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南極の氷融解で、2100年までに世界の海面1m上昇の可能性。国連IPCCの予測を大きく上回る。米研究チームが南極氷床の脆弱性を解明(AFP)

2016-03-31 20:28:27

southpoleキャプチャ

 

 【3月31日 AFP】温室効果ガスの排出が現在のペースで続くと、南極の氷の融解によって海水面が2100年までに1メートル上昇する可能性があるとする研究結果が30日、発表された。これは、海面上昇に関するこれまでの予測値の2倍に相当するという。

 

 このような大きな変化では、地球全域の主要都市や沿岸部に災害が生じることが予測され、数億もの人々がより高い土地への移住を余儀なくされる事態を引き起こすことも考えられる。

 

 さらに、より長期では状況はますます厳しくなると研究は結論付けている。かつては氷に覆われていた南極大陸が500年以内に喫水線を15メートル以上も上昇させ、地球の海岸線の形を変えてしまうというのだ。

 

 英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された研究論文の主執筆者で、米マサチューセッツ大学(University of Massachusetts)の気象学者のロバート・デコント(Robert DeConto)氏は、AFPの取材に「正直なところ、これに関してはわれわれの研究が間違いであって欲しいと思っている」と語る。

 

 だが、AFPの取材に応じた別の専門家らも、この結果が的外れではない可能性が高いと口を揃えている。彼らはこの研究に直接関わってはいないが、デコント氏と同様の懸念を表明しつつ、今回の最新研究を「実に優れた科学的成果」と称賛している。

 

 今後85年の間に、南極の氷融解が世界の海水面をどれだけ上昇させるかについては、これまで「控えめ」に見積もられていた。

 

 数千人の科学者が参加し、地球温暖化とその影響について各国政府に報告を行っている国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が発表した最新の報告書は、この数字を約12センチとしている。これはすべて、西南極氷床(West Antarctic Ice Sheet)と呼ばれる比較的狭い区域の融解によるものだ。

 

 また、水温上昇に伴う海水の膨張や、氷河やグリーンランドの氷床の融解などを含むあらゆる要因を考慮したとしても、今世紀末までに海面の総上昇値が1メートルを超える可能性は低いとも予測している。

 

■カギとなった2つのメカニズム

 

 だが、南極に関する数値の低さは、見解の相違よりも、むしろ知識の欠落と深い関係があった。

 

 例えば、12万5000年前と300万年前に起きた過去の地球温暖期をめぐっては、当時南極で実際に何が起きたのかは分かっておらず、長年の謎となっている。これらの温暖期には、気温が現在よりわずかに上昇したことで、海洋が今日のものより6~10メートル高い水準にまで上昇した。ただ、「どちらの場合も、南極氷床は海面上昇の主要因として関与したとみなされており、これは南極氷床が持つ将来の脆弱性を示唆している」と論文は指摘している。

 

 南極は北極に比べてはるかに寒冷なため、融解の影響を受けにくいと考えられる。そのため、崩壊に至った正確な仕組みについても謎のままだった。

 

 しかし今回の研究で、デコント氏と米ペンシルベニア州立大学(Pennsylvania University)の気象学者のデービッド・ポラード(David Pollard)氏の研究チームは、これまでの研究成果に基づき、この謎を解くカギとなると思われる2つのメカニズムを組み入れ、新たなコンピューターモデルを作成した。

 

 一つは、「水圧破砕」と呼ばれるプロセスだ。

 

 水やビールが入った瓶に蓋をして冷凍庫に入れると、内部の液体が膨張して瓶が割れてしまう──10代の若者なら誰でもが知っている現象だが、ドイツ・ポツダム気候影響研究所(Potsdam Institute for Climate Impact Research)の氷床動力学に関する専門家アンネシュ・レベルマン(Anders Levermann)氏は、「これこそが、ここで起きたことだ」と語る。同氏は、最新版IPCC報告書の海水位に関する章の主執筆者である。

 

 今回の研究についてAFPの取材に応じたレベルマン氏は、融解水が、氷床内にあるクレバス(氷の割れ目)の深部に浸透すると、それが膨張して氷を割り海の方向に氷を押しやるのだと説明した。

 

 科学者らはこれまで、陸地の上にある氷床から突出した部分に対する海水温上昇の影響に研究の重点を置いていた。だが、氷床上部でも、ある程度の融解を引き起こすのに十分なレベルにまで、気温が上昇していることが明らかになっている。

 

■警鐘となる事実

 

 今回のモデルに組み込まれたもう一つの自然のメカニズムは、氷床を支える壁となっている棚氷と氷崖(ひょうがい)の崩壊だ。これらはどちらも、背後にある氷床をせき止めるダムとして機能している。

 

「これらのメカニズムは、それ自体としては『新しい』プロセスではないが、これらを南極で、大陸規模で考慮したのは、今回が初めて」とデコント氏は話す。

 

 デコント氏によると、研究チームが今回のモデルを過去の温暖期に適用したところ、しっかりとつじつまが合う結果となったという。

 

 一方でこの成果は、未来に関して憂慮すべき結論をもたらすものでもある。

 

 デコント氏は、「過去の海面上昇の事例に照らして検証と調整を行ったモデルが、温暖化に対するこれほどの強烈な未来の反応をシミュレートしているという事実は、非常に懸念すべきこと」と指摘する。そして「これは、警鐘となるはずだ」とも付け加えた。

 

http://www.afpbb.com/articles/-/3082456?pid=0