米国の「ジュリアナ気候訴訟」元原告団。「米政府は気候を破壊する化石燃料使用の推進で、若者の生命を故意に危険にさらした」と米政府を非難する請願書を米州人権委員会に提出(RIEF)
2025-10-02 23:42:01
(写真は、OCTのサイトから引用)
トランプ米大統領が 「地球温暖化はウソだった」と国連で演説し、国内では気候政策を次々に廃止・縮小する米国。対抗するはずの民主党政治家や気候専門家たちからの反論も力不足の中で、若者たちが動いている。画期的な米国での気候変動訴訟「ジュリアナ対アメリカ合衆国」の元原告である15名の若者たちがこのほど、「50年以上にわたり、米政府は気候を破壊する化石燃料システムを推進することで、われわれの生命を故意に危険に晒してきた。これは怠慢ではなく、意図的な危害だ」と米政府を非難する請願書を米州人権委員会(IACHR)に提出した。
IACHRに請願書を提出したのは、15人のジュリアナ原告団と、支援団体の「Our Children’s Trust(OCT)」。 「ジュリアナ訴訟( Juliana v. United States)」は、オレゴン州ユージン在住の Kelsey Cascadia Rose Julianaさん(当時19歳)が、2015年9月に、同じ同地在住の若者20人、および「未来世代」と一緒に原告団を結成、米政府に効果的な気候対策の実施を求めた訴訟だ。
同訴訟の提起後、欧州やカナダ等でも同様に未来世代の若者たちが、国の気候対策の遅れにより、自分たちの将来の基本的人権が損なわれると訴える訴訟が相次いでおり、日本でも昨年8月に「若者気候訴訟」が提起されている。ただ、米国でのジュリアナ訴訟は、米政府が審理開始を避け続けた末、米最高裁判所が今年3月、審理拒否を宣言したことで、米国での政府の気候政策に対する責任追及の法的取り組みは終わった。https://rief-jp.org/ct7/141762?ctid=
しかし、同訴訟に取り組んだ若者たちの思いは、そこでは終わらなかった。原告団に加わったメンバーのうち、15人がこのほど、OCTの支援を受け、米州人権委員会(IACHR)に対して、米政府を相手取った請願書を提出したのだ。
請願書では、米国のエネルギー政策と実践が危険な温室効果ガス(GHG)汚染を実質的に引き起こし助長し、申立人らをアメリカ人権宣言・国際人権法・慣習国際法で保障された権利から剥奪したと主張。さらに米政府が「ジュリアナ対アメリカ合衆国」訴訟の審理開始を繰り返し阻止した行為が、若者の司法アクセス権と実効的救済を受ける手続き的権利を侵害した等と強調している。
支援団体のOCTのグローバル戦略担当副ディレクター、ケリー・マセソン(Kelly Matheson)氏はIACHRの委員に向けて呼びかけている。「この訴訟を提起した若者たちは皆、気候非常事態の中で生まれ、健康的な気候という法的権利、そしてそれに依存する数多くの権利を十分に享受できない日々を過ごしている」「彼らは成長期をこの危機に浸りながら過ごしてきた。彼らが家族を築き、尊厳を持って文化や伝統を次世代に健全に継承できるかどうかは、彼らの権利が守られ、米国が責任を問われるかどうかにかかっている」と。
ジュリアナ訴訟の若者たちとOCTによるIACHRへの請願が行われた9月23日。トランプ大統領はニューヨークの国連本部での一般討論演説で、環境問題を「いかさま」と決めつけ、「地球温暖化はウソだった」と宣言した。同氏は「気温が上がっても、下がっても気候変動だという。これは愚かな人たちが作り上げた史上最大の詐欺だ」等とした。大統領と若者たちが今、真っ向から対立する図式である。https://rief-jp.org/ct8/161020?ctid=
遡ると、若者たちが提出した請願書は、米州人権裁判所(IACtHR)が7月3日に、気候危機を人権上の緊急事態と宣言し、健全な気候への権利を認める画期的な勧告的意見を出した後、初めて提出された気候請願書であるという点でも、耳目を集める行動となった。IACtHRの勧告は、2023年1月にチリとコロンビア両国による要請に応じ、2025年5月29日に採択された「気候緊急事態と人権に関する2025年第32号勧告意見」を通知したものだ。
このIACtHRの勧告的意見は、同月23日に国際司法裁判所(ICJ)が気候対策に対する国の義務を明確に認め、排出主体への規制責任も認めた勧告的意見を出す直前に、ICJと同じ認識に立った勧告的意見として示したもので、ICJ意見の地ならし的な、先見性を持った判断だったといえる。https://rief-jp.org/ct4/159282?ctid=
そう考えると、若者たちが10年かけてジュリアナ訴訟で問題提起してきた気候責任についても、米政府には否定されたが、IACtHRでも、ICJでも、若者たちが求め続けた政府の気候責任は明確に認められている。ジュリアナ訴訟での若者たちの「先見性」「正当性」が改めて確認されたともいえる。
IACHRに請願書を申し立てた一人であるレヴィ・D氏は「50年以上にわたり、米政府は気候を破壊する化石燃料システムを推進することで、われわれの生命を故意に危険に晒してきた。これは怠慢ではなく、意図的な危害だ」と政府を非難するとともに、「政府の長年にわたる行動は、われわれの生命・健康・尊厳に対する権利を侵害しており、私のような若者がその代償を払っている。われわれは政府に対し、気候危機がもたらす健康被害に対する補償を求める」等と主張している。
OCTの主任法務顧問であるジュリア・オルソン(Julia Olson)氏は「米政府が気候変動を引き起こし、世界中に化石燃料汚染を拡散させたことに対する過大な責任を追及すべき時があるとすれば、それはまさに今だ」と強調する。「風力と太陽光は、これらの若者たちのより健全な未来のための解決策だ。ここに(トランプ大統領が言う)詐欺があるとしたら、それは科学を否定し子供たちの生命を危険に晒しながら化石燃料を推進するホワイトハウスの方にある」と指摘している。
(藤井良広)
https://www.ourchildrenstrust.org/juliana-iachr
https://www.corteidh.or.cr/docs/comunicados/cp_48_2025_ENG.pdf

































Research Institute for Environmental Finance