関西電力。和歌山市での大規模ガス火力発電所計画の廃止決定。姫路・大阪等での既存火力合計4基も閉鎖へ。電力需要低迷で、火力発電能力を縮小し、原発にシフトへ（RIEF）
2023-12-19 22:52:40
（写真は、稼働11年で閉鎖を決めた姫路第一発電所のガスタービン発電機）
関西電力は19日、和歌山市で計画していたガス火力発電の和歌山火力発電所の建設を中止するとともに、兵庫県姫路市で操業中のガス火力第一発電所ガスタービン2基等、合計4基を廃止すると発表した。いずれも電力需要低迷などを要因としてあげている。和歌山火力は計画出力370万kWで関電の火力で最大規模になる見通しだった。だが2004年に工事を中断し、20年近く凍結された末に、脱炭素の流れの中で工事再開のめどが立たず、今期で特別損失を計上し処分する。同社では、脱火力の代わりに原発の再稼働が進み、原発稼働率は7割に上昇している。
和歌山発電所は和歌山市の紀ノ川河口沖の西防波堤沖埋め立て地に計画されてきた。1990年代の電力需要の大幅な伸びを受け、1995年に建設計画の検討を始めた。だが、バブル崩壊後の需要低迷等の要因により、2004年に工事を中断したままとなっていた。関電は今後についても電気事業を取り巻く事業環境を踏まえると、同発電所を建設できる見通しは得られないとして、土地の取得や仮設備の設置費用など約1230億円を特別損失として計上することを決めた。
計画予定地の活用については、2026年度をめどに、企業誘致エリアとして整備するとしている。一方、稼働中の姫路第一発電所ガスタービン1、2号機 （兵庫県姫路市）と、関西国際空港エネルギーセンター1、2号機（大阪府泉南郡）の4基の火力についても、前者は2024年3月末で、後者は26年3月末で、それぞれ廃止する。ともに電力需給状況から発電を活用する見込みがないためとしている。操業以来の経過年数は、前者が11年、後者が30年。いずれも過剰設備ということになる。発電量は前者が合計6万5000kW、後者が同4万kW。
関電の火力依存度は、東京電力福島第一原発事故直後の2012年度には発電量の75％を占めた。さらに16年度には86%まで上昇した。その後、脱火力の流れが高まった影響と電力需要の伸び悩みにより、22年度は53%まで下がっている。同年度の火力発電量は10年前に比べ半減している。
関電がガス火力を含めて化石燃料による火力発電事業を縮小する判断をするのは、同社の原発の再稼働が想定通りに進んでいることと、既存原発の操業期間が60年超についても運転が認められるなどの措置がとられたことから「火力から原発」の構図を打ち出し易くなったためといえる。原発については、国内では東電事故の影響から懸念する声が依然強い。だが、米欧ではクリーンエネルギーとする一定の評価があることから、脱炭素の手段とアピールできる要素もあるとしている。
しかし、2050年を見据えたグローバルな電力需給のベクトルは、「火力から原発」ではなく「火力から再エネ」である。国際エネルギー機関（IEA）の2023年版ネットゼロシナリオ（NZE）によると、グローバルベースで原発の発電量は2022年の417GWから、50年には倍強の916GWに増える。しかし、発電量全体に占める割合は、他の発電源が増えることから、22年の9％から50年は8%に微減する。
一方、太陽光、風力等の再エネ電力は22年の3630GWから、50年には8倍増の3万GWに増大、電源割合は30％から30年が60％に、50年はほぼ90 %となる。再エネが電源の主力になるのだ。石油・ガス・石炭を含めた「対策の無い化石燃料（unabated fossil fuels）」は2022年から40年までに90％削減される。電源割合も22年の36%から30年に13%、50年にネットゼロになる。
関電の場合、再エネ発電への取り組みは極めて限られている。現時点で、太陽光発電は15カ所、風力は2カ所が稼働するだけ。北海道や宮城県で計画していた陸上風力発電事業は地元の反対で頓挫した。洋上風力発電も「後発組」で、手応えが定かでない。結局、「原発に頼るしかない」ということなのだろう。脱炭素時代の電力会社としての展望が見えない。
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2023/pdf/20231219_1j.pdf
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2023/pdf/20231219_3j.pdf
Research Institute for Environmental Finance