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政府の「2050年ネットゼロ」宣言、6割の企業が「達成困難」と展望。「達成可能」との回答は2割弱。「具体的な計画と目標」が不明との指摘。帝国データバンクの全国調査で判明(RIEF)

2021-01-22 21:58:31

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 菅政権が掲げる「2050年カーボンニ ュートラル」目標に対して、約6割の企業が日本全体での「達成は困難」もしくは「達成できない」と否定的な姿勢であることがわかった。帝国データバンクが全国約2万4000の企業を対象とした調査で明らかになった。現状のままで達成可能と答えた企業はわずか2.5%。「言う は易し行うは難しで、具体的な計画と目標が分 からない」など、政府方針が明確でないことから、見通しを得られないとの意見が示された。

 

 調査は昨年12月16日~今年1月5日にかけて、全国2万3688社を対象の実施した。有効回答企業数は1万1479社(回答率48.5%)。

 

 温室効果ガス(GHG)の排出抑制に取り組んでいる企業は82.6%と大半にのぼった。規模別では大企業(88.8%) で高く、業界別ではエネルギー使用の多い製造業(87.1%)がトップ。

 

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 ただ、「2050年カーボンニュートラル」目標についての「日本全体における達成可能性」の問いには、「達成は困難」が最も多く(43.4%)、「達成できない」(17.9%)を合わせると、61.3%と6割を超えた。一方で、「現状の取り組みで達成可能」は(2.5%)、「(今以上の取り組みをすることで)達成可能」(13.3%)を合わせて、「達成可能」との判断は 15.8%で、2割に満たない。

 

 企業は、GHG排出削減には取り組みながらも、目標達成が見通せない理由として、「言う は易し行うは難しで、具体的な計画と目標が分からない」(し尿収集運搬、石川県)、「取り組みについて何をどのようにすべきか、何を手始めに重点的に取り組むかなどの明確な説明が必要」(農産保存食料品製造、大分県)、「目標を達成するためのロードマップを示す必要があり、産業界との連携を深める必要がある」(電気計測器製造、神奈川県)、といった意見が示されたという。

 

 菅首相が昨年10月の臨時国会での所信表明で「ネットゼロ」を提唱した。だが、その後に、経済産業省が関係省庁と連携してまとめたという、脱炭素化に向けた「グリーン成長戦略」文書は、英米データを“恣意的”に引用するなどの問題が浮上する一方で、エネルギー基本計画の改定は夏になるなど、まさに「具体的な計画と目標」が示されていない。http://rief-jp.org/ct5/109868?ctid=71

 また産業界にとっても、これまで温暖化対策や再エネ推進に抑制的な政策をとってきた政府が、「手のひらを返す」ように、ネットゼロで口をそろえながら、依然、脱石炭には慎重で、かつ原発復権をもくろんでいることがチラつくといった不明瞭さを引きずっている点も、不信感につながっているといえそうだ。

 

 企業が、GHG排出抑制に取り組む目的では、電気料金などの「コストの削減」が 55.7%で第一位(複数回答)。次いで「法令順守」も 48.9%と高い。「CSR(企業の社会的責任)の一環」や「SDGs への対応」などの回答は、大企業で割合が高く、「資格や認証の取得」や、「ステークホルダーとの良好な関係の構築」においても同様の傾向がみられるという。

 

 ただ、GHG排出抑制を進めるうえでの課題としては、「他に優先すべき項目がある」が 27.4%で最も高い(複数回答)。「主導する人材(部署)がいない」(26.9%)や「どこまで取り組めばいいのかわからない」(25.8%)、「取り組むためのノウハウやスキルがない」 (24.5%)などの声も示された。

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p210107.pdf