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デンマークが国内産業の「脱化石ビジネス」完了へ。同国コングロマリットのMaerskが保有石油・ガス部門を仏Totalに売却合意(RIEF)

2017-10-10 21:51:28

Maerskキャプチャ

 

 デンマークが「脱化石燃料」を実現する見通しとなった。同国の運輸・エネルギー関連のコングロマリット企業の Maerskが、保有する石油・ガス部門(Maersk Oil)をフランスのTotalに売却する交渉で合意したためだ。Maersk Oilは現在、デンマーク唯一の化石燃料会社で、今回の売却により、同国は化石燃料ビジネスから無縁となる。

 

 Maersk Oil は1962年設立の石油・ガス開発企業。北海に面するデンマークはかつては、ノルウェーに次いで、欧州第二位の石油生産を誇った。だが、GDPに占める石油関連収入は、2012年の1.4%から今年は0,2%へと低下している。Maerskは原油価格の長期低迷で、石油・ガス事業の競争力を独立で維持するのは困難になると判断したとみられる。

 

 Maersk Oil の売却交渉が公表された夏以来、同じデンマークのDONG Energyも北海の石油・ガス事業を、スイスの石油精製会社のIneosに13億㌦で売却で合意している。DONG は洋上風力発電などの再生可能エネルギー発電に集中するためだ。DONGに次ぐMaerskの決断で、デンマークは国として「脱化石ビジネス」を実現するわけだ。

 

Maersk2キャプチャ

 

 Maersk Oilはデンマーク領での北海での操業だけではなく、カタール、アルジェリア、カザフスタンなどで開発事業を展開している。買収するTotalは、こうしたMaerskの開発ネットワークを手に入れることで、グローバル展開を強化できるとみられる。売却額はMaerskがTotal株で49億5000万㌦分を手にすると同時に、Maerskの負債25億㌦分を引き受ける。総額74億5000万㌦(約8300億円)のディールとなる。

 

 「脱石油ビジネス」で、先行したDONGは売却で得た資金の一部を、欧州各地での洋上風力事業などへの投資資金に充当するという。まさに投資先を変更する「Divestment」だ。DONGは欧州だけでなく、米国での3つの大規模風力発電事業を含めて北米市場での再エネ事業に力を入れている。

 

 Maersk Oil会社の売却には、同社の労働組合、デンマーク政府も賛成しており、来年四半期中に石油事業の規制当局の承認を受けて最終的に完了する見通しという。グローバルなエネルギー構造の転換に合わせて、国の産業構造を抜本改革するデンマークの政策判断は、旧来のエネルギー構造を死守し、国際競争力を減退させている日本とは対照的だ。