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第11回サステナブルファイナンス大賞インタビュー③優秀賞:フジクラ「AI普及に伴うデータセンター需要増に適応する高密度光ファイバーケーブルの製造増強で、グリーンボンド発行」(RIEF)

2026-02-18 08:34:06

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写真は、㊧がサステナブルファイナンス大賞の授与式で表彰状を受けた、フジクラ執行役員経営戦略部門長経営企画室長の濱砂徹氏、㊨は環境金融研究機構代表理事の藤井良広)

 

 総合電線メーカー大手のフジクラは、光ケーブルの高密度化で通信能力を増強する新技術を開発、その製造工場の増設資金としてグリーンボンドを発行したことで、第11回サステナブルファイナンス大賞の優秀賞に選定されました。人工知能(AI)普及に伴うデータセンター(DC)需要増に適応するとともに、エネルギー効率化にも資することが期待されます。同社のファイナンス統括部部長兼資金水稲グループ部長の町田正人氏と、コーポレートコミュニケーション部部長の佐藤大氏に聞きました。

 

――今回の優秀賞は、フジクラが開発・展開している新たな光ファイバー技術・製品の生産拡大のための工場建設資金を、グリーンボンドの発行で調達した取り組みを評価するものです。最初に、その光ファイバーケーブルの概要をお教えください。

 

 町田氏  : 当社は独自開発の間欠固定型光ファイバリボン SWR「スパイダー・ウェブ・リボン(Spider Web Ribbon)」を採用した、細径・高密度型光ファイバケーブル WTC(Wrapping Tube Cable) を開発しました。SWRは、髪の毛ほど細い光ファイバーを横一列に並べ、一定間隔で接着した光ファイバーリボンです。柔軟性が高く、形状を自由に変えられる点が特長で、広げるとクモの巣のように見えることからこの名称が付けられています。このSWRを束ねてテープで覆い、ケーブル内に収納したものが WTC です。

 

 SWR/WTCは、同じ太さの光ケーブルでも多くの光ファイバ-―を収容できるのが特長です。生成AIの普及により通信量が増える中、DCやDC間接続向けの需要が米国を中心に拡大しており、DC用途として多くの企業に採用されています。こうした需要の高まりを受け、当社は昨年2月、千葉県佐倉市の佐倉事業所においてSWR製造の新工場を稼働させました。

 

 しかしながら、依然として需要は供給を上回っており、十分にお応えできていない状況にあります。このため、2029年度の稼働を目標に、生産能力のさらなる増強と革新的な製造技術の導入によるコスト競争力の強化を進め、同事業所における光ファイバーおよびSWRの新工場建設を推進しています。

 

㊨から、佐藤氏、町田氏、
㊨から㊧へ、佐藤大氏、町田正人氏、石原樹氏(ファイナンス統括部アシスタントマネージャー)の順

 

 グリーンボンドは昨年3月に発行し、佐倉事業所のSWR工場建設費用のリファイナンス資金等に充当しました。発行額100億円のうち80億円は、SWR工場用とし、残りは本社(東京・木場)の深川工場跡地を再開発した「深川ギャザリア」内の新棟「LEGARE(レガーレ)」(グリーンビルディング)の建設資金に充当しました。引き続き、2029年度における光ファイバーSWR新工場の稼働を目指し、佐倉事業所の光ファイバーの生産性を従来の2〜3倍に高め、SWR生産能力を増強(25年度見込み比1.5倍に引き上げ)させるために投資をしています。

 

 佐藤氏 当社では気候変動や資源の枯渇等、様々な社会課題が地球規模で拡大する中、グローバルにビジネスを展開する企業の責任として、自社の成長だけでなく、サステナブルな社会の実現にも貢献することを目指した「サステナビリティ経営」を推進しています。気候変動への対応では、2016年に制定した「フジクラグループ環境長期ビジョン2050」に基づき、①工場CO2排出ゼロ②工場の水使用の最小化と排水管理③工場の人と自然の共生④資源の有効活用と資源循環――の「4つのチャレンジ」に取り組んでいます。

 

 このうちの1番目のチャレンジとしては「2050年に工場からのCO2排出量ゼロ」をうたっており、その達成に向けたロードマップも設定しています。佐倉事業所に建設したSWR®新工場は、当社初の「カーボンニュートラル工場」と位置付けています。

