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鹿島建設。サステナビリティ・リンク・ボンド(SLB)200億円発行。スコープ3削減も目標に設定。未達の場合の「罰則」はクレジット購入と寄付。いずれも企業評価にプラス要素(RIEF)

2024-09-05 15:45:06

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 鹿島建設は4日、温室効果ガス(GHG)のスコープ3の削減目標に盛り込んだサステナビリティ・リンク・ボンド(SLB)を200億円発行した。削減目標となるSPTには、2024~26年度のスコープ1~2、同スコープ3、それに自然ポジティブの実現に資する「NbS(Nature-based Solutions)」の3条件を設定している。脱炭素目標に加え、自然再興への取り組み強化も定量目標を設定した点は投資家に評価されるとみられるが、目標未達の場合の「罰則」に難点ありと言わざるを得ない。

 

 鹿島のSLBは、期間5年、金利は年0.795%、主幹事は大和証券、SMBC日興証券、野村證券、みずほ証券の4金融機関。ストラクチャリング・エージェントを大和が務めた。セカンドオピニオンは格付投資情報センター(R&I)が担当した。

 

 鹿島は今年8月に、従来の「環境ビジョン」を改定し、「鹿島環境ビジョンplus」を公表している。改定ビジョンでは、「脱炭素」「資源循環」「自然再興」の3つの分野が相互に関連し合って相乗効果やトレードオフを生み出しているとし、目標と行動計画を再構築したとする。これらの3つの分野の取り組みは同社グループだけでの実行は難しいとして、顧客、社会と協力して取り組んでいく意思と、2050年の先を見越した永続性を「plus」の言葉に込めたとしている。https://rief-jp.org/ct4/99556?ctid=

 こうした新しいコンセプトに基づいて今回発行したSLBは、サステナビリティの改善を示すKPI(重要業績指標)に、GHGのスコープ(1~3)をすべて取り上げたほか、従来の「自然共生」の考えをさらに積極化して、生物多様性の損失を止め、反転させる「自然再興」の指標として、NbSの認証提供(環境認証・外部表彰等取得)を盛り込んだ。

 これらのKPIについては、改定ビジョンでのグループの2050年ネットゼロ(カーボンニュートラル)目標に沿う形で、2030年度のグループ全体のCO2排出量を、スコープ1~2は2021年度比42%削減、スコープ3は2021年度比25%削減と設定している。この目標値については、SBTiから1.5℃水準のSBT(Science Based Targets)に沿うとの認定を得ている。

 発行したSLBのSPTには、償還期間5年のうち、前半の2024~26年度の3カ年において、スコープ1~2の排出量を30.5万㌧以下にし、同じくスコープ3については同1094.2万㌧以下にする目標を設けした。またNbSについては、同期間中に累計12件の取得を目標としている。

 これらのSPTの達成の可否については、発行3年後の2027年8月末に判定する。いずれかのSPTsが未達成の場合、SLBの償還後1年以内に、カーボンクレジット購入か、または寄付のいずれか、あるいは両方の組合せ等を行うとしている。SPTs未達成の場合のクレジット購入額または寄付額については、SPTごとに以下のように設定している。

SPT1:社債発行額の0.05%相当額。

SPT2:社債発行額の0.025%相当額。

SPT3:社債発行額の0.025%相当額。

ただ、市場から購入するクレジットは資産であり、購入によって同社のGHG排出量の削減に充当できる。また寄付は、企業にとって社会的貢献であり、企業のレピュテーションを高める効果につながる。これらの対応を「罰則」と位置付けるのはいかがなものか。これまでも環境金融研究機構としては、寄付をSPTとすることに対して異論を示してきたが、わが国企業は「寄付は罰」との認識が消えないようだ。https://rief-jp.org/blog/123709?ctid=33

 スコープ3削減やNbSをSPTに盛り込んだ「先見性」については評価できよう。しかし、SPT未達の際の対応に難ありというところだ。本来は「未達」の場合は、SLBに投資した投資家のESG期待に応えられなかった「お詫び」として金利でのリターンを上積みするのが望ましい。それとも鹿島の「SLB plus」債の場合は、罰則も「plus」として扱うということなのか。

 このほかビジョンでは、2050年のサーキュラーエコノミー実現のため、KPIに「再生材使用率」及び「建設廃棄物再資源化等率」を採用し、「再生材使用率」の目標値は、2026年度40%、2030年度60%とし、「建設廃棄物再資源化等率」の目標値は、2026年度97%、2030年度99%としている。SLBのSPT3に設定したNbSについては、2030年度目標として、累計100件を目指すとしている。

https://www.kajima.co.jp/ir/grading/slbp/index.html

https://www.kajima.co.jp/ir/pdf/20240904-j.pdf

https://www.kajima.co.jp/ir/grading/slbp/framework/pdf/slbp_framework_202408.pdf#anc_06