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欧州議会、「化石燃料不拡散条約(FFNPT)」の推進をCOP27に向けた気候対策決議に盛り込む。2025年までにEUの化石燃料補助金を廃止し、EU以外の国にもFFNPT推進を求める(RIEF)

2022-10-21 01:57:10

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  EUの欧州議会は20日、11月にエジプトで開く国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)に向け、官民連携のグローバルキャンペーンとして展開している「化石燃料不拡散条約(FFPT)」の締結を各国に働きかける決議を採択した。FFPTは化石燃料の使用禁止を目指すもので、ロンドン、パリ等の主要都市や環境NGO、科学者等の賛同があるが、国の賛同はまだ3カ国だけ。欧州議会の決議はEUとしての決定ではないが、EU内外に呼びかけるもので、COP27に向けて影響を発揮しそうだ。

 FFNPT(Fossil fuel non-proliferation treaty : FFNPT)の制定を目指す国際運動は、気候変動の要因にほとんど関係しないにもかかわらず、気候変動で海面上昇や台風等の自然災害被害を受ける島嶼部諸国や最貧途上国等から声があがった。2019年から正式にスタートしている。https://rief-jp.org/ct8/94654

 核不拡散条約(NPT)、クラスター弾条約のほか、対人地雷禁止条約(オタワ条約)、生物化学兵器禁止条約等をモデルとして提案されている。これらの国際条約はいずれも、核兵器、クラスター弾、地雷、生物化学兵器等の特定兵器を製造・使用の対象とすることを禁じている。FFNPTの場合も同様に、石炭、石油、天然ガス等の化石燃料の開発・使用を禁止対象とする。

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 国連の気候変動枠組み条約(UNFCCC)は各国による気候変動対策への取り組みに照準を合わせている。これに対して、FFNPTは化石燃料そのものを禁止する条約を目指す点で違いがある。これまでロンドン、パリ、トロント、ロサンジェルス等の68以上の都市や地域等のほか、バチカン市、世界保健機関(WHO)、ノーベル平和賞受賞のモハメド・ユヌス氏、環境活動家グレタ・ツゥンベリー氏、科学者、市民団体等が賛同している。日本からは環境NGOの賛同はあるが、名乗りをあげた都市等はまだない。

 国レベルの賛同は、先月後半の国連総会で、太平洋の島嶼諸国のバヌアツ大統領が同条約の締結を求める演説をしたのが第一号となった。同氏の宣言に続いて、ニュージーランド政府、東ティモールがそれぞれ支持を表明している。https://rief-jp.org/ct8/128634

 今回の欧州議会の決議はCOP2を前にして、同議会としてEUの取り組み強化を宣言するものだ。決議内容のうち、Sustainable Climate Financeの分野で、EU各国が依然、年間550億~580億ユーロの化石燃料関連の補助金を供与していることを指摘。これらの補助金については現行の第8次環境行動計画で廃止措置盛り込んでいることを強調、欧州委員会および各加盟国に向けて、同補助金廃止政策を遅くとも2025年までに前倒しすることを働きかけるとした。同時に、EU以外のすべての国が同様の措置をとり、FFNPT推進のために行動するよう働きかける、とした。

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 欧州議会の今回の決議は、UNFCCCによるパリ協定の「1.5℃目標」達成を補完するものとの位置づけだ。同目標を達成することと、CO2の大量発生源である化石燃料の使用の継続は、相容れないという明確な理解に基づいている。同議会が、FFNPTの推進を求める決議を、サステナブルファイナンスの項目に盛り込んだことは、官民による現行の化石燃料ファイナンスの終焉を求めるためでもある。

 今回の決議に際し、欧州議会でFFNPTの採択を主導してきたスウェーデン選出議員のPär Holmgren氏は「気候公平性を真剣に考える国のリーダーは、だれもが、既存の化石燃料事業および新規の開発、生産、そして拡大を否定する条約の重要性を否定できない。再エネ事業や省エネ事業への投資を拡大して、化石燃料事業を早急に終了させる必要がある。欧州議会がFFNPTの進展により、化石燃料依存を終了させるに真剣であることを示したことは、今回の決議の勝利の一つだ」と強調している。

 同じく欧州議会のフランス選出議員のMarie Toussaint氏は「欧州の政治リーダーたちが現在のエネルギー危機を言い訳にして、化石燃料依存を深めることは断じて許されない。今日の欧州議会の宣言は、FFNPTの採択に向け、2025年までにすべての直接、間接の化石燃料補助金を終了することを、欧州委員会や加盟国に伝えることを重視した。EUは自らの歴史的な『気候債務』を認め、数世紀にわたり温室効果ガスの主要排出者だった責任を果たさねばならない」と指摘している。

 東ティモール民主共和国のジョゼ・ラモス=ホルタ大統領は、欧州議会の決議を歓迎し、「われわれは太平洋の他の国と共に、FFNPTの締結を世界に呼びかけた。欧州議会が正式にこの条約に賛同したことは心強い限りだ。欧州各国が化石燃料の拡大を終了させる議会のコミットメントに基づき、グローバルに公平な移行への支援やファイナンスをとることを期待する」と述べている。

 The European Parliament calls on nation-states to develop a Fossil Fuel Non-Proliferation Treaty — The Fossil Fuel Non-Proliferation Treaty (fossilfueltreaty.org)

MOTION FOR A RESOLUTION on the 2022 UN Climate Change Conference in Sharm El-Sheikh, Egypt (COP27) | B9-0461/2022 | European Parliament (europa.eu)

MEPs to G20: increase climate change targets before COP27 | News | European Parliament (europa.eu)