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金融庁と東証、2021年度から上場企業に、コンプライorエクスプレイン方式での気候情報開示を要請へ。コーポレートガバナンスコード改定に盛り込む。TCFD提言に沿う開示促進(各紙)

2021-03-27 09:21:08

FSA1キャプチャ

 

 各紙の報道によると、金融庁と東京証券取引所は2021年度から、上場企業を対象として、コンプライorエクスプレイン(順守か、さもなくば説明せよ)方式で気候変動情報の開示を求める。近く改定する企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)に明記する。自然災害等の物理リスクや、政策転換等による移行リスクの自己評価を求める。企業が開示するうえで必要となる気候情報の範囲や方法についてはTCFD提言を活用する。

 

 日本経済新聞が報じた。それによると、気候情報開示を盛り込んだ改定コーポレートガバナンスコードは6月に施行する。国際的にはIFRS財団がTCFD提言に基づく気候情報開示のほか、サステナビリティ情報開示の共通基準作りのためのサステナビリティ会計基準機構(SSB)の立ち上げ作業を進めており、11月の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で正式発足する予定。SSBが気候関連情報の開示基準を示すと、それが共通尺度になるとみられる。

 

 気候関連情報開示の対象となる物理リスクは、自然災害増大に等によって企業が被る可能性のある損失額やそれらを防ぐ対応策等の開示が求められる。保有施設等の損害可能性だけでなく、操業継続やサプライチェーンの遮断等のリスクを含める。移行リスクは、政府の温暖化政策が厳しくなった場合の影響や、気候変動に強靱性のある新たな技術開発の影響、市場の商品選好の変化等も対象となる。

 

 企業は自ら、および自らが属する産業が抱えるこれらの気候リスクの評価を、将来の気候変動の可能性を踏まえた複数のシナリオ分析で試算し、それに対して自社の経営が受ける影響をストレステストで計測する手順が求められる。それらの推計作業の結果を、コーポレートガバナンスコードに沿って、開示するか、あるいは開示しない場合は、開示しない理由の説明を求められる。

 

 グローバルには、IFRSでの共通開示基準の作業が始まっている。個別には、英国が今年初めからロンドン証券取引所のプライム市場を対象に気候リスクの情報開示を義務付ける制度をスタートさせた。開示対象は2025年までに、全企業、年金、金融機関等に拡大する方針だ。米国も証券取引委員会(SEC)が開示ガイダンスの改定を目指している。

 

 市場ではすでにかなりの上場企業が気候情報開示に動いている。2020年3月期の有価証券報告書で気候変動リスクを開示した企業は264社で、前年から約4倍に膨らんでいる。銀行は前年の1社から14社に急増した。いずれも物理リスクと移行リスクのうちの「重要リスク」の開示を進めている。ただ、現在は共通の開示基準がないことから、各社の横比較は難しい状況になっている。http://rief-jp.org/ct1/106365

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210327&ng=DGKKZO70412520X20C21A3MM8000