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花王のパーム油調達に伴うサプライチェーンでの人権問題や森林破壊等のリスク減少を求めて香港のアクティビストファンドが独立調査を要求。今月30日の臨時株主総会で賛否投票(RIEF)

2026-04-09 14:20:56

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 日本の化粧品・化学品大手メーカーの花王がサプライチェーンリスクへの対応を迫られている。同社は化粧品や日常品などの製品の生産に使うために、インドネシア等の東南アジア諸国からパーム油を買い入れているが、その生産・製品化のサプライチェーンで人権問題や森林破壊のリスクが生じている可能性があるとして、同社株の12.49%を保有するファンドを運用する香港のアクティビスト・ファンドが、独立機関による同社のサプライチェーンの調査を求めているためだ。同調査の賛否を問う臨時株主総会が今月30日に開かれる。株主総会に向け、ファンド側、会社側はそれぞれ、他の株主の支持を求める活動を展開している。

 

 花王のサプライチェーン調査を要求しているのは、香港のファンド「オアシス・マネジメント」。同ファンドは2002年に創業者兼CEOのセス・フィッシャー(Seth H. Fischer)が設立した。主に上場株を対象とするアクティビスト運用を行い、特に日本企業を含むアジアを重要な活動領域としている。東京にも拠点を持っている。

 

 同ファンドの活動手法は、経営陣との対話、株主提案、大量保有報告・公開キャンペーン、時には公開買付や訴訟による権利行使等の幅広い手法を用いることで知られる。今回は、長く指摘されてきたパーム油農園運営をめぐる森林・生態系破壊等の問題を引き起こしているサプライチェーンの問題を、製品原料としてパーム油をに購入する「上流」企業の花王がどう認識し、対応しているかを問うため、独立機関による調査で明らかにすることを求めて、臨時株主総会の開催を提案した。

 

 花王はこれまでに自社​で実施し​た調⁠査で内部統制に不備が​なかったとし、​株⁠主提案に反対を表明している。これに対して、オアシス側は今回の提案を「プロテクト花王(Protect Kao)」と命名し、「花王の企業価値を守る」と、投資家目線を強調している。

 

 花王は、パーム油およびパルプ・紙製品を対象とする「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)」方針を採用している。NDPE 方針とは、企業が自主的に採用する持続可能性に関するコミットメントであり、自社のサプライチェーンが森林破壊や自然生態系の転換、炭素を多く蓄積する泥炭地での開発、ならびに先住民族の土地権侵害や労働搾取を含む人権侵害に寄与しないことを自主的に宣言する取り組みである。

 

 これに対してオアシスは、 森林破壊のないサプライチェーンを実現するためのベストプラクティスに基づくロードマップとして市場で支持されているアカウンタビリティ・フレームワーク・イニシアティブ(AFi)の中核原則に照らして花王の方針を詳細に評価した結果、重大な実施上の不整合、目標未達、課題のあるサプライヤーとの関係、不十分なグリーバンス(苦情対応)制度が認められたと指摘。

 

 これらの「不備」は、いずれも花王のサステナビリティコミットメントの信頼性を損ない、投資家の投資価値に影響を及ぼすとして、同社のサプライチェー​ン​の管理体制を調査・評価するため、花王から独立性を担保できる機関による調査を求めるとしている。花王側は、自社​で実施し​た調⁠査で内部統制に不備が​なかったとして、​オアシスの株⁠主提案に反対するとし、今月30日に開催を設定した臨時株主総会で、同提案に反対票を投じるよう株主に呼びかけている。

 

 オアシス側は、複数の内部告発に基づき、すでに独自に第三者の環境専門家による委託調査を実施し、その報告書も公表している。それによると、花王が森林破壊、土地収奪、人権侵害に関与しているとされるサプライヤーとの継続的な関与リスクにさらされている可能性を指摘するとともに、パーム油の取引量(重量ベース)の推定約6%のみを対象とする過度に限定的な苦情処理メカニズムの存在、さらに、紙・パルプのサプライヤーおよび認証制度に関する情報開示が、AFi等のフレームワークや同業他社と比較して不十分である等と指摘している。

 

  オアシスの報告書は、花王側の調査が不備な理由として、同社の代表取締役の長谷部佳宏氏が、社内のESGコミッティの議長を務める一方で、コンプライアンス体制を監督し、かつ取締役執行役員報酬諮問委員会のメンバーであることは、利益相反にあたるとも指摘している。この点は、他の「CSR先進企業」を自認する日本企業にも、当てはまる可能性がある。

                            (藤井良広)

 

 https://protectkao.com/ja

https://oasiscm.com/press-releases/

https://www.businesswire.com/news/home/20260401541401/ja

https://www.kao.com/jp/newsroom/news/release/2026/20260327-001/

https://www.kao.com/content/dam/sites/kao/www-kao-com/jp/ja/corporate/news/2026/pdf/20260327-001-01.pdf