HOME8.温暖化・気候変動 |「世界経済再建のために『カーボン経済』に終止符を」。スティグリッツ、サックス等の経済学者100人超が共同公開書簡。各国政府は化石燃料産業への支援を廃止し再エネ等に再配分を(RIEF) |

「世界経済再建のために『カーボン経済』に終止符を」。スティグリッツ、サックス等の経済学者100人超が共同公開書簡。各国政府は化石燃料産業への支援を廃止し再エネ等に再配分を(RIEF)

2020-08-05 21:08:53

Gurdian001キャプチャ

 

  ノーベル経済学賞受賞のジョセフ・スティグリッツ教授や、ジェフリー・サックス教授など100人を超える米欧の経済学者が、各国政府や主要金融機関等に向けて、カーボン経済からの脱却を求める公開書簡を公表した。書簡は「カーボン経済は人種差別、社会的・経済的不平等を増幅し、安定した未来と基本的に合致しないシステムを作り出す」と指摘。各国政府に対して、化石燃料産業を積極的に廃止し、同産業に費やしてきた資金を引き揚げ、グリーン技術・同インフラ、人々と地球にプラスになる経済的移行のために再配分するべき、と呼び掛けた。

 

  書簡は英紙Guardianに投稿の形で掲載された。まず、米国で広がった「Black Lives Matter」のような「根深い人種差別から、現在世界中を覆っている新型コロナウイルス感染拡大まで、さらには非常な格差の増大から生態系の破壊まで、世界は逼迫した深刻な相互関連の緊急事態に直面している」と危機感をあらわにしている。ただ、そのことが「われわれに世界の在り方を再検討する貴重な機会を与えている」として、危機の源泉にある「カーボン経済」を終焉させる必要性と、終焉の可能性を強調している。

 

スティグリッツ教授
スティグリッツ教授

 

 書簡の主な内容は次の通り。コロナウイルスの影響で、経済活動が停滞し、気候変動への危機感低下が生じ、景気回復のため、旧来のカーボン依存社会への回帰圧力が現実化している。不公正に起因する経済の不安定さの増大、気候変動による農作物の収穫減少、水資源不足、海面上昇、森林火災増大等が、人権問題である難民の増大やパンデミックの展開とともに広がっている。

 

 気候変動による影響と、社会的不公正による影響が連動する形で蔓延しているのだ。その典型として、大気汚染の悪化がコロナウイルス感染のリスクを高め、森林伐採や温暖化による気温上昇が将来の感染症の出現リスクを高めている。こうしたリスクの顕在化は、たとえば米国での黒人層がもっとも大気汚染にさらされているように、社会的・経済的不平等を増幅する。

 

ジェフリー・サックス教授
ジェフリー・サックス教授

 

 もし、われわれがこうした構造からの脱却に失敗すると、より深刻な状況に追い込まれるだろう。単に、化石燃料産業に文句を言うだけでは事態は変わらない。彼らは何十年にもわたって気候変動について嘘をついてきたし、真剣な気候対策に反対し続け、化石燃料依存の将来を「良いこと」としてきた。

 

 人々は、こうした状況から脱し、自分たち自身と子供たちのために、より良い未来につながる機会を作り出す必要がある。それは「カーボン経済」と闘うことによって得られるもので、そうすることによって、より公平で、持続可能な世界を築き、経済回復に向かう道筋を歩み始めることができる。

 

ロバート・ライシュ教授
ロバート・ライシュ教授

 

  そのためには、まず各国政府は、化石燃料産業を積極的に廃止しなければならない。巨大石油・ガス会社を救済したり補助金を供給する行為は、われわれを耐え難い将来に封じ込め、重要なエネルギー移行を遅らせ、市場を歪めることになる。化石燃料資源の掘削を組織立って廃止することで、各国政府は、これまで同産業に費やしていた資金を、グリーン技術や、同インフラ、社会的事業や雇用創出、人々と地球に利益をもたらす経済的移行を促進するために再配分できる。

 

 金融機関も、化石燃料投資と同事業へのファインナンスを終えるべきだ。大手銀行や影響力のある機関投資家等が、化石燃料産業を支持し続けることは、現状の危険な状態を持続することに経済的、社会的資本を供給することになる。そうではなく、金融機関は化石燃料企業からダイベスト(資金引き揚げ)し、それらの企業へのファイナンスを終えるべきなのだ。

 

 人々の責務もある。人々は、より公平な経済システムを擁護するための政治的パワーを築かねばらならない。もしわれわれが、経済再建の基本基準として「従来型(Business as Usual)」への復帰を目指すならば、今一つの危機を克服しても、いずれ次の危機を迎えることになる。

 

 そうではなく、危機が生じた際には社会の断層が増幅され、災害への備えをしていないと、最も弱者に重い負担がかかることを理解しなければならない。グリーンリカバリーは、よりレジリエントで、より再生可能な社会を作り上げることで、世界中でそうした対応を最も必要とする人々を支えることにつながる。(RIEF仮訳)

https://www.theguardian.com/commentisfree/2020/aug/04/economists-letter-carbon-economy-climate-change-rebuild

    共同書簡への署名学者のリスト⇒

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