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Jパワー、山口・宇部で計画中の「西沖の山発電所」建設断念へ。超々臨界圧石炭火力(USC)事業も採算困難と判断。経産省のUSC火力維持路線の修正必至(RIEF)

2021-04-16 00:34:59

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 Jパワー(電源開発)は16日、山口県宇部市で計画していた超々臨界圧石炭火力発電(USC)による「西沖の山発電所」建設の断念を発表した。同計画は60万kWのUSC発電機2基を建設するものだが、2019年に共同参加企業の大阪ガスが撤退していた。政府の「2050年ネットゼロ」方針で脱炭素の流れが強まり、事業の採算見通しが困難と判断したとみられる。経産省はUSC火力を推進する姿勢だが、事業者が採算上の理由で断念することで、他の建設中及び計画中の石炭火力事業にも影響を及ぼしそうだ。

 

 (写真は、西沖の山発電所の完成予想図)

 

 西沖の山発電所計画は、2015年3月、Jパワーと宇部興産、大阪ガスの3社が共同で事業会社の「山口宇部パワー(YUP)」を設立。USC2基で、2026年稼動を目指していた。当初の出資比率は、大阪ガスと電源開発が45%、宇部が10%。2018年9月には、環境影響評価準備書を国に届け出るなどの手順を踏んできた。

 

 しかし、19年4月に大阪ガスが「電力事業を取り巻く事業環境の変化や将来的なリスク等を踏まえて」撤退を表明。残された2社は規模の縮小等での事業継続を模索していた。しかし、政府のネットゼロ政策等から、建設しても、途中で事業継続が行き詰まって「座礁資産(ストランデッドアセット)」化するリスクも想定されてきたことから、計画断念の決断に至ったとみられる。2年前に撤退を表明した大阪ガスの判断は賢明だったといえる。https://rief-jp.org/ct4/89263

 

 この間、Jパワーと宇部興産は建設数を1基に減らし、投資負担を軽くする案や、温室効果ガス排出量がUSCより少ない石炭ガス化複合発電(IGCC)の導入等も検討したという。ただ投資コストと環境対応のバランスが難しく、運転開始のメドも立たない状況に陥っていたようだ。

 

 Jパワーは16日、「同計画が位置する西日本エリアにおいて、電力需要は横ばいで推移すると見込まれることや、再エネの導入が拡大していることなど、事業環境を巡る状況を総合的に判断した結果、同計画を取り止めることとした」と説明した。

 

 2020年6月末時点で、石炭火力の新設・建て替え計画は、今回の西沖の山事業を含めて17基。すでに工事を着工しているものもある。経産省は「ネットゼロ」目標の中で、旧式の石炭火力発電の閉鎖は進めるものの、USCについては「高効率発電」として推進する構えをとっている。しかし、USCのCO2排出量は同規模の天然ガス火力発電よりも、ほぼ2倍も多いとされ、「脱炭素」とは程遠い存在だ。

 

 Jパワー等の建設断念判断は、USCが温暖化対策としても、経済的なエネルギー源としても、「時代遅れ」であることを示す形でもある。ただ、現在でも石炭火力発電所は全国に約150基ある。今後、既存の発電効率の低い火力は閉鎖、あるいは天然ガス発電への転換等の選択を迫られることになる。

https://www.jpower.co.jp/news_release/2021/04/news210416_1.html

https://www.jpower.co.jp/news_release/pdf/news210416_1.pdf

 (更新)同記事はIパワーがプレスリリースを発表したので、2021年4月16日午後4時08分に更新しました。