に、各保険会社の人件費等の経費を加味して保険会社ごとに算定される。保険料率の引き上げは最近6年間で4回目で、契約者の負担感が増大している。

https://www.giroj.or.jp/news/2023/20230628_1.html

https://www.giroj.or.jp/ratemaking/fire/202306_announcement_attachment.html