世界の大手保険会社の石炭火力発電や石炭鉱山等との関係を評価する環境NGOランキングが公開された。石炭企業の保険引き受け、投融資の引き揚げ(Divestment)、その他の気候変動行動の3部門を評価、スイスのチューリッヒ保険、スイス再保険の両社が、3部門すべてで合格評価を得た。日本の保険会社では損保ジャパン日本興亜が同率10位、東京海上日動が同14位だった。
2017-11-20 22:25:43
世界の大手保険会社の石炭火力発電や石炭鉱山等との関係を評価する環境NGOランキングが公開された。石炭企業の保険引き受け、投融資の引き揚げ(Divestment)、その他の気候変動行動の3部門を評価、スイスのチューリッヒ保険、スイス再保険の両社が、3部門すべてで合格評価を得た。日本の保険会社では損保ジャパン日本興亜が同率10位、東京海上日動が同14位だった。
「石炭関連産業と気候変動に関する保険会社のスコアカード」をまとめたのは環境NGOの「Unfriend Coal」。調査対象としたのは、世界の保険大手25社。このうち、17社は調査に対して直接回答したほか、4社はCEOが返答した。それに加えて、回答のなかった8社については、NGOが財務報告書やCSR報告書等を分析して評価づけした。
評価項目は、①石炭火力、石炭開発・生産等の企業への保険引き受けの動向②それらの企業に対する投融資の引き揚げ(Divestment)の実施③その他の気候変動関連行動ーーの3分野。それぞれについて、高い評価と、まずます
、低い評価
の3段階で評価した。
その結果、3分野すべてでを得たのは、スイスの2社だけで、同率1位。次いで、フランスのAxaが①と③で
、②で
、同じフランスのScorは②③が
、①が
で同率3位となった。
こうした評価で、日本の損保ジャパン日本興亜は①②が、③が
で、4社が同率10位、東京海上日動は①②③とも
で、12社同率の14位。三井住友海上火災は対象に入っていない。
対象となった保険会社25社のうち15社はこれまでに、石炭関連産業向けの投融資を200億㌦Divestを実施したとしている。石炭企業の債券や株の売却に加えて、関連プロジェクトからの撤退も含まれる。
仏Axaは2015年5月、世界で最初に石炭向けの投融資引き揚げ宣言を行ったことで知られる。石炭関連の投資約5億ユーロ(5億5000万㌦)をすべて売却するとともに、再生可能エネルギーなどへの投資額を2020年までに3兆ユーロに拡大する方針を打ち出した。http://rief-jp.org/ct6/55927?ctid=68
また今年4月には石炭採掘が売り上げの50%以上の鉱業、石炭火力が発電量の50%以上の電力会社への投資、保険引き受けを停止すると宣言した。http://rief-jp.org/ct6/69590
ただ、今回の評価で同社のDivestmentはと判定された。これは、スイス勢がAxaよりも厳格な石炭排除を打ち出したことから、評価が伸びず、Scorと同じ3位どまりとなった。英Aviva、ドイツのAllianz、ミュンヘン再保険が同率5位、英Legal & General、 Lloyd’sが同率8位だった。
1位のチューリッヒ保険は、Axaに先駆けて、石炭関連ビジネスが収入の50%以上企業への投資および保険引き受けを行わないガイドラインを設け、株投資も行わない。また2年間を区切って「riskベース対話」を当該の石炭関連企業と実施する方針を打ち出している。また新規の石炭火力発電所への保険付与を含むリスクマネジメントサービスの提供を停止するとしている。
ただ、Unfriend Coalは、対象となった保険会社のうち過半以上の17社は、「まずまず」も限られ、極めて乏しいスコアしか得られなかったと指摘している。それらの保険会社は、米国勢(AIG、 Axis Capital、 W.R Berkeley、 Berkshire Hathaway、 Liberty Mutual、 Prudential、TIAA Family)と、日本勢の東京海上日動やオーストラリアのQBE、スペインのMapfreなどを挙げている。これ等の多くは、評価が低かっただけでなく、情報開示も不十分だったという。
Unfriend Coalの Peter Bosshard氏は「石炭は保険引き受けの対象外にするべきだ。保険会社が、膨大な自然リスク、技術リスク、商業リスク、政治リスクを抱える石炭プロジェクトの保険引き受けをやめると、新規の石炭火力や開発は停止されるだろう」と述べている。
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日本外国特派員協会気付。環境金融研究機構(RIEF)藤井良広
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