 

――SWR/WTCは、いつごろから開発してビジネス化しているのですか。

 

 町田氏 現社長の岡田直樹が開発責任者の時に、クモの巣状に広がる光ファイバーリボンを開発したのが始まりです。それを基にして2015年にはすでに販売を開始しています。今はこの光ケーブルが当社の主流の商品になっています。しかし、今は需要に供給力が追い付いていない状況で、今回のグリーンボンド発行も供給力増強のためでもあります。

 

町田氏
町田氏

 

――グローバルにDCブームが高まっていることが、追い風になっているのですね。グローバルにも売れているのですか。

 

 佐藤氏;この光ファイバーケーブルは、米国での需要が高いです。DCは日本やその他の国でも建設されていますが、米国のDCの規模が非常に大きいので、光ケーブルの需要も多い状況です。また、欧州の一部でも需要が高まっています。需要が多くて、生産能力が追いついていない状況です。

 

――うれしい悲鳴ですね。

 

 佐藤氏 : はい。多くの需要に応えるために、昨年2月にSW新工場を稼働させましたが、それでも需要に応えきれていません。そのため、光ファイバーSWR新工場を2029年度に稼働させて、生産能力を増強し、需要に応えていきたいと考えています。

 

――今回、佐倉事業所でのSWR®新工場の建設資金をグリーンボンドで調達した判断は、主幹事証券会社のアドバイスが大きかったのですか。

 

 町田氏;それもありますが、当社のトップの強い意志もありました。ぜひ、「カーボンニュートラル工場」の実現を目指すということで、今回の資金調達はグリーンファイナンスで検討しようということになりました。

 

――投資家の反応はどうでしたか。

 

 町田氏  :  引き合いは大変、多かったと聞いています。発行に際して投資家との会合の機会も持ちました。投資家には、それぞれにご方針もありますが、大変興味を持っていただきました。SWRを作る工場、ということで、たくさんの質問をいただきました。これからDCやAI等のマーケットが広がっていく中で、この製品は非常にマッチしている等とのご評価をいただきました。

 

――応募倍率はどれくらいでしたか。

 

 町田氏:数倍の応募があったと聞いています。(グリーニアム「グリーン性のプレミアム」については)一部の投資家からは、そういうことで好評をいただいたと聞いています。

 

――光ケーブルのグローバル市場はどうなっていますか。

 

 町田氏 : この製品分野では、当社がいち早く製品化を行ってきました。現在は市場に類似製品もありますが、生産性の面では当社製品に強みがあります。

 

 こうした特長から、多くの企業様への納入実績を重ねており、品質と安定した納期対応の両面で高い評価をいただいています。その結果、当社製品が広くご採用いただいていると考えています。

 

佐藤氏
佐藤氏

 

 佐藤氏 : 中でも、クモの巣状に間隔を精密に制御しながら接着する間欠固定型光ファイバーリボンSWRの製造は、極めて高度な技術を要する分野です。この生産技術を実用レベルで確立していることが、当社の競争力を支える重要な強みとなっています。

 

 こうした技術的優位性を背景に、SWR/WTCは通信キャリア市場およびDC市場の双方において、その高い機能性と効率性が評価され、市場シェアを着実に拡大しています。特に、光ブロードバンドネットワークの増強が進む欧米や中東地域を中心に、顧客開拓が順調に進んでいます。

 

――米国市場では「トランプ関税」の影響を受けませんか。

 

 町田氏  :   日本からの輸出分については、関税はかかります。しかし(そのコストアップ分は)顧客企業が売価へ反映することを認めてくれています。それよりも、SWR/WTCの光ケーブルをたくさん持ってきてほしいいうスタンスです。(トランプ政権も)ウェルカムという方向性です。

 

――SWR/WTCに次ぐ、今後の開発分野はどこですか

 

  町田氏  :  今後期待される製品としては高温超電導線材ですね。CO2を出さない発電方法として期待されている核融合に不可欠な素材です。実用化はまだですが、世界ではすでに実験が始まっています。核融合では、プラズマを強力な磁場で閉じ込めておく必要があり、その磁場をつくるコイルに、当社の高温超電導線材が使用されています。世界でもトップクラスの性能と量産技術を持ち、国内外の最先端プロジェクトで採用されるなど、高く評価されています。

                        (聞き手は、藤井良広)