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米証券取引委員会(SEC)委員長にゲーリー・ゲンスラー氏が正式に就任。上院本会議で53対45で承認。気候変動等のESG投資では情報開示等のルール化整備を踏まえ市場促進へ(RIEF)

2021-04-18 21:06:32

Gary Genslerキャプチャ

 

 米上院議会は、証券取引委員会(SEC)委員長に、バイデン大統領が任命していたゲーリー・ゲンスラー(Gary Gensler)氏を賛成多数で承認した。同氏は17日に委員長に正式に就任した。SECはバイデン政権に代わって以降、気候変動分野での情報開示の促進やESG投資の透明性等の分野で積極的な取り組みを進めているが、委員長が正式に決まったことで、本格的な気候変動対策を展開すると期待される。

 

 ゲンスラー氏のSEC委員長就任は、一カ月以上前に上院の銀行委員会で14対10で承認されていたが、本会議での投票が遅れていた。本会議では賛成53、反対45で、かなりの僅差だった。本会議での承認は、トランプ政権時代の前任議長Jay Clayton氏が昨年12月に辞任した残りの期間(6月5日まで)を対象としたもので、期間満了後、改めて2期目の投票を受けることになる。ただ、銀行委員会では2期分の承認で合意(2026年6月まで)しており、本会議での2度目の承認は手続きだけになる。

 

  17日に委員長に正式就任したゲンスラー氏は「SECのチームに参加できることを誇りに思う。委員長として、投資家保護、資本形成の促進、公平で秩序立ち、効率的な市場を促進に貢献したい。米国資本市場を世界で最も堅牢にするのがSECのミッションだ」とのコメントを公表した。

 

 同氏は投資銀行ゴールドマンサックス(GS)の出身で、GSでは18年過ごし、最も若いパートナーに就任するなど活躍した。その後、1977年にビル・クリントン政権で財務省に入り、エンロン事件後に制定された2002年のサーベンス・オックスリー法(SOX法)の制定にかかわった。http://rief-jp.org/ct5/109890?ctid=0

 

 リーマンショック後の2009年には、オバマ政権下で、商品先物取引委員会(CFTC)委員長に就任。リーマンショックで不正の巣窟と化していたスワップ市場の大改革を実践した。2012年にはLBOR(ロンドン銀行間取引金利)取引の不正操作にもメスを入れた。金融市場を知り、法制度、法執行を知り尽くした「すご腕」がSECで力点を置く一つの領域が、気候リスク対応を含むESG投資分野での「正常化」であり、そのための情報開示の整備等とみられる。

 

 気候変動対等とともに、同氏の登場で期待されるのはビットコイン等の暗号資産取引のルール化だ。同氏はMIT教授としてビットコイン等の暗号資産の権威としても知られてきた。上院銀行委での公聴会では、「(暗号資産は)決済や金融包摂の分野で新しい考えを生み出した。同時に、投資家保護の新たな課題が出ており、その課題への対応が必要だ」と述べている。

https://www.sec.gov/news/press-release/2021-65