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欧州エアバス、世界初の「ゼロ・エミッション航空機」2035年までに実現を目指すと公表。3種類のデザインを同時開発。液体水素燃料を活用。「飛ぶ恥」を解消へ(RIEF)

2020-09-22 11:38:01

Airbus004キャプチャ

写真は、エアバスが開発を進める3種類の「ゼロ・エミッション航空機」の完成予想図)

 

  航空機製造大手のエアバスは21日、世界で初めてとなる「ゼロ・エミッション航空機」のコンセプトを公表、2035年までに商用化を目指すと発表した。公表したコンセプトはいずれも水素を燃料とし、航空力学等のアプローチが異なる3タイプ。それぞれのタイプの開発を同時並行で進め、効率的なゼロ・エミッション航空機の実現を進める。

 

 公表された3種類の「ゼロ・エミッション航空機」のコンセプトは、いずれもコードネームを「ZEROe(ゼロイー)」と命名した。開発する水素燃料活用技術は、航空機以外の産業のカーボン・ニュートラル実現にも応用できるとしている。燃料として使用する水素は、風力発電等の再生可能エネルギーから電解して製造する。

 

ターボプロップ型の水素航空機
ターボファン型

 

混合翼型の水素航空機
混合翼型

 

ターボプロップ型
ターボプロップ型

 

 エアバスの開発コンセプトによると、ひとつはターボファン型。乗客120人~200人クラスで、航空距離2000マイル(約3700km)。改良型ガスエンジンを液体水素燃料で稼働させる。2つ目は、ターボプロップ型。乗客100人までの小型機で、航空距離1000マイル(1857km)以上。改良型ガスエンジンでプロペラを稼働させる。3つ目は、混合翼型。翼と機体が一体化したデザイン。機体の構成から液体燃料の貯蔵力が増すほか、客室のレイアウトなども多様にデザインできるメリットがあるという。

 

 水素は従来のジェット燃料と同じエネルギーを出すのに重さは3分の1となる。ただ搭載スペースは約4倍分が必要になるとされるため、航空機のデザインが課題となるという。航空機の水素化に加えて、各地にある空港も水素輸送や燃料充填インフラ等を「ゼロ・エミッション」化に対応するように改造する必要がある。

 

 エアバスCEOのGuillaume Faury氏は「今回の発表は、商用航空機セクター全体にとっての歴史的な瞬間だ。われわれは、航空機で最も重要なトランジション(移行)において主導的役割を果たすつもりだ。示した3つの開発コンセプトは、将来の『ゼロ・エミッション航空』を実現するための大胆なビジョンだ。私は水素燃料の使用で、航空機飛行による気候インパクトを劇的に削減する可能性があると信じている」と述べた。

 

 ただ、水素航空機を実現するには、新たな航空機の開発のほか、前述したように空港の改造、水素燃料の確保等の課題を克服するための投資が必要がある。エアバス等では政府の支援とともに、市場資金を導入する移行ファインスの活用を期待している。また小規模航空会社の移行支援も必要だ。

 

 航空機からのCO2排出量は世界全体の排出量の2%を占めるとされる。スウェーデンの環境活動家、グレタ・ツゥーンベリさんが環境活動での移動時に、温暖化加速への加担を嫌って航空機を一切利用しない行動を展開したことから、飛行機利用を「飛ぶ恥」と呼ぶ風潮も生まれている。

https://www.airbus.com/newsroom/press-releases/en/2020/09/airbus-reveals-new-zeroemission-concept-aircraft.html