HOME10.電力・エネルギー |経済同友会、2030年の再エネ比率、政府目標の倍近い40%への引き上げを求める提言。「再エネを主力電源に」。政府が明確な意思表示を示し、民間企業の投資誘導を求める。(RIEF) |

経済同友会、2030年の再エネ比率、政府目標の倍近い40%への引き上げを求める提言。「再エネを主力電源に」。政府が明確な意思表示を示し、民間企業の投資誘導を求める。(RIEF)

2020-07-29 22:37:57

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 経済同友会の環境・資源エネルギー委員会は29日、現在の政府のエネルギー政策で定めている2030年の再生可能エネルギー比率(22~24%)を倍近い40%に引き上げるべきとする提言をまとめた。現行(2018年度)の再エネ比率は17%(水力含む)なので今後10年間に倍増以上に拡大する必要がある。同友会では「再エネの主力電源化とボトルネックの解消」をエネルギー政策の柱に据えて推進するよう政府に要請していく、としている。

 

 (写真は、記者会見する環境・資源エネルギー委員会委員長の石村和彦氏(AGC取締役㊨)と、副代表幹事の橋本圭一郎氏㊧)

 

 同友会は、近年の異常気象や大規模自然災害の頻発を背景とした気候変動対策に対する危機感の高まる中、世界市場では太陽光発電や風力発電のコスト低下が進展、再エネの価値が増している、と指摘。

 

 欧州等では官民連携で、野心的な温室効果ガス削減目標を掲げている一方で、わが国が2015 年7 月に定めた「長期エネルギー需給見通し」での2030 年のゼロ・エミッション電源比率を 44%(再エネ比率 22~24%、 原子力比率 20~22%)目標は原発の再稼働が進まず、目標達成が危ぶまれているとした。

 

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 こうした問題意識のうえで、パリ協定で政府が約束した国際公約を達成するには、エネルギーミックス目標を変更し、ゼロ・ エミッション電源のうち、再エネの比率を大幅に高めていくことが必要、とした。

 

 再エネ比率40%への引き上げの内訳は、太陽光・風力発電合計で30%、水力・バイオマス・地熱等の他の再エネ発電の比率を 10%まで高めるとしている。今後10年で現状の倍以上に再エネ比率を引き上げるためには、政府が明確な意思表示を示すとともに、民間企業による投資を支援する政策誘導、それらを国民が支持する意識変革と行動変容が不可欠、としている。

 

 同友会は再エネの比率を高めることは、世界的な気候変動対策や国際公約の順守に貢献するだけでなく、日本のエネルギー自給率の向上にも寄与する、と強調している。

 

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 原発についての同友会の立場は、ゼロ・エミッション電源として重視しており、「縮・原発」だ。ただ、現状は原発の再稼働に対する社会的な受容が高まらず、大規模な再開が難しいと評価。「当面のエネルギーミックスでは原発の割合を低く見積もらざるを得ない」としている。仮に稼働状況が現状(6%)に留まった場合でも再エネが40%に達すれば、2030年のゼロエミッション電源比率44%の目標を達成できるとしている。

 

 同友会は「望ましい原発比率」を15%(政府のエネルギーミックス目標は20%)と試算している。仮に同友会の試算通りの原発再稼働を達成できれば、ゼロ・エミ ッション電源比率は 55~60%にまで伸びる計算だ。

 

 太陽光や風力等の変動型の再エネ発電が増大すると、需給調整力のためにバックアップ電源としての火力発電が必須になるとも指摘している。そうした再エネバックアップ電源として、老朽化 した低効率の火力発電設備を廃止するとともに、CO2 排出が少ないガス複合火力(ガスタービン・コンバインドサイクル発電)への転換や新設を計画的に推進するべき、としている。

 

 さらに、変動型の再エネの余剰電力対策として、蓄電設備の整備や水素、熱利用など蓄エネ技術の高性能化、低コスト化の追求、効率的活用等の研究開発の加速が不可欠としている。

 

 同友会が再エネ発電の主力電源化を提言したことは、世界市場の動きを見据える経済人として、政府のエネルギー政策の行き詰まりを踏まえて、より合理的なエネルギー政策を求める動きといえる。現状の再エネ比率17%から10年で倍増以上というのは、かなり高いハードルにみえる。

 

 だが、ドイツの様に、脱原発、脱石炭を政策として掲げながら、すでに再エネ比率を50%以上に高めている先例をみれば、政府の政策の修正と、企業の投資シフトがスムーズに進展すれば、それほど高いハードルでもないともいえる。提言の中で、大規模ソーラー発電より、工場や家庭の屋根置き発電等に可能性を見出しているが、「無理な理由」の言い訳を探す前に、日本の社会構造に適した工夫と政策誘導を決意できるかだ。(RIEF)

 

https://www.doyukai.or.jp/policyproposals/uploads/docs/20200729.pdf