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中国電力が初のトランジションボンド発行。800億円。うちリンクボンドの発行額600億円は、電力カルテルでの課徴金額707億円に近似。罰金支払いも「トランジション」(?)(RIEF)

2023-05-26 23:15:48

Chugokudenryoku キャプチャ

 

 中国電力は26日、同社として初のトランジションボンドを2本合計800億円を発行すると発表した。このうち600億円は資金使途を特定しないトランジション・リンク・ボンドで、設備資金や借入金返済等に充当するとしている。同社は今年3月に公正取引委員会から電力カルテルの摘発を受け、課徴金を約707億円科せられており、トランジションボンドが課徴金支払いによる同社の資金繰りの「穴埋め」の一部に使われる形でもある。経済産業省主導のトランジションファイナンスの「融通無碍」ぶりを示す事例ともいえる。

 

 同社によると、発行するのは、資金使途を太陽光発電等の再生可能エネルギー事業および再エネ対応の電力ネットワークの強化・高度化に特化する資金使途特定型のトランジションボンド(200億円)と、資金使途を特定しないトランジション・リンク・ボンド(600億円)。後者については中国電力の一般資金に充当が可能で、同社では「資金使途不特定型」としながらも、設備資金、借入金返済、社債償還資金、中国電力ネットワークへの貸付金等と記載している。

 

 同社は両ボンドについて、4月に策定した「サステナブルファイナンス・フレームワーク」に立脚するとしている。そのうえで「いずれも、環境負荷低減等に向けた取り組みに要する資金を専用の調達手段で確保するもの」と強調している。公取の摘発を受けた電力カルテルでの課徴金額約1010億円のうち、約7割に相当する707億円が中国電力に科せられた。財務への影響の大きさから、会長と社長が来月の株主総会で退任することが決まっている。

 

 同社の社債発行額は22年度が1596億円だったが、今年度は社債と長期借入金合わせて4100億円以内と、約2.5倍に増やす計画だ。今回のトランジションボンドの発行額もこの中に入っており、課徴金支払い等で膨らんだ資金繰りの対応の一環として、トランジションボンドを発行する、と投資家にみられても不思議ではない状況だ。

 

 資金使途特定型のトランジションボンドについても、その資金使途は、再エネ等の事業と送配電網の高度化等の事業。いずれもグリーンボンドとして発行するほうが、投資家にはわかり易いと思われる。しかし、リンクボンドを含めて「トランジション」の名で発行することで、経産省からまとめて補助金を得る狙いもあるようだ。

 

 ボンドは前者が5年債、後者が10年債。表面金利は、前者が年0.455%、後者が年0.920%。いずれも6月1日が払込期日になっている。リンク債のほうは、2030年度の小売電気事業でのCO2排出量を2013年度比半減するサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPT)を設定し、未達の場合は、発行額の0.2%を同電力が寄付するとしている。寄付先についてはプレスリリースでは明記していない。

 

 主幹事は、両方のボンドについて、みずほ証券、大和証券、野村證券が担当し、5年債にはSMBC日興証券、しんきん証券が、10年債には三菱UFJモルガン・スタンレー証券と東海東京証券が、それぞれ加わる形をとる。

 

https://www.energia.co.jp/assets/press/2023/p20230526-2.pdf

https://www.energia.co.jp/assets/info/2023/p20230428-6a.pdf