環境NGO「気候ネットワーク」。JERAの「グリーンウォッシュ広告」問題で、国連事務総長に「情報提供」の書簡送付。JERAだけでなく日本政府のGX政策も「ウォッシュ政策」と(RIEF)
2024-08-16 13:35:55
(写真は、6月5日の「環境の日」の講演で、化石燃料業界の「グリーンウォッシュ広告」を批判した国連のグテーレス事務総長)
環境NGOの気候ネットワークは、国内最大のCO2排出企業であるJERAが、石炭火力発電へのアンモニア混焼を「ゼロエミッション火力」等として展開している広告は「グリーンウォッシュ広告」だとして、国連のグテーレス事務総長に「情報提供」の書簡を送ったと発表した。同事務総長は6月に、温暖化の元凶である化石燃料業界が気候対策を遅らせるため「グリーンウオッシュ広告」を展開していると指摘、同業界の広告を禁止するよう各国に呼びかけている。気候ネットは、日本ではそうした広告が野放しになっていると指摘するとともに、日本政府が推進する「グリーン・トランスフォーメーション(GX)」政策自体が「グリーンウォッシュ政策」の懸念があるとしている。
気候ネットは、昨年10月、東京電力と中部電力が共同出資して設立したJERAが、自社の広告で、アンモニア混焼の石炭火力発電を「CO2の出ない火」「ゼロエミッション火力」等としてメディア等で広告を展開していることは、電力需要者等に誤解を与える「グリーンウォッシュ広告」だとして、一般社団法人JELF(日本環境法律家連盟)と連携して、公益社団法人日本広告審査機構(JARO)に、同社に広告中止勧告をするよう申し立てた。
ただ、メディアや広告業界等を会員とするJAROは今年5月末、「(JERAの広告は)当機構が可能な広告・表示に関する判断の範囲を超えている」として評価のための審査を行わないとの回答をしてきた。https://rief-jp.org/ct7/146023?ctid=
一方、国連のグテーレス事務総長は、6月5日の「環境の日」の演説で地球が危機的状況にあることを改めて訴えるとともに、「温暖化の元凶である化石燃料業界が各国政治家や政府へのロビー活動や、消費者向けのイメージ広告等を大量に展開し、気候変動対策の実施を遅らせ、恥知らずのグリーンウオッシュを行っている」と、同業界と、その広告を掲載するメディアと広告業界を強く批判した。https://rief-jp.org/ct4/145988?ctid=
そこで気候ネットでは、今回の書簡において「(同事務総長が)化石燃料の広告の禁止、および広告・PR会社にグリーンウォッシュ広告へのほう助をやめるよう求めたことは、誠に的を得た提起」と評価する一方で、JERAのアンモニア混焼推進の背景として、日本政府が推進するGX政策自体が、脱炭素を標ぼうした「グリーンウォッシュ政策」の懸念があるとの見方を伝えた。
その懸念として、「日本政府はG7諸国の中で唯一、石炭火力の廃止年を明らかにしていないほか、エネルギー政策やGX政策において、水素・アンモニア混焼等を石炭火力の排出削減対策と位置付け、2050年までも石炭火力の利用を容認している」と指摘。「私たちはこうした日本のGX政策をグリーンウォッシュ政策と懸念している」と述べた。
また誇大広告やウォッシュ広告を審査、是正を勧告する立場のJAROについても、「広告自主規制機関で、消費者に迷惑や被害ウソや大げさ、誤解を招く広告を社会から無くし、良い広告を育むとするが、今回の申し立てに対して『判断の範囲を超えた』として理由も示さず、審査対象とすることすら拒否したことは、その社会的任務を自ら放棄したというほかない」と批判した。JARO自身が「広告審査機関ウォッシュ」の懸念があるというわけだ。
書簡は最後に、「JERAが日本最大のCO2排出企業であることから、そのグリーンウォッシュ活動は国内にとどまらず、アジア諸国の気候変動対策にも影響を与えかねないとして、化石燃料企業の広告をめぐる動向や広告業界の自主規制の姿勢について認識していただくために情報を共有させていただく」とし、日本の官民の「ウォッシュ行動」が国際的な課題でもある点を強調した。
JERAが石炭火力へのアンモニア混焼を、「ゼロエミッション火力」などと呼んで、あたかも今現在、同混焼でゼロエミッションが実現できるかのようなキャンペーンを行っている背景には、気候ネットが指摘するように、日本政府自体がGX政策で同混焼方式を地球温暖化対策と位置付け、現在、策定作業が進む第7次エネルギー基本計画でも推進しようとしている政策の後押しがあるといえる。
JERAは現在、20%のアンモニア混焼実証実験を踏まえてその実現可能性を精査している段階だ。究極の目標とする100%混焼が技術的、経済的に可能かどうかはまだまだ未知数だ。またアンモニア製造からのCO2を回収するCCS技術も、日本国内で実用化できる地域は極めて限られているとされる。仮にこうした技術的課題をクリアできたとしても、アンモニア燃焼発電のコストは、再エネ発電による電力価格を1.5倍以上も上回るとされる。政府はそのコストを消費者の電力価格に上乗せする計画という。
https://kikonet.org/content/36135