HOME |日本生命。子会社の代理店の他社契約情報を常態的に本社に漏洩。合計18万件。子会社の不正だけでなく、他社情報を吸い上げてきた同社の経営の「質」が問われる(RIEF) |

日本生命。子会社の代理店の他社契約情報を常態的に本社に漏洩。合計18万件。子会社の不正だけでなく、他社情報を吸い上げてきた同社の経営の「質」が問われる(RIEF)

2024-09-07 00:52:36

スクリーンショット 2024-09-07 004008

 

 日本生命保険は6日、同社子会社の代理店への出向者らが、他の保険会社に加入する契約者の個人情報を漏洩していたと発表した。公表したのは代理店3社分で、合計約18万件の他社の個人情報を日生本社に集めていたという。保険の契約者情報の漏洩は、損害保険業界で多発しているが、生保のトップ企業でも同様の契約者情報の不透明なやり取りが恒常的に行われていたことになる。同社は「営業の目的で情報を使った事実は現時点で確認できていない」と説明しているが、営業以外の目的で他社の契約情報を、意図的に本社に流すことは、通常は考えられない。同社の基本的な営業姿勢のあり方が問われそうだ。

 

 日生の発表によると、他社情報の不正な漏洩があったのは、同社子会社の代理店、「ライフサロン」「ほけんの110番」「ライフプラザパートナーズ(LPP)」の3社。これらの代理店は日生の保険商品だけでなく、他社の保険商品も扱っており、他社と保険契約した顧客情報も持っている。日生ではこれらの子会社から受ける業績報告の中に、日生以外の他社との契約者の情報が含まれていたとしている。

 

 不正な漏洩が発生したのは2021年7月〜24年4月で、契約者の氏名や生年月日、保険料が含まれていた場合もあるとしている。契約者の年齢と保険料を知れば、契約者の健康状況の把握も可能になることから、保険会社にとってこれらの個人情報は契約上、重要な意味を持つ。

 

 日生の代理店での漏洩件数は、ほけんの110番から日生本社に対して漏洩した他社契約情報が約18000人分。ライフサロンと、ほけんの110番から日生への他社契約情報の漏洩は約1万2000人分。前者については、日生本社の職員が子会社の経営管理の一環として、ほけんの110番の収支管理を目的に子会社のデータを取得し、本社のサーバーに他社の顧客情報を含むデータを保存していたという。後者についての経緯は現時点では不明で、調査中としている。

 

 もう一件は、LPPから日生本社への漏洩で、約840人分。これは本社からの出向者が、本社の社員の依頼を受け、LPPでの苦情等の発生データを本社にメールで送信していたという。名前などは削除していたとしているが、証券番号は個人情報に該当するとの認識がなく、他社契約の同情報を含むデータを本社に保管していた。

 

 さらにLPPの持ち株会社であるLHLとほけんの110番の間でも、約6万6000件の他社契約情報の漏洩があったという。日生の本社と子会社の間で、常態的に他社契約情報が、契約者には知らされないまま、やり取りされ続けていたわけだ。合計すると、現時点での漏洩数は、契約者の人数ベースで9万6000人分、契約件数で約18万件になる。

 

 生保業界第二位の第一生命でも、同社の代理店に出向している社員が少なくとも約11万件にのぼる契約者の情報を漏洩していたと発表している。ただ、これらの調査は金融庁が業界団体の生命保険協会を通じて、協会加盟の生保各社に調査と報告を求めた結果によるもので、今後、業界全体での調査が進むと、さらに不正な漏洩件数が膨らむ可能性があるとされる。明治安田生命保険や住友生命保険では現時点で情報漏洩を確認できていないとしている。

 

 生保各社に先立って、契約者情報の漏洩問題が発覚した損害保険大手4社の場合、8月30日までに合計で250万件の情報漏洩があったと公表されている。主な漏洩の状況は、保険代理店に出向していた社員が出向元の損保に他社契約の個人情報を流したり、損保各社が自動車保険を取り扱うディーラーから他社契約の情報を受け取ったりしていたという。生保も損保も代理店の運営が元凶のようだ。

 

 生損保両方とも、保険契約者の情報を杜撰な取り扱いをしていたことが明らかになったわけだが、その中でも、特に業界のトップ企業が「率先する形」で、子会社を使って他社情報を「盗み出す」ような経営をしてきた疑いが大きい。こうした経営が横行してきたとすれば、消費者は保険契約を信頼できなくなってしまう。子会社で他社契約情報を本社に伝えた職員や、本社でそれらの情報を管理していた個々の職員のモラルの問題以前に、企業経営の「質」の低さが疑われる。

https://www.nissay.co.jp/news/2024/pdf/20240906.pdf