公正取引委員会。損害保険大手各社の企業向け「共同保険」での談合疑惑で、立ち入り検査。保険料調整が常態化か。金融大手の「寡占化」が背景に。金融業界全体にも同様のリスク(RIEF)
2023-12-20 00:11:15
各紙の報道によると、公正取引委員会は19日、損害保険大手各社が企業向けの共同保険の保険料の見積もりなどでカルテルを結んでいた疑いが強まったとして、損保4社などに独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで立ち入り検査に入った。損保各社の談合疑惑は今年6月、私鉄グループの東急への共同保険で発覚した。その後、他社との契約でも同様の問題が判明、損保各社が金融庁に提出した報告では100社以上の契約で問題があることがわかっている。
公取委の立ち入り検査を受けたのは、東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の4社と保険代理店2社の合計6社。
これらの各社は、企業を対象とした火災や事故等のリスクを、保険各社が分担して引き受ける共同保険の契約に際して、保険会社側が事前に話し合い、企業から受け取る保険料を調整するカルテル行為を行っていた疑いがある。同保険では契約企業が自社の施設で発生する事故等を対象とした賠償責任保険や、地震、火災保険等を契約対象にしていた。東京都や独立行政法人との保険契約の入札でも、事前に落札する会社や価格を調整する談合を行っていた疑いもあるとされる。https://rief-jp.org/ct2/136565?ctid=
大手4社の共同保険での不正疑惑については、金融庁も、不適切な取引を招いた各社の内部管理体制の不備について、今月中に保険業法に基づく業務改善命令を出す方向とされる。立ち入り検査を受けた各社は、同日、「調査に全面的に協力していく」等のコメントを公表している。
報道によると、損保各社は遅くとも2013年ごろから、企業との共同保険の契約更新時の見積もりの際、お互いに電話や対面などを通じて顧客企業に提示する保険料を調整したうえ、契約を取りまとめる主幹事会社が更新後も主幹事役を継続できるよう価格を操作していた疑いが持たれている。主幹事の保険会社には保険料収入が他社より多いとされる。
東京都との契約では、都の各部局が契約する公用車の自動車保険契約などで受注調整していた疑いが出ている。都の保険契約は入札で落札した企業1社が契約を締結する仕組みだ。都によると、22年度に各社と締結した保険契約は約50件あり、入札で競合しないよう調整していた疑いが出ているという。
企業向け保険での損保大手各社のシェアは4社で9割を超える。事前調整が常態化していることで、保険会社間での競争が起きず、企業が支払う保険料は高止まりしていたとみられる。市場全体の競争環境に与える影響も大きい。公取委は各社が事前調整によって組織的に収益を安定確保する狙いがあったのでは、との疑念も持っているという。
損保各社の間では、別途、中古車販売・買取大手の自動車ビッグモーターによる保険金の不正請求問題でも、損害保険ジャパン等が、不正の可能性があることを認識していながら、十分な対応をせず保険契約者に不利益を与えていたとして、金融庁から立ち入り検査を受けている。
損保業界のほか、銀行業界も、金融危機の克服のため合従連衡が進んだことで、大手行や地方銀行、中小金融機関の数が減少した結果、寡占状態の弊害が生じているとの指摘もある。金融当局は金融監督の観点では、監督対象の金融機関の数が少ないと効率的な監督ができる一方で、今回の損保談合の常態化のように、金融機関同士の競争が不十分である場合に、契約者や預金者が不利益を受けることへの政策的対応をどうするかが問われる。https://rief-jp.org/ct2/137842?ctid=
今回の損保のケースでも、顧客企業側が、損保各社の不正を見抜いて発覚したわけで、金融庁等による定期的な検査や資料の徴求では見過ごされてきたことになる。システムリスクに対応するプルーデンス監督に加え、不正を早期発見し、未然に防止するエンフォース行政の強化が課題として浮上している。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231219/k10014292241000.html
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE153KT0V11C23A2000000/?type=my#AAAUAgAAMA