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損保各社の「共同保険」の事前協議問題。新たに仙台国際空港向けの保険契約でも同様の問題が浮上。金融庁も寡占業界に対する監督責任問われる形に(各紙)

2023-07-15 13:28:43

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  各紙の報道によると、損害保険大手各社が、企業向けの共同保険で保険料を事前調整していた問題で、発覚した東急向けの保険引き受け以外に、新たに別の契約でも同様の問題があったことがわかった。浮上したのは、仙台国際空港(宮城県名取市)の保険契約。損害保険ジャパン、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険の3社の担当者が直接会って引き受け条件を協議していたという。

 

 (写真は、業界での不祥事発覚を謝罪する日本損害保険協会会長の新納啓介氏(あいおいニッセイ同和損害保険社長)=6月30日、日本経済新聞から)

 

 日本経済新聞が報じた。それによると、新たに疑惑が発覚したのは、東急が42%出資し、仙台空港を運営する仙台国際空港向けの保険。最初に問題が発覚した東急向け引き受けを担当する損保大手の営業社員らが、同空港の保険契約も担当していたとしている。事前協議をしていたのは、損害保険ジャパン、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険の3社の担当者。https://rief-jp.org/ct2/136565?ctid=68

 

 名前のあがった各社は、日経の取材に対して「個別の契約についてはコメントできない」などと説明したという。だが、すでに損保各社は同様の問題がないかどうか、金融庁から調査指示を受けている。また企業の社会的責任の観点からは、積極的に不祥事を開示することが求められる。3社ともこれまでESG経営を強調してきたが、このままでは、そうした取り組み全体への信頼も失いかねない。

 

 報道によると、3社は東急との保険と同様に、仙台空港向けでも各社がリスクを分担して引き受ける共同保険契約を結んでいた。日経の記事では「大企業では多くの物件や設備を所有しているため、保険会社にとって損失リスクが高く、複数の損保が契約を分担する共同保険にするケースが多い」としている。だが、被害を受けた企業が同業他社に比べて、特に損失リスクが高いとは思われない。実態は、保険会社相互の競争制限や、営業上のコスト削減のために、共同保険を活用してきた側面もありそうだ。

 

 共同保険の入札方式の場合、各社がそれぞれの引き受け保険料を算出して企業側に提示する。それらを踏まえて、企業が提示された保険料に応じて、A社は50%、B社は30%等の形で、各社の分担割合を決める。事故対応などで中心的な役割を担う損保が主幹事となるという。東急向けでは、全社が東急に更改前より2~3割高い保険料率で算出した約30億円の保険料(総額)を横並びで提示していた。

 

 日本損害保険協会の会長の新納啓介氏(あいおいニッセイ同和損害保険社長)は東急の問題が明らかになった時点での記者会見で、「担当者のコンプライアンス(法令順守)意識が非常に低かった」と述べた。そのうえで、あいおいニッセイ同和が現時点で調べた範囲と断ったうえで「業界全般で行われている行為ではないと認識している」と強調した。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB279YM0X20C23A6000000/

 各社の企業としての問題ではなく、担当者の「暴走」との指摘だ。本当にそうだろうか。また金融庁の監督姿勢にも問題はなかったのだろうか。損保各社の価格調整問題では、1994年に公正取引委員会から警告を受けている。業界団体が自動車の整備業者に支払う修理費の工賃を設定し、各社がほぼ一律で適用していた。損保業界は、3社による事実上の寡占体制だ。こうした体制の企業に対して、競争制限的措置を排除する適切な監督指導が行われていたかどうか。金融庁にも国民に対して説明責任がある。

 損保各社は個人向けの火災保険や住宅総合保険等の保険料引き上げを続けている。引き上げの根拠としては、自然災害の多発を理由に損害保険料率算出機構が算出する参考純率の引き上げに基づく。ただ、同機構自体も財務省幹部をトップに据えて、実務分野については損保3社が実質的に関与している。

 企業向け共同保険の不正は、契約者企業が「疑問」を持って調べた結果、判明した。消費者も自分の契約を再確認するとともに、保険会社の選択肢を増やせるよう、監督責任を負う金融庁に対して、保険市場の多様化、自由化を進めるよう求める必要がありそうだ。

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20230715&ng=DGKKZO72795320U3A710C2EA1000

https://www.giroj.or.jp/about/executive.html