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ロシアの「サハリンⅡ」新会社、主要顧客である日本の電力・ガス会社に対して、購入条件変更なしでの契約更新の提案。独「ノルドストリーム」との違い示す(各紙)

2022-08-19 12:03:17

SAHARINキャプチャ

 

 各紙の報道によると、ロシアの石油・天然ガス開発「サハリンⅡ」事業を大統領令で引き継いだロシアの新会社が、主要な顧客である日本の電力・ガス会社等に対して、販売する液化天然ガス(LNG)の価格や調達量などを従来と同じ条件で継続する提案をしてきたという。ロシアはドイツに天然ガスを供給するパイプライン「ノルドストリーム」の供給量を削減し、対立状態となっているが、日本に対しては「甘い提案」をしてきたことになる。

 

 サハリンⅡには、従来のサハリンエナジー社に対して、英シェルが27.5%、日本の三井物産12.5%、三菱商事10%を出資し、残りの50%をロシア側となっていた。日本の2社は、生産したLNGを日本の電力・ガス会社に販売している。

 

 しかし、ロシアのウクライナ侵攻後、同事業の軸となっていたシェルが事業から撤退。その後、ロシア政府は大統領令を出して同事業を引き継ぐ新会社を今月5日付で設立し、三菱商事と三井物産に対して、来月4日までと期限を切って新会社への参加を迫っている。今回の利用企業向け提案は、2社の新会社参加への後押しを意図した側面もありそうだ。

 

 サハリンⅡからの日本への天然ガス供給は国内LNGの約9%。購入している企業は、東京電力と中部電力が出資するJERAや東京ガス等8社。ロシア側の提案は、契約を継続する場合、購入価格や調達量などの条件は従来と変わらない前提とし、一旦、新会社との間で契約更新する方向としている。

 

 ロシア側から通知を受けた企業のうち、広島ガスはメディアの問い合わせに対して「契約内容に関することなので今は回答を差し控える」とコメント。九州電力は「売り主からの通知内容を踏まえ、契約継続について検討している」とした。西部ガスホールディングスは「内容を精査中」としたうえで「重要な調達先なのでできることなら引き続き供給を受けたいと考えている」と話しているとしている。

 

 ロシアのウクライナ侵攻に伴って、ロシアはウクライナを支援する西欧各国向けのガス供給を減少させており、特に、ドイツとの間を結ぶノルドストリームⅠの供給を大幅に減少させている。このため、ドイツだけでなく、EU全体でガス消費の削減を進めているが、この冬の暖房需要への対応が大きな課題となっている。

 

 ロシアはノルドストリームで結ばれているドイツへのガス供給のバルブを「戦略的」に閉じようとしているが、極東の日本に対しては、「サハリンⅡ」のLNGの販売を継続することで、収益維持を目指す考えのようだ。ロシア側の思惑は、日本がEU諸国ほど、ロシアに敵対的でないとの理由でガス供給を継続することで、EU側にも一種の「圧力」をかける狙いもありそうだ。

 

 西村経済産業相は17日、記者団に対して「現時点で何か契約締結を困難にさせるような新たな条件等がロシア側から提示されたとは聞いていない」と発言した。日本政府は、エネルギー確保を最優先し、日本の民間企業2社に対して、新会社への出資を行うことを要請しているとみられる。ただ、投資家の間では、ウクライナ問題が解決していない状況下で、対ロ投資の継続を決定することは、両社の将来の経営の不確実性を高めるリスクがあるとの見方もある。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220817/k10013776061000.html

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220819&ng=DGKKZO63564310Y2A810C2TB2000