MS&ADインシュアランスグループの三井住友海上・あいおいニッセイ。シンガポールで「共同キャットボンド」発行。合計2億㌦(300億円)。日本国内の台風・洪水リスク等をカバー(RIEF)
2024-03-30 01:02:18
MS&ASインシュアランス グループの三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険は29日、自然災害リスクを対象とする大災害債(キャットボンド:Catastrophe Bond)をシンガポールで共同発行した。ボンド名は「Tomoni Re 2024」。ボンドは2社別々の保険リスクをカバーする。三井住友海上は日本国内の台風・洪水リスクを、あいおいは同じく台風・洪水リスクに、地震リスクも加味する。発行額はそれぞれ1億㌦(約150億円)。シンガポール市場で発行することで、広くアジア等の機関投資家向けに販売できる。
今回のキャットボンド発行は、三井住友海上にとって7回目、あいおいにとっては3回目の発行となる。三井住友海上は2020年3月に初めてシンガポール市場でキャットボンド「Akibare Re 2020-1」(期間4年、1億㌦)を発行したボンドが償還されることから、今回の「Tomoni Re 2024」で日本国内の台風・洪水リスクのカバーを継続することになる。
三井住友海上は、最初にシンガポール市場で発行したキャットボンドで、環境金融研究機構(RIEF)のサステナブルファイナンス大賞の優秀賞に選ばれている。https://rief-jp.org/ct2/110338
両社はこれまでのキャットボンドと同様、シンガポールに特別目的会社(SPC)の「Tomoni Re Pte. Ltd.」を設立し、同SPCがボンドを発行した。ボンドは対象として、三井住友海上が抱える保険リスクをカバーするClass Aと、あいおいの保険リスクをカバーするClass Bに分かれる。対象保険リスクと範囲が異なることから、それぞれのClassの利回りは、ClassAが担保債権の利回り+3.25%、ClassBは担保債権の利回り+4.00%と設定されている。期間はともに2028年3月末までの4年間。
三井住友海上が発行するClassAのキャットボンドは、台風や洪水による一災害ごとの損害において基準を超過した損害額をカバーする条件とし、同等のリスクを補償するキャットボンドとしては比較的低廉なコストでの発行を実現できたとしている。一方の、あいおいが発行するボンドは、台風や洪水による損害は一災害ごと、地震による損害は3年間の累計額で各々の基準を超過した損害額をカバーするという異なる契約を組み合わせている。同社では「こうした条件で、台風・洪水と地震の損害額を両方カバーできるキャットボンドは初めて」としている。
三井住友海上とあいおいニッセイ同和が、シンガポールで共同キャットボンドを発行したのは、シンガポール政府がアジアでのキャットボンド市場の育成に積極的な影響もある。同国はシンガポール市場での同ボンドの発行体に補助金を提供している。
キャットボンドでは、自然災害等によって生じた損害があらかじめ設定した条件を超過した場合に、その超過額に応じて、 投資家へ償還予定の元本の一部または全部を再保険金として充当する。今回の両社の発行したボンドの場合の条件発動の仕組みは、次の図のようになる。