HOME5. 政策関連 |経産省、「GX推進機構」の支援基準案を公表。「民間金融機関では取り切れないリスクを補完」等、遵守基準と努力基準。リスク評価基準は示さず。情報開示等は「努力基準」扱い(RIEF) |

経産省、「GX推進機構」の支援基準案を公表。「民間金融機関では取り切れないリスクを補完」等、遵守基準と努力基準。リスク評価基準は示さず。情報開示等は「努力基準」扱い(RIEF)

2024-05-16 21:49:06

スクリーンショット 2024-05-16 182830

写真は、GX推進機構の理事長に就任した日本生命会長の筒井義信氏)

 

 経済産業省はGX推進法に基づき官民で設立する「GX推進機構」が、GX関連の新技術等にファイナンスする金融機関に対する「支援基準」(案)を公表した。同案は、金融機関によるGX事業へのファイナンスに対して、同機構が支援を実施する際に、機構が従うべき基準(遵守基準)と、努めるべき基準(努力基準)に分けている。前者には「政府の方針との整合性」「民間で取り切れないリスクの補完」等、市場べ―スの判断を超えた政策的基準を示している。ただ、そうした「リスク」評価の定量基準は示していない。後者では、「情報開示」「ステークホルダーとの連携」等が示されているが、努力基準の扱いとしており、支援事業の透明性よりも、金融機関のリスクを丸抱えしてGXファイナンスを強引に推進する「統制的」色合いが濃いといえる。

 

 GX政策では、国がGX経済移行債の発行で調達する20兆円の資金に加え、民間金融機関の資金を含めて総額150兆円の投入を想定している。国がメニュー化するGX関連技術等には、開発中のものや、他の技術と競合するもの等も少なくないことから、金融機関が投融資を判断するうえでのリスク評価が課題になっている。GX推進機構は、金融機関が直面する、こうしたリスク軽減のために、金融機関に対して債務保証、出資及び社債の引受け等の金融支援の実施を主要業務とする。

 

 機構による金融支援業務については、GX関連の新技術等を実用化する際、それらの技術に伴う技術リスクや完工リスク、需要リスク等があり、不確実性が強い場合に、機構は金融機関等が取り切れないリスクを特定し、その部分についてリスク補完することが基本、としている。

 

 従来の産業投融資支援の場合は、公的な支援は、支援対象先からの将来収益を前提に、収支相償を原則とするのが基本とされる。だが、GX機構の金融支援は、別途、導入するカーボンプライシング政策で調達する公的資金やGX債の財源を金融支援の償還財源とすることで、支援後に金融機関からの返済を求めない方針のようだ。逆に、基準案は「機構は、リスク補完を行わないことで、わが国全体のGXの推進に停滞を招かないよう、長期的な観点で取るべきリスクはしっかりと取ることが重要」として、金融支援の償還可能性の考慮よりも、支援最優先の姿勢をとるべきと、強調している。

 

スクリーンショット 2024-05-16 215202

 

 公表した支援基準案は、「金融支援に当たって機構が従うべき基準」と、「金融支援全般について機構が努めるべき事項」に2分している。前者は、①政府の方針との整合性 ②GXに資する技術の社会実装または事業の推進③ 民間で取り切れないリスクの補完④支援対象となる事業活動の持続可能性その他の総合判断 ⑤適切な経営・推進体制の確保ーーの5項目。

 

 後者は①金融支援の基本的な考え方②金融支援の基本的な考え方③政府全体の政策との連携④GXの推進に向けた人材の育成⑤ステークホルダーとの連携⑥情報開示--の6項目。

 

 前者の「遵守基準」の①で示す「政府方針」は、GX推進戦略や、政府が推進するクライメート・トランジション・ボンド・フレームワーク 等の政府方針に整合する活動、とした。同③の「リスクの補完」では、「民間金融機関等が真に取り切れないリスクが存在し、その補完が必要であること」としている。この場合の「真に取り切れないリスク」を評価する定量基準を策定するかどうかは、明記していない。

 

 同④の支援対象となる事業活動の「持続可能性の総合判断」では、GX政策への貢献、民間金融への呼び水効果、トランジションファイナンス、ブレンデット・ファイナンス等の新たな金融手法への進展への寄与、良質な雇用をもたらす効果等を総合的に勘案し、金融支援が必要とされること、と幅広く設定している。しかし、ここでも明確な定量基準への言及はなく、機構による定性的な判断が前提のようだ。

 

 後者の「努力基準」のうち、①では、民間がとれるリスクかどうかを踏まえる一方で、リスク補完を行わないことでGX推進に停滞を招かないよう、取るべきリスクはしっかり取ることと、「金融支援最優先」の姿勢を強調している。同②~④はそのための体制整備や連携、人材育成等に「務めること」を求めている。⑤のステークホルダーとの協働や連携、⑥の情報開示を通じた運用の透明性の確保を、「遵守基準」とはせず、「努力基準」にしたのは、機構の官主導体制を表しているようだ。

 

 同機構は、GX推進法に基づいて設立される経産省の認可法人。経団連、全銀協、学識有識者等が発起人になった。理事長には経団連副会長を務める日本生命会長の筒井義信氏が15日付で就任し、最高執行責任者(COO)・専務理事にボストンコンサルティンググループのマネージング・ディレクターの重竹尚基氏、幹事に弁護士の千原真衣子氏が就任した。その他、理事4人、監事1人、運営委員7名、職員30人程度の約40人体制でスタートし、最終的に100人規模に拡充する。今月中に設立登記を行い、7月1日に業務開始の予定。排出量取引制度の運営や、化石燃料賦課金の徴収等の業務も担う。

ttps://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/2024/055/055_005.pdf