HOME2. 保険 |損害保険各社。台風等の洪水被害を補償する火災保険料率を、昨年に続き24年度に引き上げ。水害リスクに応じ全国を5段階に分ける地域別保険料制度導入へ。住宅価格にも影響しそう(各紙) |

損害保険各社。台風等の洪水被害を補償する火災保険料率を、昨年に続き24年度に引き上げ。水害リスクに応じ全国を5段階に分ける地域別保険料制度導入へ。住宅価格にも影響しそう(各紙)

2023-06-14 13:40:05

2019年10月、台風19号の襲来で決壊した長野・千曲川

 

  各紙の報道によると、損害保険各社は台風や集中豪雨等で発生する洪水等の水害を補償する火災保険の保険料を2024年度から引き上げるほか、保険料を現行の全国一律から、水害発生確率に応じて、市町村別に5段階に分ける地域別保険料制度を導入する。引き上げ率は約13%と過去最大になるが、地域別制度の導入で、都市の河川周辺の密集部の保険料は、現行より最大で3割以上値上がりするという。市町村別の保険料区分を近く公表する。住宅価格等にも影響しそうだ。

 

 日本経済新聞が報じた。損保各社で構成する損害保険料率算出機構が保険料の目安となる参考純率をまとめた。6月下旬の理事会で承認したのちに金融庁へ届け出る。

 

 水害補償を含む火災保険の参考純率は2021年に個人向けの火災保険の場合、全国国平均で10.9%引き上げられた。これは2005年の平均8.7%を上回る過去最高の引き上げとなった。参考純率の適用期間も最長10年から同5年へと短縮されている。これを受け、損保各社は22年10月以降、火災保険料の引き上げを実施したばかりだ。

 

  今回のさらなる参考純率の引き上げと、地域別保険料制度の導入は、気候変動の激化が加速する中で、水害リスクの高い地域と低い地域で同率の保険料を付与するよりも、リスクに応じた保険料に切り替えることで、消費者の側の気候変動意識を高める狙いもあるようだ。

 

 わが国全体での火災保険の契約数は約2000万件で、水災保険の付帯率は約65%とされる。河川周辺への近さや海抜の低さ、洪水対策への対応状況等を考慮した地域別保険料制度の導入で、最もリスクが高い地域と低い地域の料率差は1.5倍に開くという。

 

 このため個人向けの一戸建て住宅の場合、契約者が多い東京や大阪など都市部の保険料はリスクの高い市町村では、現行よりも最大3割超上がるという。最もリスクが高い地域で築10年以上の住宅だと、年間の保険料が4000~6000円上がる場合も想定される。

 

 料率機構は全国の市町村が5段階のどの区分に属するかを近く公表するとしている。5段階のうち、最もリスクが低い区分は全市区町村の約20%。最もリスクが高い区分は10%程度を占めるという。

 

 水害の多発は、気候変動の激化で顕在化する物理的リスクの代表例の一つ。米国では森林火災の増大で、保険会社は保険料の引き上げだけではコストをまかないきれず、個人向け住宅保険事業から撤退する保険会社も出ている。日本ではまだ保険料引き上げにとどまっているだけ、ましということのようだ。https://rief-jp.org/ct6/136260

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20230614&ng=DGKKZO71867620U3A610C2MM8000