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国際的な機関投資家・資産運用機関77団体。ミャンマーでビジネスを行う投資先企業に対して軍部との関係や人権弾圧への対応を問う共同要請。対象には日本企業が多いとみられる(RIEF)

2021-06-12 13:37:20

Myanmar006キャプチャ

 

 国際的な機関投資家や資産運用機関77団体が、ミャンマーの軍事クーデターと人権弾圧に抗議するため、投資ポートフォリオに含まれる企業のうち、ミャンマーでビジネス展開をする企業に対して、事業活動や投資行動等で人権侵害が起きていないか、軍部に抗議した従業員への報復がないか等を明確にするよう求めた。投資先企業自体が、ビジネス上のリスクにさらされていることを踏まえ、企業自らが、ミャンマーの平和、公正、民主主義への移行を支持し、リーダーシップを発揮するよう求めた。

 

 投資家グループは、ノルウェーの年金運用機関のStorebrand Asset Management、米国のDomini Impact Investments、それにアドボカシーグループのHeartland Initiativeの3機関が中心。賛同機関の資産総額は3兆9000億㌦(約425兆円)。

 

 要請先の投資先企業名については明記していない。だが、環境NGOの調べによると、ミャンマーで軍部関連の企業や事業に投資をしている海外の主要金融機関9行の総投資額が総額240億㌦(約2兆6000億円)に達している。もっと投資額が多いのは、日本の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)。投資先には、キリンビールやKDDI、フジタ、東京建物、大和証券等の日本企業が知られる。http://rief-jp.org/ct6/114636?ctid=75

 

 投資先企業への要望は、①ミャンマーでのバリューチェーン全体での人権リスクを確認・評価するとともに、企業自体がそうしたリスクに関わっていないかを直ちに明確にすること②軍部関連企業や軍部とのすべてのビジネス活動の開示③今年2月のクーデター前と後での軍部関連ビジネスでの収入の明示④ビジネス周辺ですでに起きている人権侵害や潜在的な可能性、それらを緩和、防止するために取った措置等の開示――等の6項目。

 

   主唱機関の一つ、Storebrand AMのサステナブル投資担当のKamil Zabielski氏は「われわれはこの間、ミャンマーに進出した企業の、軍部との関係等を調べてきた。そうした情報を共有し、協力することで、投資家が投資先企業にエンゲージし、より効果的な活動を展開し易くする。今回の我々の行動は、民間部門がミャンマーの平和と公正、民主主義への回復を支援するためのリーダーシップを示すイニシアティブだ」と語っている。

 

 投資家グループは欧米の官民年金基金や資産運用機関等が中心。ミャンマーの軍部と関係の深い企業に20億㌦の投融資をしていると環境団体に批判された、オランダの公的年金のAPGと、ヘルスケア労働者の大手年金PGGMは、ともに署名に加わっていない。

 

 今回の投資家グループの要請は、ポートフォリオ上のミャンマーでの事業展開のある投資先企業に対して、人権侵害との関連性を問い合わせる格好だが、企業からの回答が十分でない、ないしはエンゲージメントに十分答えないといった場合は、それらの企業については投資先から除外する行動も想定される。そうなる前に、企業自体の対応が求められる。

https://www.storebrand.no/en/asset-management/announcements/statement-myanmar210610