関西電力。昨年7月に次ぐ、二度目の移行債(トランジションボンド)307億円発行へ。資金使途は、大半を保有原発の安全基準適合対策など原発保全に充当。実質的な「原発ボンド」(RIEF)
2025-04-05 00:38:14

(写真は、2004年に5人の死亡事故を引き起こした美浜原発3号機㊨)
関西電力は4日、同社として二度目となる移行債(トランジションボンド)を発行すると発表した。10年債と20年債の2種類で発行総額は、307億円になる。昨年7月にも総額450億円の同ボンドを発行している。資金使途は原発の新規制基準適合のための安全対策工事や原発の安全・安定運転の維持に必要な設備機器の点検・修理、安全性の向上に向けた設備更新等の原発関連支出への充当を中心とする。同社の2024年度の原発利用率は、東京電力福島第一原発事後で最大の88.5%となっており、同ボンドは実質的には「原発ボンド」といえそうだ。
同社の発表によると、発行する移行債のうち10年債は発行額250億円で利率1.766%。20年債は57億円で、利率2.367%。資金使途先は、ともに①原子力②ゼロカーボン火力③送配電、の3分野としている。このうち①については、原発の安全対策工事(再稼動への対応)、 安全・安定運転の維持に必要な設備機器の点検・修理、さらなる安全性の向上に向けた設備更新、としている。
現行原発の安全性面に資金を投じるが、次世代原発への建て替えや、欧米で注目を集めている小型原子炉(SMR)の開発等への「移行」には言及していない。原発の安全性の確保は当然、重要だが、原発の修理・補強だけで「移行ボンドの資金使途」といえるのか疑問が生じる。原発の最大の安全性向上策は、使用済核燃料を排出しない「第4世代原発」への転換とされる。関電の移行債の資金使途には、そうした技術開発の視点はないようだ。
同社は2004年8月9日に、福井県の美浜原発3号機で二次冷却系配管が破裂し、作業中の作業員11人が漏洩した高温蒸気を浴びるという事故を起こしている。同事故では4人が即死、病院に搬送された一人も事故から17日目に死亡した。5人死亡、重軽傷者6人という労災事故を引き起こしている。

同社は再稼働の進展で、現在7基の原発をフル稼働させている。その結果、原発の使用率は東電事故後、もっとも高くなっているほか、それ以前の1993年度以降で見た場合、90.5%と過去最高の使用率となった2002年度、同じく89.1%だった03年度に次ぐ3番目の高水準になっている。
次の資金使途先とする「ゼロカーボン火力」については、既設火力発電所の高効率化に向けた設備更新 ・ ゼロカーボン燃料やCCUSの導入に向けた調査・研究開発・実証事業等としている。ゼロカーボン燃料とは、 水素・アンモニアを指すとみられるが、いずれも現在、実証事業中の段階で実現していない。CCUSについても、少なくとも日本国内では実験用地以外の実用化事業は見当たらない状況にある。
送配電は、現状の電力事業の基本的な分野で、データセンターやAI利用による電力需要増大に対応する送配電投資需要に対応するものとみられる。
主幹事金融機関は、大和証券と野村證券が両ボンドを扱い、10年債には、三菱UFJモルガン・スタンレー証券と東海東京証券が、20年債には、みずほ証券とSMBC日興証がそれぞれ加わって構成する。
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2025/pdf/20250404_1j.pdf