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日本製鉄、茨城・鹿島の高炉1基を追加休止方針。既決定分を含め、4基休止へ。生産能力2割削減。国内市場の過剰生産構造改善せず。脱炭素の政府方針も逆風に(各紙)

2021-02-18 21:35:50

nittestuキャプチャ

  各紙の報道によると、日本製鉄は茨城県鹿嶋市の製鉄所にある高炉を1基、休止する方針を固めたという。休止時期は「数年以内」と流動的だが、同社はすでに広島県などでも高炉3基の休止を決めており、今回の追加休止で国内の生産能力は現状から約2割減る。政府の脱炭素政策でCO2を大量に排出する高炉の操業がコスト要因にもなっていることも、設備削減の要因としている。

 日本経済新聞電子版が伝えた。同報道に対して、日本製鉄は「当社は製鉄事業の競争力強化に関して継続的に検討を行っており、成案を得た施策については決定次第公表しているが、報道内容について決定した事実はない」とのコメントを発表した。

 同社は全国に14基の高炉を持ち、東日本製鉄所鹿島地区(鹿嶋市)に高炉は2基ある。今回の報道によると、そのうちの1基を数年以内に休止するとしている。単純計算では日本製鉄の生産能力の約1割に相当するという。

 国内での鉄鋼需要は、自動車向けの需要は増えているが、鉄鋼業界全体の供給力と比べると、なお過剰感がある。高炉の休止に加えて、圧延など加工ラインの統廃合なども進めるとしている。約3000人いる従業員の一部は配置転換を検討する模様という。

 今回の高炉休止追加の方針は、CO2対策というよりも、市場の需給が最大の要因のようだ。同紙によると、2020年秋から自動車の生産が回復して鋼材の引き合いは強まっているが、製鉄所はフル稼働までには至っていない。OECDによると、19年時点の日本の粗鋼生産能力は1億3000万㌧に対して、実際の生産量は9900万㌧で、約3割が過剰という。さらに新型コロナウイルス禍で、20年の生産量は8319万㌧に減少、過剰分は約4割となっている。

 ワクチンの活用で、コロナ禍も克服できる見通しがでてきているが、鉄鋼業界では、今後も造船や油ガス田開発に使う鋼管などの需要の伸び悩みが続き、構造的な需給ギャップの調整は進まないとの見方が多い。「コロナ後も生産は9000万㌧には戻らないだろう」(鉄鋼商社首脳)との指摘もあるという。

 加えて、急速に進む脱炭素化の影響もある。政府は2050年までに温室効果ガス(GHG)排出を実質ゼロ(カーボンニュートラル)とする目標を掲げた。石炭を原料とするコークスを還元剤に使う高炉は大量のCO2を排出する「ブラウン産業」の代表だ。

 鉄鋼業からのGHG排出量は産業部門全体の4割を占め、業界全体で1憶5500万㌧(19年度)に達する。日本製鉄単独の排出量はその約6割に相当する9400万㌧に上る。国内の企業で最大のGHG排出企業だ。

 高炉は鉄鉱石を高温で溶かし、様々な鋼材の原料を生産する製鉄所の中心設備。いったん休止させると再稼働には多額の投資がかかるとされる。ただ、鉄鋼業界ではコークスを使う還元法を低炭素型に切り替える方式や、高炉以外の電炉転換等、脱炭素を進める企業も増えている。

 日鉄はすでに鹿島以外に広島県呉市の高炉2基、和歌山市でも1基を休止する方針を公表している。今回を含めた一連の構造改革で、稼働する高炉は14基から10基に減る。しかし依然、高炉中心の生産体制が軸であることには変わりはない。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ1834N0Y1A210C2000000/

https://www.nipponsteel.com/index.html

https://www.nipponsteel.com/common/secure/news/20210218_200.pdf