一般社団法人環境金融研究機構 | Research Institute for Environmental Finance: RIEF

　EUの欧州委員会は12日、EUとして初となるグリーンボンドを発行した。発行額は120億ユーロ（約1兆5600億円）で、一回のグリーンボンド発行額としては過去最大になる。コロナ禍からの回復パッケージであるNextGenerationEU（NGEU）の資金調達とするもので、2026年までに総額2500億ユーロ（約32兆5000億円）をグリーンボンドで調達する。EUの大規模グリーンボンド発行は同ボンド市場の流動性拡大につながると期待されている。

　発行されたNGEUグリーンボンドは、期間15年。発行額に対して約11倍に相当する1350億ユーロ以上の応募があった。NGEUは総額8000億ユーロをコロナ禍からの回復事業に資金供給する予定で、そのうち30%をグリーンボンドで調達する。今後6年間にわたり、年間平均350億～450億ユーロ規模を発行することになる。https://rief-jp.org/ct4/117754?ctid=71

　これまで一回のグリーンボンド発行で最大金額は、9月21日に英政府が発行した初のグリーン国債（グリーンボンド国債）の100億ポンド（約1兆5000億円）。EUの発行分は日本円で約600億円、英国のグリーン国債を上回ったことになる。ボンドには内外の機関投資家等から発行額を9倍上回る応募が殺到した。

 　クーポンレートは0.40%、利回りは0.453%で、EU域内の主要国国債の利回りに比べて、グリーニアム（greenium）として2.5bps低く調達できたことになるという。ボンドは、国際資本市場協会（ICMA）が公表するグリーンボンド原則（GBP）への適合について第三者機関であるMoody’s ESG Solution傘下のVigeoEiris（VE.）がセカンドオピニオンを付与した。

　資金使途先はEU各加盟国がコロナ禍からの回復を目指す事業が主で、Recovery and Resilience Facility（RRF）でのサステナブルな支出が中心になる。同Facilityの少なくとも37%はグリーントランジション事業に投じられ、対象国は協調資金を拠出する。すでに承認された事業には、ベルギーのエネルギートランジションの研究プラットフォームや、リトアニアの陸上風力発電所の建設事業等がある。

　共同主幹事は、Bank of America Securities Europe S.A.、Credit Agricole Corporate and Investment Bank S.A.、Deutsche Bank AG、Nomura Financial Products Europe GmbH、TD Securities。共同幹事はDanske Bank A/S、Intesa Sanpaolo S.p.A、 Banco Santander S.A.の各金融機関が務めた。

　欧州委の財政・行政担当委員のJohannes Hahn氏は「今回のグリーンボンド発行で、NGEUグリーンボンドプログラムは強いスタートを切った。EUが世界最大のグリーンボンド発行体に転じることで、EUのサステナビリティへのコミットメントを示す強力なシグナルだ。われわれの未来はグリーンであり、投資家に対して彼らの資金をサステナブルな欧州の回復に活用できることを明確に示せることは、非常に重要だ」と自賛している。

　グリーンボンドフレームワークについては、国際資本市場協会（ICMA）が公表するグリーンボンド原則（GBP）への適合のセカンドオピニオンを、第三者機関であるMoody’s ESG Solution傘下のVigeoEiris（VE.）から取得している。https://rief-jp.org/ct4/117754?ctid=71

　今回のボンドの購入投資家を地域別にみると、EUから離脱した英国が29.0%と最も多く、次いで北欧諸国（ノルディック）12.0%、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクのベネルクス3国11.0%、その後にフランス11.0%、ドイツ10%、イタリア9%と続く。

https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_21_5207