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米環境保護庁(EPA)、オバマ前政権による石炭火力発電所の温暖化規制強化の「クリーン・パワー・プラン(CPP)」の廃止通知を公表(RIEF)

2017-10-11 11:23:11

pruit1キャプチャ

 

   米環境保護庁(EPA)のスコット・プルイット長官は、オバマ前政権がEPAに石炭火力発電所のCO2排出規制を求めたクリーン・パワー・プラン(CPP)を廃止する通知(NPRM)を発した。CPPは連邦議会が官庁に委ねた権限を逸脱しているとの判断による。

 

写真は、CPP廃止通知に署名するプルイットEPA長官)

 

 EPAは今回の通知を連邦官報事務局(Federal Register)に送付し、60日間のパブリックコメントを期間を経て、官報記載となる。

 

 トランプ大統領は選挙期間中から、オバマ政権の環境政策に反対の姿勢を示し、CPPの撤回を公約の一つに入れてきた。オクラホマ州の司法長官だったプルイットEPA長官も、CPP撤回を求める訴訟の原告の一人。EPAは今回のCPPの撤回は、トランプ大統領が3月28日に、米国のエネルギーの独立性、経済成長、法令主義に基づくエネルギー独立確保の大統領指令(EO)に基づく措置と位置付けている。

 

 EPAはCPP撤回の理由として、CPPが規制の根拠とした大気清浄法(Clean Air Act)との整合性がない点を指摘している。また、オバマ政権のコスト・ベネフィット推計の分析結果に、不確実な側面が多いとも記載した。

 

 特に、政策効果として米国が負担するコストと、温暖化対応というグローバル・ベネフィット推計の比較の経済的手順に間違いがあるとした。CPP規制によってCO2以外の他の汚染物質の排出量も削減されるCo-benefitsを強調し過ぎたり、省エネ効果を過剰にカウントして、CPPの本来のコストを隠してきた、などととした。

 

 そうしたCPP批判の一方で、CPPを撤回することによって、2030年までに、州や企業等のコンプライアンスコストが330億㌦節約されると試算している。EPAはこうした試算についてのRegulatory Impact Analysis (RIA)も公表した。パブリックコメントへの判断を含めて、最終通知(ANPRM)に反映させるとしている。



 プルイット長官は「今回の通知は、トランプ政権が本来の州政府の役割を尊重するとともに、米国の環境を守るために、透明性を復活させることにつながる」と強調している。また、CPPの撤回によって、米国のエネルギー資源の発展を促進し、エネルギー開発に際しての不必要な規制の障壁を取り除くことで、エネルギー独立確保の大統領指令に沿うと、している。

 

 今回のEPAのCPP撤回は、トランプ政権のこれまでの対応から、予想されたことではある。温暖化対策を求める環境団体は「今回のEPAの通知は、CPPではなく、Dirty Power Plan(DPP)だ」(Natural Resources Defense Council)、「今回の通知は、科学的分析を拒否するトランプ政権とプルイット長官の姿勢を反映している。それも基本の数学もできないレベルだ」(Sierra ClubのLiz Perera氏)などと、一斉に批判の声明を出している。

 

 企業とNGOで組織する環境団体のCeresは、「今回の誤った提案は、企業寄りの姿勢を標ぼうしてはいるが、実際には米国のビジネス社会の必要性と要望からかけ離れたものだ」と指摘する。Ceresによると、すでに365社以上の米国企業がCPPを支持することを公式に明らかにしており、1700以上の企業が、低炭素社会への貢献を宣言しているという。

 

 トランプ政権の視点は、石炭など、エネルギー開発やエネルギー多消費産業などの伝統的な米国産業を基盤としている。一方で、省エネルギー、高付加価値型産業は、グローバル市場を意識したビジネスモデルに転換しており、温暖化対応もそうした視点で重視される。CPPをめぐる論争には、米国経済の構造的な変革の捉え方の違いも反映しているようだ。


https://www.epa.gov/newsreleases/epa-takes-another-step-advance-president-trumps-america-first-strategy-proposes-repeal