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宅配便大手の佐川急便、配送用の小型電気自動車(EV)開発にメド。今春に試作車完成。2030年までに軽自動車約7000台を置き換え。宅配業界3社のEV戦略出そろう(RIEF)

2021-02-24 17:35:37

sagawa001キャプチャ

 

 宅配便大手の佐川急便は、電気自動車(EV)ベンチャー企業と開発を進めている小型EV配送車の試作車が今春にも完成するめどがついたとして、2030年までに同社が配送に使う軽自動車約7000台をすべて同小型Vに切り替える方針を明らかにした。開発中のEV車には台湾製のバッテリーを積む。国産バッテリーより、台湾製を利用するほうが、価格、品質両面で効率的としている。

 

 (写真は、佐川急便が共同開発中の小型V車=開発車両とは別)

 

 宅配業界では、すでに首位のヤマトホールディングスがドイツのドイツポスト傘下企業と共同開発したEV配送車を昨年初めから首都圏に導入しているほか、日本郵便は三菱自動車工業の「ミニキャブ・ミーブ バン」を活用している。佐川急便の自前開発で、宅配業界のEV車競争が加速するとみられる。

 

ヤマト運輸が導入を進める小型EVトラック
ヤマト運輸が導入を進める小型EVトラック

 

日本郵便は三菱自動車工業との共同開発
日本郵便は三菱自動車工業との共同開発

 

 佐川急便は昨年6月、EVベンチャーのASF社との間で、小型EV車の共同開発と実証実験の開始で合意した。現在、両社のプロジェクトチームによって軽自動車規格のキャブバンタイプの試作車の製作を進めている。今回、予定通りの試作車の完成と、年内にも量産車の設計開発の目途がついたとしている。

 

 佐川と共同開発するASF社は、国内でEVの普及促進を図るためのファブレスメーカーで、佐川との協働を機に、昨年6月に設立された。出資企業は商社の双日、台湾プラスチックグループ(FPG)、EVべンチャーのFOMMの3社。このうち、FPGは出資だけでなく、同社の高品質バッテリー材料の供給でも協力している。

 

 順調に量産車の開発が進めば、佐川が現在抱える軽自動車約7000台を、2030年までに、すべて自社開発の小型EV配送車に置き換える。その結果、同社全体のCO2排出量は現在より約1割強、削減できる見通し。また粒子状物質(PM)排出量も大幅に削減できるとしている。

 

 佐川急便は2020年3月末現在、全国に約2万7000台の営業車両を保有する。このうち、天然ガスやハイブリッドの車両が約4000台。だが、EVは19台でしかない。今回の共同開発EV車の採用によって、一気にEVシフトを進めることになる。

 

 EV車の課題の一つは価格面とされる。ただ、佐川の場合、EV導入に伴う費用は、現在、軽自動車利用で結んでいるリース契約の料金とほぼ変わらないレベルに抑制できるとしている。このため、軽自動車を全面的に小型EVに転換する決断をした。

 

 小型EVは、住宅地の細い道での配達にも適している。配送中にCO2を出さず、騒音もほぼないので、地域の環境にも貢献する。配送等の物流面でのCO2削減は、荷主となる企業がサプライチェーンのScope3を含めたCO2削減を、投資家から求められる傾向が強まっていることから、物流会社の選択に必須条件になりつつある。

 

https://www.asf-ev.com/index.html

https://www2.sagawa-exp.co.jp/newsrelease/detail/2020/0616_1582.html