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石油大手ロイヤル・ダッチ・シェル、「2050年ネットゼロ」戦略改定。2030年中間目標を設定、Scope3も対象。石油生産は19年でピークアウト。再エネと天然ガス+CCSにシフト(RIEF)

2021-02-13 07:50:40

Schell001キャプチャ

 

   英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルは11日、温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロとする中長期戦略を発表した。2030年の中間目標として30%削減(2016年比)等を設定した。昨年4月に公表した従来の計画から踏み込み、製品の消費段階等で生じるサプライチェーンを含むScope3も削減対象に入れる。

 

 「2050年ネットゼロ」方針の改定は、投資機関による「Climate Action 100+」のエンゲージメントを受けて確定した。CEOのベン・ファン・ブールデン(Ben van Beurden)氏は「和今回の改定戦略はCO2排出量削減を加速し、我々の投資家と顧客、そしてより広い社会の価値を高めることにつながる。我々は顧客が望み、そして必要としているものを提供しなければならない」とコメントしている。http://rief-jp.org/ct4/101495

 

 改定戦略では、2030年の中間目標の設定とともに、より詳細に、23年には6~8%、35年に45%とする段階的な目標も設定した。同社のCO2排出量はすでに2018年の1.7G㌧をピークとして減少に転じており、今後は天然ガスや再生可能エネルギー等の低炭素エネルギーの比重を高めていくとしている。

 

 再エネへの投資については、年間30億㌦平均で続けていくとしている。これは同社の年間投資額250億㌦の約12%に相当する。それ以外の88%は天然ガス等の化石燃料関連に投資するが、排出するCO2を吸収するカーボン回収貯留(CCS)技術・設備や、森林開発保全等の吸収源への投資も含める。

 

 CCSについては、2035年までに年間2500万㌧の吸収力を追加していくとしている。現時点で同社は、カナダ、ノルウェー、オランダの3カ所でCCSプロジェクトを展開しており、総吸収能力は450万㌧。これを毎年5.5倍に増やしていくとの想定だ。

 

 石油の生産量はすでに2019年をピークとして減少に転じている。2030年にかけて、年1~2%のペースで下げていき、鉱区等の資産も売却を進め、石油依存率を引き下げていく。資源探査については、新たな領域での探査は2025年までに停止し、その後は実施しないとしている。

 

 同社は昨年4月に「2050年ネットゼロ目標」を公表していた。ただ、対象となるCO2排出量は、自社の操業に伴う直接のCO2排出量であるScope1と、使用する電力消費等による間接排出量のScope2としていた。今回の改定目標では、サプライチェーン等も含めたScope3に拡大した。これにより、排出量全体の約9割を占めるサプライチェーンも脱炭素の枠に取り込むことになる。

 

 ブールデン氏は「我々は、ネットゼロ社会に向かってビジネス全体をそれに適合させる移行期においても、競争に勝てるポートフォリオを構築するため、我々シェルの伝統的な強みを発揮するだろう」と強調した。同社では、ネットゼロ社会でのエネルギー供給ビジネスを勝ち抜く基本戦略として、成長(Growth)、移行(Transition)、上流(Upstream)の3つの柱を掲げた。

 

 シェルの改定ネットゼロ戦略の立案に参画したClimate Action+ のエンゲージメント活動は、英国年金のChurch of England Pensions Board、オランダの資金運用のRobecoを共同リードエンゲージャーとする投資機関グループによって展開された。Church of EnglandのAdam Matthews氏は「今回のシェルの発表を歓迎する。同社の『2050年ネットゼロ』戦略はすべてのCO2をカバーし、エネルギー業界をリードする総合的なものだ」と評価している。

https://www.shell.com/media/news-and-media-releases/2021/shell-accelerates-drive-for-net-zero-emissions-with-customer-first-strategy.html