出光興産。チリの合成燃料（e燃料）製造大手と戦略的提携を締結。国内でのe燃料製造体制の確立に加え、グローバル市場を前提に日量15万バレルの供給体制の構築目指す（RIEF）
2023-04-08 22:45:37
出光興産は、再生可能エネルギーから製造するグリーン水素とCO2を合成するカーボンニュートラルな「e fuel（e燃料）」の製造大手の「HIF Global」（チリ）と戦略的提携を結んだと発表した。「e燃料」はすでに製造段階に入っており、航空機や船舶のほか自動車の内燃機関車にも利用できる。出光では「e燃料」を独自に北海道で製造する方針を打ち出しているが、両社の提携により、日量15万バレルの「e燃料」生産能力を持つグローバルな供給体制の構築を目指すとしている。
（写真は、戦略的パートナーシップのMOUを結んだ両社の関係者）
出光が提携するHIF Global社は、低コストの再エネ電力からグリーン水素を製造し、液体合成燃料の「e燃料」に変換するプロジェクトをグローバルに展開中だ。本拠地のチリのほか、米国（テキサス）、アジア、オーストラリア（タスマニア）等で事業を進めている。昨年12月にチリのマガジャネス（Magallanes）のHaru Oni実証プラントで初の「e燃料」の生産を成功させている。
出光は今年1月に、Haru Oni実証プラントを視察し、その後、HIFとの間でe燃料の早期実証化に向けた協議を重ねた結果、今回、戦略的提携の基本合意書（MOU）を結んだ。両社の提携によって今後、①HIFの海外プロジェクトからのe燃料の調達および国内供給②国内外におけるe燃料製造設備への共同出資③国内で回収したCO2の国際輸送と活用（e燃料の原料化）ーー等の実現・実証化に取り組む。
「e燃料」は、EUが2035年のガソリン車等のエンジン車（内燃機関車）の新車販売禁止法案において、同燃料を使用する内燃機関車は例外として35年以降も新車販売を認めるとしたことから、俄然、注目が集まっている。同燃料は合成燃料とも呼ばれ、再エネ電力から水を電気分解して得られる水素と、工場等から回収したCO2を合成して製造する。将来は大気中のCO2を直接分離・吸収する「DAC」技術を使うことで、カーボンニュートラルな燃料として評価される見通しだ。https://rief-jp.org/ct5/133428
ただ、電気自動車に比べると、再エネ電力から水素製造の工程と、CO2吸収工程が付け加わるので、燃料としては電気より割高になる。その一方で、既存の内燃機関車をそのまま活用できるので、車体価格の高いEVよりも、ライフサイクルベースでは割安になるとの指摘もある。
出光では「（e燃料は）原料製造から製品利用までの製品ライフサイクル全体において、カーボンニュートラルを達成するエネルギーとして注目される。流通にあたり、貯蔵タンクやパイプラインなど既存のインフラを活用できることや、自動車、船舶、航空機のエンジンに手を加えることなく利用が可能であることから、脱炭素化の早期実現策として期待でき、社会実装が求められている」としている。
同社では、国内のグループ製油所・事業所での同燃料の生産検討を進め、2020年代後半までに国内での「e燃料」の生産・供給体制を確立することを目指している。HIF Globalとの提携で、海外プロジェクトで製造したe燃料を輸入するほか、原料となるCO2を日本から輸出することも検討対象としている。https://rief-jp.org/ct10/133908
HIF Global のCEOのCesar Norton氏は「e燃料は、自動車や船、航空機等のエンジンを変更することなく、脱炭素化に『今』、利用できる燃料だ。すでにわれわれはチリで『カーボンニュートラルガソリン（e燃料）』の生産を始めており、2024年には米国テキサスで世界規模のe燃料工場の建設を始める予定だ。グローバルな影響力のある出光との協力によって、e燃料生産力を日量15万バレルとするわれわれの計画が現実化すると期待している」と述べている。
https://www.idemitsu.com/jp/news/2023/230405.html
https://hifglobal.com/wp-content/uploads/2023/04/HIF-Idemitsu-Strategic-Cooperation-Agreement.pdf
Research Institute for Environmental Finance