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英財務省、中央銀行のイングランド銀行(BOE)の金融政策委員会の政策課題に「カーボンネットゼロ」策の追加を要請。「グリーン量的緩和」や「グリーン適格担保」の取り込みに期待(RIEF)

2021-03-04 19:06:14

BOE001キャプチャ

  リシク・スナク英財務相は3日、中央銀行のイングランド銀行(BOE)の金融政策委員会(FPC)に対して、同委員会の政策使命として従来のインフレ抑制とともに、政府のカーボンネットゼロ政策への対応を含めるよう指示した。中央銀行の金融政策の責務に温室効果ガス排出課題を盛り込むよう指示するのは先進国では例がない。

 同財務相は同日、BOEのアンドレー・ベイリー総裁に宛てた書簡を公表、その中で、「新型コロナウイルス感染拡大から世界は回復に向かっているが、気候問題は深刻な状況に達している」と指摘。世界をネットゼロ社会に移行させることは、世界経済全体にとって従来システムからの変化を意味する、と強調した。そうした変化に対応するため、中央銀行のFPCの使命には、物価安定を第一目標としたうえで、金融システムがグリーンファイナンスの供給を拡大できるようにすることも、加えるとした。

英財務相のリシク・スナーク氏
英財務相のリシク・スナク氏

 同相の要請は、気候変動が金融システムに及ぼす移行リスク、物理リスクに対してレジリエンス(強靭性)を高めるために、中央銀行が金融政策の展開によって貢献することを求める形だ。英国政府が2021年度予算として、同年度中に150億ポンド(約2兆2000億円)規模のグリーンボンド国債を発行して気候変動に対処しようとするグリーン経済政策に対して、BOEの金融政策も歩調を合わせることを求めた。気候変動対応での財政・金融政策の連携だ。http://rief-jp.org/ct4/111548

 英政府は新たな経済政策で、グリーンボンド国債発行による調達資金を活用して、グリーンインフラ投資を促進するとともに、新たなグリーン雇用を創出、経済活性化につなげることを目指している。同相は、BOEに対して金融政策面での気候変動対応とともに、グリーン・サステナブルファイナンス市場を高めるために英国の金融界のグリーン化を支援する健全性政策の面でのグリーン金融監督の実施も求めた。

 想定される「グリーン金融政策」では、BOEが定める2%のインフレ率維持を前提に、グリーンボンドやESG関連金融商品等を金融市場操作の対象となる適格担保に組み込むほか、資産購入政策の対象にする等が考えられる。金融機関の健全性政策においては、TCFD提言に沿って金融機関のグリーン・ブラウン資産の情報開示等を監督業務において評価することが想定される。

 スナク財務相は、「われわれが現在直面している気候課題と、それを解きほぐすことで生まれる新たな市場のチャンスは、ともにスケールが大きい。そのことを考慮すると、英国の金融システムは、これまで雇用創出やビジネス支援、成長促進等を生みだしてきたことを、はるかに上回る重要性に直面している。BOEのFPCは、それに対応する中心的役割を担い続けるだろう」としている。

  さて、わが国の日本銀行と、霞が関の財務省は、政府が掲げる「ネットゼロ」政策に、どう対応するのだろうか。傍観を決め込んでいるわけにはいかないと思うがどうか。

https://www.bankofengland.co.uk/-/media/boe/files/letter/2021/march/fpc-remit-and-recommendations-letter-2021.pdf?la=en&hash=3C5B23BE764387498155F61CAF255417E665CCE8