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日本製鉄に対して、英資産運用のLGIMなどの内外3団体が、パリ協定と整合する脱炭素目標の設定等を求める共同株主提案を提出。高炉の「座礁資産化」の懸念も表明(RIEF)

2024-05-29 08:27:29

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 英大手資産運用会社 リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメント(LGIM)など内外の3団体が、日本製鉄に対して、脱炭素戦略の改善を求める共同株主提案を出した。提案は、日鉄の脱炭素目標がパリ協定と整合しておらず、掲げる脱炭素化戦略も排出量削減の実現可能性が実証されていない技術に過度に依存していると指摘。同社に対して、パリ協定と整合する目標設定と、脱炭素戦略の改定を求め、さらに、同社による政府の気候政策等へのロビー活動の見直しも求めている。

 

 日鉄は6月21日に株主総会を開く予定だ。共同株主提案を行ったのは、LGIMのほか、オーストラリアの非営利団体 オーストラリア企業責任センター(ACCR)、一般社団法人コーポレート・アクション・ジャパン(CAJ)の3団体。共同提案は、欧米の主要な機関投資家グループ(合計で約5000兆米㌦の運用資産保有)による日鉄とのエンゲージメントを経て決定されたとしている。

 

  提案は3つに分かれている。提案1と提案2は、CAJとACCRによる。提案1は、パリ協定の目標に沿ったスコープ1、2及び3の温暖化ガス(GHG)排出量削減にかかる短期的及び中期的目標を策定し公表することを求めるとともに、将来の設備投資戦略と排出量削減目標との整合性等についての情報開示を求める、という内容だ。

 

 同じく、CAJとACCRによる提案2は、GHG排出量削減目標の達成の進展を促進するため、経営陣の報酬と連動させる報酬体系を制定することを求め、その実施状況についての詳細の開示を求めている。

 

 3団体によると、提案1と2は、日鉄とのエンゲージメント活動に参加した機関投資家の懸念を反映して提案するものだという。日鉄との対話の結果、同社はパリ協定に整合した目標を設定しておらず、現在の脱炭素化戦略は排出量削減の実現可能性が実証されていない技術に過度に依存していることを再確認。パリ協定に沿った目標を設定せず、それとリンクした技術投資戦略に不確実性があることは、資産の座礁化を含む重大なリスクを株主に知らせていないことになると懸念を示している。

 

 もう一つの提案3は、LGIMとACCRによるもので、気候及び脱炭素化に関連した同社のロビー活動について、活動内容の情報開示の改善を求める内容だ。同社による気候及び脱炭素化関連の政府・政治家へのロビー活動については、機関投資家グループと日鉄との集中的な対話プロセスを踏まえて、提案を決定したとしている。同株主提案の受け入れは、日鉄の長期的な企業価値向上にもつながるとしている。

 

 日鉄はGHG排出量の多い高炭素集約型産業である鉄鋼業の国内トップメーカーだ。だが、欧米の主要な鉄鋼メーカーとは異なり、パリ協定に沿ったGHG排出削減目標を設定していない。その結果、3団体は、同社の将来の技術投資戦略には不確実性が付きまとうとしている。同社はGHG排出量の多い高炉を軸に鉄鋼生産を継続している。この点で3団体は、このまま脱炭素化を進めると、資産の座礁化リスクを含む重大なリスクが顕在化する懸念があるとし、株主はリスクに直面するとしている。こうした点を改善することで、株主の長期的利益を守るようにすべきとしている。

 

 CAJによると、3団体の共同提案は、合計して約5000兆米㌦の運用資産を抱える機関投資家グループによる日鉄とのエンゲージメント活動を経て決定されたとしている。このうち、欧州の有力機関投資家のアムンディ(Amundi)、ノルデア(Nordea Asset Management)、ストアブランド(Storebrand Asset Management)の3機関は、上記3件の提案全てを支持しているという。

 

 3団体は株主提案の趣旨として、「共同株主提案の実施は、日鉄を日本およびアジア市場における鉄鋼脱炭素化のリーダーに押し上げ、さらにグローバル市場でのポジショニング強化にもつながると確信している」と説明している。

 

 LGIMのインベストメント・スチュワードシップ日本ヘッドの福田 愛奈氏は「ネットゼロ経済への移行を加速させるために各国政府の政策転換の必要性が高まる中、日本もまた、気候・エネルギー政策において重大な岐路に立っている。われわれは、日鉄に対し、これらの政策議論にどのように関与しているかについて説明責任と透明性を高め、模範を示すよう継続的な対話の中で求めている。低排出の鉄鋼生産を促進する政策は、大きく変化する市場の中で同社の国際競争力とレジリエンスの強化につながると期待される」としている。

 

 オーストラリア企業責任センター(ACCR)のエグゼクティブディレクターのブリン・オブライエン氏は「日鉄は製鉄のグリーン化機会への取組みが遅れており、同社の将来に向けた競争力への株主の信頼をもたらすためには、さらなる努力が必要。USスチールへの買収提案は、日鉄が国際的な影響力を持とうとしていることを示している。そのような影響力に鑑みれば、日鉄は実証されていないCCUSに頼るのみではなくその脱炭素化目標を達成するための実質的な戦略をもつべき」とコメントしている。

 

 コーポレート・アクション・ジャパン(CAJ)の代表理事、竹内靖典氏は「日鉄は、気候変動問題への取り組みを経営の最重要課題と位置付け、2050年のカーボンニュートラル達成のビジョンとともに、2030年ターゲットに向けた超革新技術の開発の取り組みを進めている。しかし、現時点での移行計画と投資計画は十分ではなく、今後数十年の企業価値に大きく影響を及ぼすという懸念を我々は持っている。今回の提案は、脱炭素への取り組みの透明性を高めることにより投資家の信頼を深め、気候ガバナンスを強化した上で『1.5℃』シナリオ実現に向けた事業の強靭性を確実にすることを狙っている」としている。

https://corporateactionjapan.org/2024/05/21/ja-nippon-steel-shareholders-proposal/